表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曰く付きの館  作者: 木染維月
終章 贈情
37/39

「──で、だけど」


 空気が、一転して明るいものへと変わり。

 チータスが、軽い調子で言った。


「そろそろいいんじゃねェの? 風花(・・)


 あ、あれ?

 風花──って。


 呼び捨て──?


「……そうですね。そろそろ良いでしょう。お疲れ様でした──健先輩(・・・)


 け、健先輩?

 風花は、何を言っている──チータスに向かって?


「あぁ、健先輩。代打頼んで悪かったな。マジ申し訳ない」


「いや、いいってことだぜ。割りと楽しかったしな。それに、お陰様で──晴れて、色々と悩みも解決したし、な。むしろ感謝してるぜブラザー!」


 蓮も蓮で、謎発言──。

 一体、どうなっている?


「って、風花。お前、そろそろ種明かししてやれよ。奏音が混乱してんだろ」


「はいはい、分かりましたよ。あ、蓮先輩、奏音と仲直りは?」


「出来たんじゃねえの? たぶん」


 おもむろに、どうだ? とこちらに話を振ってくる蓮。

 いや、どうもなにも──。


「何が起こってるんですかね!?」


 ──高橋奏音、全身全霊でぶつけた疑問形だった。


 いや、だって、えーっと?

 チータスが、健先輩とやらで?

 風花と蓮がそれを知ってて、しかも健先輩は蓮の代打で──?

 周りを見回せば、頭の上にクエスチョンマークを浮かべているのは──。


 わ、私と、祐平、だけ!?


 他の皆はしれっとして着席したままでおり──?


「えっと、ホントにどういうこと? チータスって一体何だったの?」


 風花は苦笑して、


「いやー、騙しててごめんね奏音。今から全部説明するね」


 さらっと「ごめんね」って言われても。

 何がなんだかちんぷんかんぷんなだけですけど?


「一応聞くぜ、風花──ミドリのリトルブラザー、祐平はいいのか?」


「あ、そいつはどうでもいいです」


「ひどっ!?」


 祐平の涙目の抗議にも、笑う余裕はない。

 やがて、一息つくと、風花は──よく通る委員長の声で。

 ──全てを、語りだした。


「さて──」




           ◆



 さて。

 まずは謝らせてね──奏音、それに祐平。

 えーっと、落ち着いて聞いて?


 ──この『館』も、『生贄落札会』って都市伝説も、ネット上の噂も、小野風花誘拐も──。

 ぜんぶ、私がやりました。

 ごめんなさい。


 でもこれには訳があるの。


 ここで全てを語ってしまうのも、恩着せがましいような気がして気が引けるんだけれど、でもこの際だから全部話そうと思う。恩を売ろうって訳じゃないから、それは知っておいて。



 ──三年前。


 当時の私は、自分で言うのも何だけど、真面目で、真っ直ぐで、まさに学級委員の中の学級委員ってかんじの人間だった。だから、学級委員として、「クラス内のいじめを放置してはならない」、よって、「この問題は対処せねばならない」って思っては、いた。──蓮先輩と華先輩なら覚えてるんじゃないですか? 初めの頃、私ってこんな奴でしたよね。


 ん? どうしたの祐平。紅暮葉イコール金井華だよ? そ、そんなにショック?


 まあでも、いくら学級委員が何とかしなきゃって思っても、そうそうどうにかなる問題じゃないじゃない、ああいうのは。だから、どうしたものか──って、そう思ってたときに、部活でミドリ先輩に話を持ちかけられたんだ。「ねぇ風花ちゃん、クラス内のいじめ撲滅、私の弟の知り合いと協力してみる気はない?」って。

 ……えっ、違う? 「協力してみない?」って言った? ──知りませんよ、そんな一言一句覚えてる訳ないじゃないですか!


