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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました  作者: 林海
第四章 17歳、夏(全49回:アクション編)
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39 空挺降下


 遠藤と小田は、軽飛行機から飛び降りた。

 耳元の空を切る音が凄まじい。飛行機のエンジン音を察知させないため、かなりの高度からの降下となる。目標地点は、夜間といえ照明があるので極めて判りやすかった。陸上競技場と野球場、隣接した駐車場までがはっきり見える。


 スカイダイビングの要領で、位置を制御しながらぐんぐん落ちて行く。

 落ちて行く途中で、美岬がトランクから引きずり出されているのが見えた。遠藤は、ヘッドセットを通じて自分の目標を小田に伝える。ダンプカーだ。とりあえず、美岬の安全が確保でき、相手の武器に対して一定の防御も可能だからだ。

 タイミングが間に合わなければ、自動小銃を運転席に向け乱射する。だが、遠藤には成算があった。


 小田が了承を伝えてくる。

 お互い、暗視ゴーグルを付けている。

 武装は拳銃に加え、自衛隊の制式銃である折曲銃床式八九式自動小銃を持っている。加えて、敵方には軍用犬がいるということで、銃剣も持った。

 小田の降下地点は判らないが、問題ない。おそらくきちんとフォロー可能な場所に降りてくること、そしてその判断に対しては、絶対の信頼がある。

 相手の車がどのような位置取りをして止まるかまでは分からなかったので、そこは臨機応変にならざるをえない。


 開傘をぎりぎりまで我慢する。

 タイミングを間違えれば墜落死だ。究極のチキンゲームである。

 開傘後は、地上から十メートルを切るまで待ってから落下傘を切り離して、ダンプカーの荷台に飛び降り暗視ゴーグルを外す。ここの風向きはゆるやかな南、ブリーフィングで聞いていた。

 夜間降下で、開傘を極限まで遅らせ、かつピンポイント着地。パラシュートが開いていた時間はわずか数秒に過ぎない。

 最高難度の降下だが、難なくこなす。


 そもそも、「つはものとねり」への所属と併せて二重に機密となっているが、遠藤と小田は元々自衛隊の特殊作戦群()に所属していた過去があった。このことについては、「つはものとねり」内部でも知っている人間は限られている。双海、菊池も当然知らされていない。

 自衛隊出身の精鋭ということであれば、レンジャー出身と言えば大抵の相手は納得してくれるので、それ以上の説明は必要ないのだ。


 黒い落下傘自体は風でそのまま流されて、かなり離れたところへ落ちる。街灯は上空を照らしてはいないし、夜間で黒いパラシュートの目視は極めて難しい。

 ダンプカーには偽装のための土砂が積まれていることはブリーフィングで聞いていた。そのため、音を殺しての着地の成算はあった。おまけにダンプカーがエンジンをかけた直後だったので、遠藤の行動は全く気がつかれなかった。

 運は、もう一つ遠藤に味方していた。上空から確認できていたのだが、運転席が、他の連中の反対側にあたる向きで停車していたのだ。


 5点着地で荷台から運転席側に転がり、淀みなく行動を開始する。ダンプカーは掴まるところが至る所にある。動き出したダンプカーの荷台から、運転席のドアのすぐ後ろまで移動し、体勢を整えてからドアを開け一気に乗り込む。体当たりで運転している奴を吹き飛ばして運転席を占領する。

 アクセルを思い切り踏み込み、ハンドルを二台の車に向けて切る。視界の隅に、助手席に吹き飛ばされた男が、慌てて拳銃を抜くのが見えた。

 認識と同時に、遠藤の左手の鉄槌打ちが、容赦なく男のみぞおちにめり込んでいる。


 美岬の体ぎりぎりのところをダンプカーは通り過ぎ、未遂の凶行を隠していた乗用車とライトバンを弾き飛ばす。


 数発の銃弾がダンプカーを追うが、拳銃で狙える距離と角度ではない。

 その間に、近くの雑木林に目立たぬよう着地していた小田が、遮蔽物に沿って移動し美岬の体を掬い上げた。そのまま走り出す。その背中へ、敵の銃弾が集中しようとしたが、その射線を遮るようにサイレンを鳴らさないパトカーと、それに先導された乗用車が、弾け飛んだ乗用車とライトバンの間から乱入した。


 小田は、一旦美岬を肩から下ろし、パトカーから転げ落ちるように降りる坪内佐配下のバディの援護に回った。

 軍用犬がどこにいるかの確認はできなかった。

 気にはなるが、事態の展開が早すぎてさすがに追いつかない。



次回、帰ってこい!!

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