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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました  作者: 林海
第五章 比翼連理別編、若き日々(全7回:再会、その陰で編)
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6 再会


 坪内は、長い三分間を待った。


 坪内が踏み込んだ時に見たものは、全裸で椅子に縛り上げられたまま気絶しているヒグマのような大男と、その膝の上でその全身にしがみつくようにして熟睡している朝倉の姿だった。

 「美しい」とも、「凄まじい」とも取れる光景だったが、部屋に立ち込める異臭が「凄まじい」の後押しをしている。

 これが、自分たちの組織のもう一つの顔ということを坪内は理解していた。


 あまりの光景に坪内は逡巡させられたが、それでも音を立てないように近づき、背骨の浮き上がった朝倉の背中からそっと拳銃を抜き取った。


 あらためて見下ろす。

 この男なのか。

 朝倉の人格を作り、守り、離れることで破滅の一歩手前まで追い込んだのは……。



 気がつくと、即応部隊の二人を伴った半白髪の男が脇に立っていた。

 即応部隊の二人は、坪内の手から拳銃を取り戻すと、素早い動きでヒグマを縛り上げていたロープを解き、輸送パレット二つと角材で作った即席の担架に二人を横たえ、毛布をかけた。

 確かに、通常の担架ではこの男には小さすぎるだろう。

 また、それ以上に、この二人を引き離す必要のない大きさが、いい。


 「このまま病院に搬送する。確認、ご苦労」

 半白髪の男が言う。

 「いいんですか?

 現時点では本人確認ができたとは言えないですし、たとえ本人だとしても背景も割れていません。組織の機密に食い込んできている以上、処分もありうると聞いていましたが」

 返答の声は低い。

 「黙れ、若造」

 「っ!」

 いきなり、ここまで痛罵されるとは思わなかった。


 半白髪の男は、体ごと向き直って正面から坪内を見た。

 「そろそろ、仁を持って人の上に立つ準備をしておけ」

 それだけを投げつけるように言うと、さっさと部屋から出て行く。


 即応部隊の二人は、即席担架の角材を握り、半白髪の男の後に続いた。

 二人を乗せた担架は、見た目より相当に軽いはずだった。



 もしかして、自分は褒められたのではないか? 取り残された坪内は、後から気がつく。

 おそらく、自分の取った行動は、半白髪の男から見て満足がいったものだったのだ……。


次回、蹉跌を繰り返すことなく


次回でこの章終わりです。我ながら短かったですねー。

でも、これがあちこちでの佐たちの判断の伏線になるのです。

次も短いお話です。「17歳、冬」を引き続きよろしくお願いいたします。

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