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婚約者

「はぁ、、?」


このステラという子が何を言っているのか分からない。


「む、その顔は全く信じておらぬな。」


「はぁ、姫様。説明が足りなさ過ぎます。此処は私が説明します。」


それまで沈黙を守ってきた細身の男性が前に出て来る。


「失礼、私はアドアステラ家に仕えておりますカーマイン・ベルクルスと申します。以後お見知りおきを。」


カーマインは、左手を腹部に当て、右手を後ろに回して丁寧に礼をして挨拶をする。


「もし宜しければ、貴方様のお名前を教えて頂けませんか?」


名前を聞かれ答えるべきか逡巡したが、どう扱われるにせよ名前は名乗るべきと考え、素直に教えることにした。


「失礼しました。俺は、御影俊。シュンと呼んでください。」


礼には礼をすべきと思い、軽くお辞儀で返す。


「シュン様ですね。ありがとうございます。」


「では私から説明させて頂きます。」


*


それから暫く、カーマインと名乗る男性から事の詳細を教えてもらった。


このステラという女性は、竜魔族のお姫様で魔王候補の1人。

魔族には3大氏族がおり、その内の1氏族がアドアステラ家になる。

代々、魔族はこの3氏族の中から選出されるらしい。


だが魔王候補になる為には、1つ条件がある。

それは自らのパートナーを定める事。

ただそれは誰でも良いわけではなく、自らと魂のパスを繋ぐ事の出来る運命の相手。

この条件が厳しく、魔力の波長が完全に一致している必要があり、ステラだけがその相手が見つからなかったらしい。


だが大昔の先祖が探し人を見つける為に使用したという古代の魔法陣を見つけ出してきたステラが、カーマインの制止を振り切り召喚術式を起動。その召喚術を通して見つけ出したのが俺らしい。


「カーマインさん、ありがとうございます。状況は理解できました。」


「ただこのような相手の同意を得ない形はどうかと思います。」


「その点は我らに非が御座います。誠に申し訳ありません。」


話を聞いていると、少なくてもカーマインという人物は、話が通じる相手のようだ。

とても丁寧に接してくれており、その点は少なくても好感出来る。


「姫様、何か補足があればお願い致します。」


カーマインが一礼と共に、ステラに向き直る。


「うむ、概ね問題ない。ただ1点、大事な事が抜け落ちているぞ。」


「えーと、その前に「シュン」と呼ばせて貰っても構わないか?」


少し赤くなりながらステラが尋ねて来たので、問題ない旨を伝えると、

満足したように続きを話し始めた。


「シュン、此度の事私からも詫びさせてくれ。此方にも事情があったとはいえ、申し訳なかった。」


急に頭を下げて来るので、あわてて止める。


「いえ、もう良いんです。最初は取り乱しましたが、過ぎたことです。なので頭を上げてください」


「ありがとう。」


「では、シュン。右手の甲を見せてくれないか?」


ステラの言葉に従い、右手の甲を見せる。

シュンが腕を上げたと同時に、ステラも自らの右手甲を此方に向けてくる。


「その紋様は、、、」


見た記憶があった。

それは俺の右手の甲に突然現れた謎の文様と全く同じだった。


「同じであろう?これは我がアドアステラ家の紋様だ。我が家には古くから決まりがあってな。」


「我が家は昔から女系の血が強く、娘しか生まれぬ。その為、男婿を外から迎え入れるのだが。先に説明した通り、魔王を過去何代も輩出している家なのだ。当然誰でも良いと言う訳ではない。最も相性の良い男で無くてならんのだ。」


「だからこそ、我が家はでは古来より呪法を用いてパートナーを探して来た。それが今回は其方であった訳だ。」


「そういえばさっきから、婚約者だの、婿殿とか言っていましたね。冗談だと思っていました。俺をからかう為の。」


ステラは此方に近づいて来て、怪しく微笑み掛けてくる。


「シュンは、私と結婚するのはいやか、、?」


急に顔を近づけて来るものだから、顔を真っ赤にして動揺してしまった。


「いっ、いや、あの。貴方みたいな美しい人は光栄というか、いやでも俺は貴方の事をよく知らないし。種族も違うし、その。」


実際ステラはとても美しい。

背はあまり大きくないし、全体としてこじんまりとしているが、気品の様な物は感じるし、何より美人だ。


「ハハハ、其方はかわいいな。からかい甲斐がある。」


「な、なんだ冗談ですか。」


(少し残念な気もするけど、そりゃ俺がこんな美人。しかもお姫様って言われてたし。)


「いや、婚約の話は本当だぞ。無論其方の同意は必要だがな。まぁ直ぐに答えを出さなくても良い。この屋敷にしばらく滞在して、我らの事を知ってからでも良いだろう。」


(いやいや、これは夢じゃないのか。今日の朝まで役立たずだった筈の俺が、こんな美人の婚約者?しかもお姫様。人族じゃないのが気になるけど、まぁ元々俺はこの世界の住人じゃないしな。何よりこんな俺を必要としてくれているのが嬉しい。)


「分かりました。正直まだ素直に状況を呑み込めませんが、暫く厄介になります。」


「うむ、そうするが良い。」


「では、カーマイン。そうと決まれば、シュンを先ずは休ませてやらねばな。その後は食事だ。」


「かしこまりました。姫様。ではここの片づけは我らで行いますので、先ずは上に戻りましょう。」



*


カーマインに先導されている間、ステラと並んで歩いているのだが、

何を話して良いのか分からない。というより恥ずかしくて顔が見れない。


ただ何も話していないのも落ち着かないので、無難に話を切り出す。


「話に聞いていた魔族の印象とは随分違うので、むしろ驚いています。」


「そうなのか?」


「はい、あくまで聞いた話ですが、魔族は残虐で人の生き血を好むって聞いてました、。」


「・・・」


ステラとカーマインは顔を見合わせて、仕舞いには笑いだしてしまった。


「いやいやいや、我ら魔族は本質的には人族と変わらんよ。血なんて見たくないし、出来れば争いもしたくない。」


「魔獣と勘違いでもしてるんじゃないか。」


「あー笑った。人族はそんな世迷言で世論をコントロールしているのだな。それにいつも戦争を仕掛けてくるのは、人族の方だぞ。我らは我らの愛すべき者を守る為に応戦しているにすぎん。」


初めて聞く話だった。

俺が住んでいた街では、親が子供に「悪い事をしたら魔族が来て、攫って食べられてしまうよ。」と聞かせるくらいには、恐怖の対象だったし、事実俺も魔族は怖いと思い込んでいた。


「実際にこうやって話してみると、随分偏った話だったのかもしれません。」


「まぁ実際、魔族の中にも争いを好む者はいるし、犯罪を犯す者もいる。それは人族とて同じであろう?」


「シュンが自分の目で見て、判断すれば良い。これから嫌というほどの魔族と会うのだしな。」


そんな事を話している内に目的地に着いたらしい。


「ここが暫くの間、其方の部屋じゃ。」


開かれた部屋の中を見ると、見たことも無いくらいに豪勢な、それこそ元居た世界でも1泊数十万はしそうなほどの豪華絢爛な部屋だった。

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