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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました  作者: 林海
第三章 16歳、文化祭(全10回:学園編)
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3 過去の経緯をさっくりと


 ちょっと重い話になる。

 長くはないけど。


 俺も……、近藤さんには頼らざるを得なかった。

 美岬は、中学時代に不幸な事件に巻き込まれてから、周りに恐れられ、結果としてずっとシカトされて孤立せざるを得ないという仕打ちを受けてきていた。近寄ると、犯罪者にされて破滅する、自殺まで追い込まれた奴もいる、てなもんで。


 一学期には、美岬がこのクラスに溶け込みつつあることを、他クラスの生徒が糾弾しに乗り込んでくる事態まで起きている。

 クラス委員である近藤さんは、文化祭実行委員を俺と美岬に先導して決めてしまったので、俺が犯罪者になっちまうかもと責任を感じていた。で、必要最低限の自衛はしとかないとって、美岬のことをいろいろと相談されたり、したりすることになった。


 そして、俺の嗅覚と慧思の推理は、美岬の濡れ衣を晴らした。

 その結果、近藤さんはクラスの女子たちに、俺はクラスの男子たちに根回しをして、犯罪者にされちまううんぬんは誤解だというコンセンサスを得ることができた。そして、なんとなく、うちのクラス全体で美岬を守る体勢が作られている。

 しかし、他クラスにいて、美岬と同じ中学出身の生徒にとっては、未だ美岬は近寄る者を滅ぼす悪魔か魔女だ。

 美岬に対して、怯えと嫌悪に近い感情を抱き続けているし、そういった感情を、一気に拭い去ることはできないだろうと思う。


 それでも、祭りの場で、外来者も含めて誰に対しても明るい美岬を見せること、その美岬に近寄っても誰も不幸になんかならないことを見せて誤解を解き、少しずつでも良い方向に向かって欲しいという結論が、俺と近藤さんで密かに出されていた。

 おそらく来年は、俺も美岬も、近藤さんも、そして、近藤さんに片思いしている慧思までが同じクラスになる。二年生からは、希望進路でクラスが編成されるからだ。でも、可能性は低いけど、一クラスを作る以上の人数が同じ進路を希望したら、二クラスに分かれてしまうかもしれない。そうなったら、来年も美岬を守る体勢を構築できるか分からない。だから、走れるうちに走る。近藤さんとの打ち合わせは、そこまで踏み込んでいた。


 で、文化祭では、クラスの模擬店で、美岬をできるだけ目立つポジションに置く方が良いという話になった。

 「逆にその方が、みさみさ、安全だよね」と。

 恋人としての欲目ではなく、美岬の美少女ぶりは、天使を超え、神だ、悪魔だという話ですら納得させるだけのものがある。ここまで綺麗でなかったら、かえって濡れ衣を着せられなかったかもしれない。ならば、安全確保と売り上げと一石二鳥、しっかり者の近藤さんはソロバンを弾いたのだ。


 この辺りの、生活感みたいなしたたかさにおいても、クラスの誰もが近藤さんには敵わない。やっぱり母親役、なのだ。


 重い話、終わり。

 以上っ!


次回、開店、大忙し

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