 と、とにかく! ミドリ先輩にそう持ちかけられて、まずは弟──つまりは祐平に、会った訳だ。それで、話を聞けば、祐平は特に事情は知らなくて、華先輩って人に頼まれたんだ、って。そこから祐平に華先輩を紹介してもらって、華先輩から事情を──つまり、蓮先輩が奏音と付き合ってて、だから奏音を助けたいと思ってて、私に協力して欲しいと思ってるっていうこと──を聞いて、その数日後、蓮先輩に会ったんだ。


 蓮先輩、すごく真剣な顔してた。年下の私に、頭なんか下げちゃってさ──。そしたら私だって、真剣に、何かしてやんなきゃ、って気になるじゃない。でも結局、どうしようもないことには変わりないんだよね。それで、どうしよっか、って三人で散々話し合って──。


「とりあえず、風花たん、奏音たんと友だちになってみればー? 助けるとか助けないとか言ってても、結局、奏音たんが何に一番苦しんでるのか、どうしてほしいのか、わかんないとどーしよーもないしにゃー」


「友だち……ですか。いいですね、名案です」


「え、名案? ありがとー風花たん! 照れるにゃー。にゃふふ」


「『風花たん』じゃありません!」


 ……ってことになったんだよ。──えっ、華先輩、なんで顔赤くしてるんですか? 恥ずかしいならそのキャラやめればいいのに……。アイデンティティ? はぁ、そうですか……。もう好きにしてください。

 だけどね? ここで一つ問題が発生したんだ!


 ──私、友だち作ったことねぇ。


 委員長って立場上、別に友だちいなくてもクラスで浮いたりしなかったから気にしたことなかったんだけど……。友だちってどうやって作るんだ、そこから始まったんだよ。これ、他人にカミングアウトするの初めてだからね? この場にいらっしゃる皆さんおめでとう。


 それで、奏音と初めて「友だち」になって、さ。最初は「いじめ撲滅」以上の目的はなかったことは認める。でも、奏音と話すうちに、どうでもいい話して馬鹿みたいに笑って、ただ単純に楽しくて。いつの間にか、奏音は私の中で、親友になってた。一方的だったらごめん、だけど……。──えっ、そんなことない? ありがと、嬉しいよ。


 それで私、やっと気付いたんだ。どうにかしなきゃとか言いながら、本当に全力で解決しようと努力出来てたか、って聞かれると、はいそうです、とは答えられないこと。だから私、決めた。もちろん裏でも表でも色々手を回して、奏音のために出来ることは全力でやり続ける。でもそれとは別に──奏音の、傷ついて、すっかり人間不信になったその心を、救うための方法を探そう、って。


 で、それがこれです。


 びっくりした? この館はさすがに最初から建ってたものだけど、でも、『鬼』とか『生贄』とかの設定は、この土地に伝わってる民間伝承をベースにして私が考えた物語。詳しいことは今度ゆっくり話すけど、本当は、『そんな館に、友人を助けるべく自ら足を踏み入れた一人の少女。引きこもりで暗い過去を持つ彼女は、そんな己の弱った心に打ち勝って自らの心を救い、また友人も助け出すことは出来るのか──?』みたいな筋だったんだよ。まぁ、そうそう思ったとおりに事が運ぶ訳もないし、用意したストーリーがフルに活かされることはなかったんだけどね。


 なんでこんな、大掛かりな異世界転生モノの舞台を作ったのかっていうと、それは、やっぱり、いつも私たちが過ごしてる、まぁ、設定だけどここの言葉で言うなら『表の世界』? は、もう既に、奏音にとって信じられるものではないのかな、って思ったから。自分が信じてない世界で自分の思うように行動できる訳がないよね。だからこんな舞台を用意してみたんだけど……。


 だけど。


 設定とか考えてるうちに途中から楽しくなっちゃって完全に私の趣味全開な設定になっちゃってストーリー本筋に明らかに関係ないのにラピスとかコパルとかルチーとか暮葉様とかチータスとか色々登場人物増やしちゃってその上せっかくここまでクオリティの高い異世界創り上げたんだからたくさん人呼んで自慢したいなーとか思って無駄にたくさん人を呼びましたごめんなさい──ッ!


 いやだってさぁ、こんなハイクオリティな異世界、他にないよ? ちょっとやそっと自慢したくなったからって罰あたらないでしょ? んでせっかくだから理想郷にしたくなるじゃん!


 ……っていうか、さ。


 もう途中から、ただ純粋に、「親友と異世界で遊べたら面白いなー」って思って。

 異世界設定とかぶっちゃけただの趣味だし。


 ……え、祐平に隠してた理由? あぁごめんごめん、完全に忘れてたわ。あんた、嘘ド下手なんだもん。あんたが全部知ってたら数秒と持たずに奏音にバレてたし。うん、そんだけ。



 ──私の話は以上です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