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また召喚!?

俺は無能で役立たず。

そうこの国に判断されてから、なるべく目立たない様に生きてきた。


何度か自らの生きる意味を失いかけた事もある。


それでも姉さんに拾われて、街の人達の優しさに触れていると、嫌な過去も受け入れられる様にはなっていた。

ただ仲間達が魔物討伐から凱旋して、街の人達からの喝采を浴びているのを見る度に、色々考えてしまう。

俺も同郷の仲間達と一緒にあの場所に居たかもしれないのに。


ここ数ヶ月は、ミランダ姉さんが経営する宿、兼酒場を手伝ったり、街の人の勧めで教会にも通うようになった。教会で祈りを捧げる事が精神安定に繋がっている。


そして今日もまた、いつもの様に神へのお祈りをする為に教会を訪れていた。


「あら、シュンさん。今日は朝早いんですね。ご苦労様です。」


そう声を掛けてくれるのは、その神殿のシスターであるミスカさんだ。

年は確か18歳だったと思う。

茶色の毛を後ろで纏めている細身の美人だ。

このシスターは、城に呼び出された際、転移者達のお世話をしてくれた方で、城を追い出された後も俺を何かと気にかけてくれる。


「ミスカさん、おはようございます。お勤めご苦労様です。入っても宜しいですか?」


そう言うとミスカは、笑顔で頷き、ゆっくりと扉を開けてくれた。


「勿論です、今日は誰も来ていないんですよ、だからゆっくりと神様とお話ししてください。」


普段であれば、どれだけ朝早くても何人も並んでいるものだが、少し不思議に感じながらも、扉を開けてくれたミスカにお礼を言ってミスカさんと一緒に中に入る。


礼拝堂の中は、完全に外界からは遮断されており、浄化され澄み切った空気で包まれていた。

いつも以上に神聖な存在を近くに感じる。


「今日は何か違う様な気がする」


そう思いながら、ふと右手のアザが気になった。

少し色が濃くなっているのは気のせいだろうか。


「まぁ考えていても仕方ないか。」


ミスカさんに案内されながら、礼拝する為の準備を始める。


準備といっても入り口近くに用意されている聖水で手を清めて、ステンドグラスが煌めく中央の神座に向かい祈るたけだ。


いつもの様に手を合わせてから跪いて、心の中で自らの祈りを神に語り掛ける。

俺の場合はこの世界で何をすべきなのか導いて欲しいと願う事が多い。


人々の数だけ願いがあるのだと、此処に来て初めて知った。

自らの事、家族の事、友人や恋人に関してかもしれない。

人間は自分ではどうしようもない願いや悩みを、より大きな存在に縋って願う弱さを持っている。

神という存在は、そんな人々の拠り所なのだ。


自分自身信心深くは無かったのだが、此処に来ると心が落ち着く。

決して、ミスカさんに会いに来ている訳ではない。

そんな邪な気持ちは持っていない、と思う。多分。


雑念ばかり考えていると心がザワザワするのを感じる。

深呼吸を一回行い、心の中の雑念を洗い流す。


心が落ち着くのを感じてから、改めて神への祈りを、自らの願いを強く願う。


誰かに必要とされる事、なぜ俺がこの世界に呼ばれたのか。

その意味を知りたい。その事だけを願い続ける。


そうして暫く静かな時間が続く。

いつもの様に神は何も答えてくれないが、少なくとも自分の心はこの時間に満足したのを感じると。


「ミスカさん、そろそろ戻ろうかと思います。」


「そうですか、神様はいつも貴方を見ています。どうか焦らずゆっくりと。」


ミスカさんが優しく微笑んでくれる。


「やはり天使だなぁ」と考えていると、不意に強烈な頭痛と一緒に頭の中に誰かの声が響き渡った。


《みつけたわ!》


そう声が響いた瞬間、目の前に強烈な光が輝き視界を奪う。

視界が全てホワイトアウトし、何も見えない。


目の前でミスカさんが心配そうに声を掛けてきている。


「シュンさん、シュンさん。大丈夫ですか!?」


徐々にミスカさんの声も聞こえなくなっていく。

そうして何も見えなく、聞こえなくなって、俺は気を失った。

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