03
ようやく書けました。
前回より大変時間が掛かってしまいました。
次からはもっと短いペースを心掛けねば。
ここは何処かにある研究所の一室。誰にも知られていないとあるDr.の秘密の隠れ家である。
Dr.が少年を見つける前からとりあえずの拠点として選んだ、使われなくなったと思われる施設なのだが、住めば都とはよく言ったもので今では居心地の良さを感じていたりする。
そんなDr.は目前の問題に頭を抱えていた。
「…………」
いつもならばふと頭に思い浮かんだアイデアを即断即決即行動していたが、今回の件ではその瞬発力は発揮されずに時間ばかりが過ぎていく。
(落ち着け私。今までも重大な分岐点があったが冷静かつ迅速に判断し、成功してきたではないか!この程度の問題などいや違うこの程度と言うのは失礼だ、今回の件も今まで同様解決できるはず)
といった具合で思考を止めずに最適解を模索し続けるも解決には至っていない。
ふと視線を前に向けると、オレンジジュースをストローで必死に吸い続ける少年の姿があるが、その瞳はうるうると涙が溜まっている。遠くない未来に零れ落ちてしまいそうだ。
(本名が駄目だという事は想定の範囲内ではあった。しかし他に思いついた名前も気に入らず私の思いついた名前は全て言い切ってしまった。どうしたものか)
事前に作ってあった十五の名前を思い返し、一旦落ち着かなければとコーヒーを一口飲む。そしてもう一度打開策が無いかと思考を進めた。
(ここに居るのは私と彼の二人のみで援軍は期待できない。そして私も限界近くに達している)
そこまで考え、もう駄目かと諦めていたその時。
「……エスト」
Dr.の口からポツリと溢れた。その言葉に少年は目線をこちらに向ける。
(無意識に口から出た言葉だがこれ以外にはもう思いつきそうにない。……ならば)
そこからDr.は思考巡らせ、
「そう……エストだ。最上級の単語の最後の三文字のestから考えた。最上級……一番上、天辺だよ。かっこいいだろう?」
駄目押しで即興で名前の由来も作った。これでどうだと、少年を見つめる。
「えすと……エスト!」
少年、いや、エストの笑顔にDr.はほっと胸を撫で下ろした。正直な話、これで駄目であれば名付けの本を買い与えて自分で選んでもらおうかと本気で考えていた。
時計を見ると名付けを始めてから一時間近くは経っている。体感ではもっと掛かっていると思っていた。ここまで濃い一時間は久しぶりだとコーヒーを仰ごうとして中身が無いことに気付いた。
(まさかここまで大変なものだったとは……。慣れないことをすると調子が狂ってしまうな)
「エスト君、お腹は空いているかい?空いてなければもう寝てしまおうか。もうこんな時間だ」
エストに時計を突きつけつつ提案する。 エストはコクンと頷くと、Dr.をじっと見つめたまま動かなくなった。
「どうしたんだい?」
何となく嫌な予感をひしひしと感じつつそうDr.が声を掛けると、エストは両腕をDr.に突き出し、
「だっこ」
そう呟いたままジッと動かなくなってしまい、Dr.は再び頭を抱えるのであった。
遅くとも1月以内には投稿予定です。
期待しないでお待ちくださいm(_ _)m