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曰く付きの館  作者: 木染維月
第一章 死情
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「だ、誰って! 出会い頭に誰とは随分とご挨拶だな。人がこうして引きこもりの彼女の身を案じて来てやったのに」


「蓮先輩・・・・・・きっと忘れられてるんですよ・・・・・・うぅ・・・・・・僕、今結構ショックです」



 ドアの向こうにいたのは、もちろん迎えの者などではなく。


 怪しい男子二人組だった。



「あ・・・・・・いや、えっと。私、あなた達のこと知らないんですけど」


 そして私は俗に言う「コミュ障」、会話が苦手、数ヶ月間人と話していない引きこもり。本領発揮の時間である。


 悲しきかな。


 っていうかこの人たち、ホント誰。



「ほらやっぱり忘れられてるじゃないですか!」


「そ、そんな馬鹿な・・・・・・。ま、まあ落ち着け、祐平。まだ話は終わっちゃいねえ」


「始められる段階にすらないんですよ!」


「お、おう、まあ、それは・・・・・・」



 あれ、ちょっと待てよ。

 思い当たる節がある。


 さっき、この二人組の大きいほう、「れんせんぱい」と呼ばれたほうは、私を「引きこもりの彼女」と言ったではないか。と、いうことはこいつ、さっき私の回想シーンに登場した・・・・・・。


「あーっ、あの男!」


「ど、どの男だよあの男って! ひっでぇ!」


「思い出していただけたようで何よりです」


「かなり悪い方向で思い出されてないか、これ!?」


「れんせんぱいって言うんですね。名前までは覚えてなかったもので」


「菅原蓮だ! 泣きてぇよ、俺は・・・・・・」


「蓮先輩、落ち着いてください。・・・・・・ともあれ、僕もショックですよ。奏音先輩、あなたは引きこもる前に、蓮先輩に敬語なんか使ってなかったじゃないですか」


「そ、そうなんだ?」


「はい、そうです。奏音先輩の近況が気になって何度かここを訪ねたのですが、僕たち臆病なもので、会う前に華麗なる回れ右を決めていたんです」


「華麗なる回れ右って・・・・・・。てか、私、この人とまだ付き合ってたんだねぇ」


「かのぉ――――――――ん‼」


 さっきからこの「連戦パイ」とやら、叫んでばかりで近所迷惑だ。それに身を案じてと言われても、さっきまで忘れていたような人たちに案じられる身は無い。


 押し付けがましい人たちだ。


 しかも男子二人で女子の部屋を訪問しようと思っていただなんて、変態疑惑をかけられても仕方ない。



 ・・・・・・いや、でも。



 と、私は思い直す。


 この人たち、もしかしたら使えるんじゃないか?


 長らく引きこもっている私の身を案じていたというのなら、それなりに私とは深い関わりを持っていて、それなりに好意を持っているのだろう。だとしたら、もしかしたら。



 「生贄落札会」が行われているという「館」に。



 「(くろき)叢館(むらくものやかた)」に。



 ついてきてくれるのではないか?



 だとしたら丁度良い。

 男手が欲しい場面も出てくるかもしれないし、この二人についてきて貰わない手は無いだろう。

 なんという幸運。


「・・・・・・という訳なんだけど、ついてきてくれない? そこのお二人さん」


「いや、どういう訳だよ。華麗なる回れ右から話が飛びすぎて理解が追いつかないって」


 しまった、長い間人と話さなかったせいで・・・・・・。思った通り、ばっちり本領を発揮してしまった。


 発揮したくも無い本領を!


「とりあえず説明をお願いします、奏音先輩」


「あー、いや、実はね・・・・・・? 『生贄落札会』の話って知ってる? 私、今からそこに行くんだけど」

「ついて来いってか」


「うん、そゆこと」


・・・・・・・・・。




「はぁ―――――――!?」




 叫ばれてしまった。


 大音量で。


 ああ・・・・・・近所の方から苦情が来るんだろうな・・・・・・また母に迷惑をかけてしまう。


「連戦パイ、うるさい」


「俺はパイじゃねぇ! 菅原蓮だ! 何だよ連戦パイって! 誰と戦ってるんだ!」


「え、だってそこの人が連戦パイって」


「僕ってそこの人扱いなんですか? 小林ですよ? 小林祐平ですよ?」


「はあ、祐平ですか。・・・・・・で、連戦パイ。あと幽閉。ついてきてくれるの? くれないの?」


「俺はパイじゃねえ! 話はそれからだ!」


「・・・・・・僕も幽閉じゃないですからね? 何ですか幽閉って。可哀想な子じゃないですか」


「えーっと・・・・・・連戦? あとyou,hey?」


「お前わざとやってるだろ! ・・・・・・まあ、今はそれでいいとして、だ。『生贄落札会』って、アレだろ、『(くろき)叢館(むらくものやかた)』だろ。祠のない鳥居をくぐると・・・・・・ってやつ。そもそもあの噂自体が眉唾にしか思えねが・・・・・・。もし仮に、その噂が本物だったとして、そうだったらまず帰って来られないだろうな。いくらお前でも、タダではついていけねえ。・・・・・・そうだな。理由を聞かせてくれねえか」


 顔をしかめて、菅原蓮が問いかけてきた。


「僕も同感です。理由を教えてください、奏音先輩」


「ああ、理由ね。・・・・・・って、急がなきゃ! そうだよ私急いでるんだよ! 早くしないと風花がチータスにあんなことやこんなことされちゃう!」


 そうだ、すっかり失念していたが、私は急いでいるのだ。さっさとついてきて貰わねば。


「えっ・・・・・・風花先輩があんなことや・・・・・・? チータスって落札会の主催者って噂の人ですよね。チータスさんは変態さんなんですか!」


「変態さんって何だよ・・・・・・兵隊さんみたいに言うな。で、何だ、奏音。風花と連絡が取れないのか」


「飲み込みが早くて助かるよ、連戦。そういうこと――」


「俺は! 連戦じゃ! ないっ!」



 ……と、過程はともかくとして。


 私は無事、二人分の男手を確保したのだった。




 ――余談だが、菅原蓮については完全に忘れていたものの、実は小林祐平に関しては明確に覚えているのだ。まだ学校に通っていた頃、風花以外に味方でいてくれて、相談に乗ってくれたり雑談をしてくれたりした、あの姉弟だ。


 ――小林ミドリと小林祐平。


 しかし彼ら――少なくとも彼――は、記憶にないようである。忘れているようである。


 いや、そもそも最後まで気付くことは無かったのかもしれない。



 自分たちが犯した、罪の事なんて――。



先に言っておきます。

祐平とミドリの「罪」に関しては、充分な伏線回収がされておりません。


いや、それっぽいことは書きました。

頑張って読めば、それと読めないこともないです。

けど伏線回収と言うには、あまりにもお粗末な……はい……。


見逃してやってください……これからも「館」をよろしくお願いします……!

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