父親
親父はことしでいくつになったか。
父親の年齢すらまともに覚えていないとは、俺というやつはまったくの親不孝者だ。
盆と正月ぐらいは地元に帰ろうともおもうのだが、自分に課したその約束さえも近頃はままならない。
親父の背中はおおきかった。
正直、完璧な父親とはほど遠かっただろう。もっと立派な父親は世の中にたくさんいるのだろう。
しかしながら、俺の親父の背中はおおきかったのだ。
久々の帰省。いまではちいさくなってしまった父親に、親孝行の一つでも、と。
親子とは不思議なもので、いざ目の前に立たれてしまうと何をしていいのかもわからない。
おかえり。という声に、ただいま。と答えるのが精一杯だ。
とりあえず温泉が好きな親父だ。温泉にでも行こう。そしてドライブがてら海にでも行ってみよう。
冷たい海風をもろともせず、サーファーが波を掴まえようと海面を滑っている。
砂浜に降り立ってはみるが、親父と言葉を交わすわけでもない。煙草を旨そうに吸う親父に倣って、俺も煙草を咥える。
俺は大きくなりすぎた。親父と比べたらふたまわりは大きい。
けれど親父よ。
あんたの背中は、いまでも大きいよ。