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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました  作者: 林海
第四章 17歳、夏(全49回:アクション編)
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19 覚悟、決断、泣


 時間だ。

 美岬の母親の声が、MacBookから響く。

 「決断はできた?」

 「はい」

 俺が答えた。そう、俺が決めて、俺が説明し、俺が責任を取る。

 だって、それしか……、俺にはできないから。


 「TXαは使いません。

 セカンドプランで行きます。少なくとも、六年……」

 馬鹿野郎、詰まるんじゃねぇ。

 「六年は会えないのは理解しています」

 泣くな、泣かないでくれ、美岬。

 泣くな、泣くな、俺。


 「解りました。

 その決断を高く評価します。

 坪内佐の専門領域だから、全面的に任せて安心です。

 美岬、よく決められたわね」

 「双海くんがそうした方がいいって……」

 美岬、後半は言葉にならなかった。ぐしゃぐしゃだった。

 声は出していないものの、握った両手に、雨のように涙が落ちている。


 美岬の母親も、何も言葉を重ねなかった。いつも、時間を無駄にしないこの人が、ただの一秒も無駄にしないこの人が、黙っている。それだけで娘に寄り添う想いが伝わってくるようだった。

 五分も経った頃だろうか。ゆっくりとした口調。

 「美岬。

 双海くんと菊池くんにお布団出して上げなさい。もう、そちらの時間からすると徹夜でしょう? 最低でも、六時間の睡眠を取りなさい。実戦でハードであればあるほど、睡眠時間は確保しなさい。

 『疲れていて負けた』という言い訳は許しません。オンとオフの切り替え、休憩時間の確保も覚えておくのよ。

 おやすみなさい」

 ……おやすみなさい。


 確かに、そろそろ、猶予が24時間を切る。下手すると、これから三日間ぐらい一睡もできないということになりかねない。身を隠す、身分を偽るということが、具体的にどういうことをするのかを俺は知らない。ということは、ハードな行動を前提とするべきだ。


 少なくとも、人工衛星を含めた敵味方両方の追跡手段、そのすべてから逃げねばならないのだから。

 今、寝ておくべきだということは、頭ではよく解る。

 寝てる場合じゃない、という思いだけでは人は戦えない。

 でも、最後の24時間のうち、6時間を失うんだな……。

 ……美岬。


次回、する? しない?

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