9話
この頃、前にも増して白妙との距離を感じる。
世間話もする。
笑う。
ただ一切肌が触れないようにしているのを感じた。
それでも少しでも彼を焼き付けたい私は側に寄るのに、寄るとその分白妙が離れいく。
変わらない2人の関係と同じだ。
その分、積もっていくこの想いを貴方は知らないでしょう?
心を決めたのだから白妙を好きな気持ちを持って行くって。
そんな中、私は何か勘違いしていたのかもしれない。
いや見ないようにしていたのかもしれない。
突然の訪問者がそれを告げた。
「清香、この匂いは何だ?」
この館で唯一私を清香と呼び捨てる男は、そう言って最高に楽しそうに笑った。
「えっ、匂い?」
珍しく表情を崩した清香に男は更に愉快そうに笑う。
「そう、この甘たっるい匂いだ」
言うなり何時ものように白妙が部屋を出るのを待たず、清香の着物の前を開く。
男の目線が突き刺さる、胸元の蕾の痣ーーいや、それは蕾では無くなっていた。
清香の華紋の蕾が開き始めていた。
愕然としながら自分の華紋を見つめる。
ーー何故?
呆然と自分の痣を見つめる清香の様子も気にせずに、男は嬉々として告げた。
「これは3部咲きってところか?もうちょいだな」
舌なめずりしながら、自分の華紋を食い入るように見る。
呆然と男を見つめ、思わずといって目線を動かした先で白妙とバチっと目があった。
その顔は穏やかだった、まるで華が時を祝福するかのような表情だった。
えっ?
そうか……
白妙はお祝いしてくれるんだね。
そうだよね。
その為にずっとこんな子どものお世話してたんだし、
それが貴方の仕事だったんだし。
バカじゃないの、勝手に思い上がったりして……
私だけだったんだ。
この時間を大切に思ってたのは。
彼のことを思うなら、早く解放してあげないと行けなかったんだ。
バカみたい、この時間に場所にこんなに縋っていた私が。