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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました  作者: 林海
第一章 16歳、入学式〜夏休み明け(全42回:推理編)
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5 文化祭実行委員会、初会議


 六時限目が終わり、放課後の開放感あふれる校舎の中を、武藤さんと二人で視聴覚教室に移動する。

 だし巻きのお礼を言い、武藤さん本人が焼いたものということまでは聞き出せたけれど、そこで視聴覚教室に着いてしまった。

 でも、これで、俺は美岬さんの手の匂いをピンポイントで覚えたことになる。


 小さな映画館ほどの広さの階段教室なので、紺碧祭実行委員会本部と各クラスの実行委員、さらに各部活代表まで集まって、なお余裕がある。

 サトシが、ここのスピーカーは公立学校にあるまじきことにディナオーディオだとか言っていたけど、俺にはよく解らない。かなり高価なスピーカーらしいけど……。

 俺は、嗅覚ほど耳は良くないんだと思う。どちらかと聞かれれば、凝るならオーディオよりコーヒーの方がいいかな。音楽なら、だいたいスマホですむし。


 指定された席に座る。武藤さんの隣にいると、彼女への視線というものがよく分かる。ちらっと見て、忌むものでも見てしまったかのように逸らす。好奇ではあっても、好意ではない視線。

 悲しくなった。

 いかんいかん。

 なんで俺が悲しくなるんだ。サトシと話したばかりじゃないか。「心が動いたら負け」と、もう呪文のように心の中で繰り返す。


 実行委員長は、三年生の洗練された雰囲気の男子生徒だった。眼鏡が似合っていて、見るからに頭が良さそうだ。

 「皆さん、集まって頂いてどうもありがとう。今日は顔合わせですから、役員の全員にここに来て頂きました。今日は、テーマ募集とポスター募集のそれぞれの要項をお配りし、委員会名簿にご自分の名前を記入していただいたら解散です。

 なお、要項に書いてありますが、締め切りは、夏休み後、二学期初日です。皆さんから、クラスの方に応募を働きかけてください。よろしくお願いいたします。

 さらに、勝手ながら、名簿の中から、ゲート班、展示用資材班等、班決めを割り振って、後でお知らせしますので、ご協力よろしくお願いいたします」

 おお、強い。

 顧問の先生を一瞥もせずに言い切ったぞ。


 要項の紙が回って来た。テーマの字数とか、ポスターの紙の大きさとかの指定事項が書いてある。なになに、採用された場合は記念品(未決定)かぁ。

 同じく、名前欄が印刷された紙が回って来たので、名前を書く。

 初めて武藤さんの筆跡を見る。俺は、彼女の筆跡の特徴を素知らぬ風で、でもしっかり確認した。


 ……俺はさ、親が事故にあった時、辛かったんだよ。で、宗教とか、心理学の本とか読みあさった。中学生の理解だから、そりゃ、今から振り返っても限界があった。でも、結果として解ったことは、宗教や心理学の知識が増えても悲しみはなくならないということ。まぁ、当たり前だ。

 で、横道にそれたけれど……。心理分析で、筆跡に人が出るということはあるんだ。もっとも良いのは、実のなっている木を描いてもらうことなんだけれど。バウムテストってヤツだ。

 多分、そういう本を読む時間を受験勉強に充てたら、もう一つ上の高校にも行けたのかもしれない。

 でも、まぁ、その時の俺は、必死で救いを求めていたんだろうな。


 きれいな字だった。不必要までに丸い文字とかでもない。ただ、単に少し右上がりな、細身なきれいな字。ペン習字とかの型に嵌ったものでもないけれど、読みやすくて整った字。それが、きちんと程よい間隔に並んでいる。

 「なにか」を伺わせるようなものは、なかった。


 顧問の先生から、若干の付け足し程度の注意があって解散となった。


短い部分が二つつながっていたので、日に二回の更新〜。

次回から、いよいよ彼女の過去があきらかになっていく……。

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