Ⅶ
――『俺』は、この館の管理人を務めている男だ。
小野風花を連れてきてから、館では実に様々なことが起こった。今から俺は、管理人として、その全てを収束させに向かう。
まずは、今まさに起こっている、殺人未遂の現場からだ。
現場に居合わせているのは――。
「やあ。元気かい?」
ひょい、と、倒れている少女を囲む彼らの肩口から中を覗き込んで、声をかける。まるで、最初からそこに居たかのように。天気の話でもするかのように。
「ねえ、殺されかけた気分はどうだい? 俺に教えてよ――菅原蓮くん」
「なっ――なんで、俺の名前を・・・・・・!っていうか、あんた、誰だよ!?」
驚愕を顔に浮かべる菅原蓮。
だが祐平は――。
「もしかして・・・・・・『主催者チータス』さん、ですか。変態さんの」
え、変態!? なんでそんなことになってんの!? 俺、なんかしたっけ!?
・・・・・・という内心の動揺と突っ込みはおくびにも出さず、俺はあくまで冷静に、
「俺が変態? やだなぁ、変態は君だろうに――小林祐平くん」
と、反撃に出る。
あくまで冷静、あくまで余裕。感情の揺れなど表に出せば――生き残ることは出来ない。そして、姉上――暮葉を出し抜いて、『生贄』を解放することも。
「そんなことより、俺は高橋奏音さんに用があって来たんだよ。だから、悪いけど、高橋奏音さんは連れて帰らせてもらうよ」
「何だと・・・・・・? テメェ、奏音に何しようと――ッ!」
「そう熱くならないの、蓮くん。俺はただ――その子に、ここに招いた責任の最低限として、この館の全てを教えてあげようかなー、っていう、親切心でやってるんだよ? そんなことも分からないようじゃ・・・・・・きっと、奏音さんの気持ちも分からずに、彼女につらーい思いばっかりさせたんだろうねぇ? あれぇ? 彼氏失格なんじゃないのー?」
「言わせておけばテメェ、好き勝手言いやがって・・・・・・! だいたいなぁ、この館の色々が分かってないのは俺らも一緒なんだ! ここで俺らにも話してくりゃいい話だろ? おい!」
なりふり構わず、といったふうに叫ぶ菅原蓮。こんな感情的な――全くもって、論外だ。そう感情的になって、いいことなど何もないだろうに。
「あーあ、はいはい分かったよ・・・・・・。泣く子と地頭と阿呆には勝てぬっていうけど、全くそのとおりだね。昔の人は蓮くんと違って頭がよかったみたいだ。じゃあ仕方ないから、脳みその代わりに入浴剤が頭に詰まってる蓮くんのために、みんなで話をすることにしようか。あ、一応礼儀として紅茶出すよ。ダージリンでいいかい? 祐平くん、入浴剤くん」
「誰だよ入浴剤くんって! 俺は温泉施設のマスコットキャラか何かなのか!?」
「蓮先輩、落ち着いてください! 温泉施設のマスコットキャラが『入浴剤くん』だったら、場合によっちゃ詐欺です! 大丈夫ですよ、僕なんか脳内お花畑呼ばわりですから・・・・・・。で、チータスさん。じゃあ、僕らも全てを聞かせてもらえるんですか?」
「うん、そういうことさ。花畑くん」
「花畑くんって何ですか花畑くんって!」
全く、どうしてこうも皆感情的なのか。
実に――実に、羨ましい――……!
俺なんて、感情を殺して飄々と振舞うことだけを考えて生きるようになってから、久しいっていうのに。
「オーケー・・・・・・じゃあ、話そうか。『俺の部屋に案内しよう』」
俺は、そう宣言した。
この言葉が合図だ、と、皆で決めてあったから。
曰く。
――「終章始動、全員シナリオ通りにスタンバイ」と。
さてさて、五章が完結しましたね!次で遂に終章です。
二月も終盤、そろそろ出会いと別れの季節がやってきます。木染がわっせわっせと別れがテーマの短編を書き始める時期ですかね。
物語はもう一度奏音の視点に戻って終わりを迎えます。蓮・華・そして風花の思いの先に、奏音は大切なものを見出すことができるでしょうか?是非とも、最後まで見届けて頂ければと思います。
ラスト一章、「館」をどうぞよろしくお願いします!




