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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました  作者: 林海
第一章 16歳、入学式〜夏休み明け(全42回:推理編)
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24 バディ、その2


 晩ご飯のお誘いをいただいたけど、冴えない外見のおじさん二人と固辞する。

 母娘水入らずにしてあげたかったのと、俺の人生とはいえ、姉には相談と報告が必要だということ。

 正直、残念だったさ。どれほどの料理の腕で、どれほどのものなのか、知りたいさ。

 でも、今回は仕方ない。


 自衛官の人が、俺の自転車を強引に車のトランクに積み込んだ。送って行ってくれるみたいだ。

 車に乗ると、後ろから自衛隊の人が冷やかしてきた。

 「少年、青春だな。なかなかうらやましいぞ」

 あんた、それが言いたくて俺を送る気になったんか? と頭の中では突っ込みを入れるけど、言葉が出ない。

 「えっ、まぁ、はい」

 などと言葉を濁す。


 ちょっと悔しいから、思いつくまま反撃。

 「美岬さんのお母さんに、ずいぶん気を使ってましたね」

 「上司だからな。組織の役職については、あとで説明してやる」

 おうむ返しに返す。

 「上司だから、ですか」

 あ、ちょっとむっとしたな。カウンターが決まっちまったか。母親さんには一回も決まらなかったのにな。ちょっと自信を取り戻す。


 「少年、お前、時々可愛げがないな。上司だからだよ。人妻で、子供持ちにフォローするとすれば、こういう方法しかあるまい。

 そもそもな、アレの旦那は人外だぞ」

 「はあ」

 そういうことですか。こりゃあ、神妙にお返事するしかないわ。で、美岬さんの父親って人外なの!?

 「でもな、お前は頑張れ。そのために、今日は特別に命令無視をしてやったんだ」

 「命令、無視しちゃったんですか?」

 ハンドルを握っている警察の人が笑いだした。


 笑いながら、話に加わってくる。

 「姫がお前に抱きついたとき、引き剥がせって、『アレ』の目が言っていた」

 「冷たい目で見られた自覚はありますが……」

 なんだ、二人がかりで上司を「アレ(・・)」呼ばわりですか。

 「『アレ』は怖いぞ。女なのに、ドライアイスと鉄でできたキンタマ持ってる。

 だから、俺たちは、ハイハイと何でも言うことを聞くし、それで俺たちは毎回生きて帰れる。

 けどな、あの場では多数決にしてやったんだ」

 「多数決?」

 「なんでも聞き返すんじゃねぇ。

 姫とお前で2、『アレ』が1」

 後ろから声が響く。

 すげぇ。この二人、同じことを感じ、同じように判断していたのか。


 「まぁ、半分以上プライベートな問題だしな、姫の意志の方を尊重したっていいだろうさ」

 後ろからの声が続く。

 「ま、あとはお前次第だ」

 ハンドルを回しながら、警察の人が言う。

 「自信ないですが、頑張ります」

 「わかいんだから、頑張れ」

 後ろからまた、声が響く。

 で、その「わ」と「ば」の中間の絶妙な発音、なんすか、それ。まぁ、バカいと若いは紙一重なのは認めざるを得ないけど。


 「でもな、わかいうちじゃないと、『守る』なんて大見得は切れない。いつの間にか言えなくなっちまうんだよ。

 言える期間を少しでも伸ばすよう、努力することだ。結果は、まぁ、気にするな」

 「それって、励ましてくれたんですか? 落としたんですか?」

 「持ち上げてから落とした。ただ落としたんじゃ、高低差が不足するからな。まぁ、気にするな」

 ちきしょー、さっきの仕返しだな。俺で遊ぶんじゃねぇ。

 「そもそもだな、お前の告白、ここで最大音量で再生してもいいんだぞ」

 ぎょっとして振り返ると、ICレコーダーを指に挟んでにやにやしている。

 ちょ、マジで堪忍してください。

 そのまま、ぽいっと放って寄越す。

 「自分で好きにしろ」

 はい、そうさせていただきます。

 まさか、返してくれるとは思わなかった。それどころか、データの初期化もしないなんて……。

 なんかね、すごく重いものを受け取った気がしたよ。


 それはそうと……。美岬さんのお母さん、確かに綺麗だったな。あこがれちゃうのも解る気はする。恋とかより、女神崇拝になっちゃうかもだけど。

 で、そうなると美岬さんの父親って、「人外」って言われるほど「いい男」なんかな? 美岬さんの母親、競争率高かったに違いないし、その中で選ばれるくらいの男なんだからね。


 美岬さんに、あとで聞いてみよう。


次回、姉、帰宅。

北区じゃないよ。

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