Ⅳ
「納得いかねえ」
らしからぬ口調でひとりごちたクソ姉貴に、僕は、
「黙れ変態姉貴」
らしからぬ口調でぴしゃりと言い放つ。
だいたい、本人の与り知らぬところで年下の男の子の奪い合いなんてしてる方が悪いんだ。気色悪い。このクソ姉貴と脳無いお華ばたけと暮葉さんが同じ女であるなんて、僕は絶対信じない。
結局、ペアの発表は健先輩がしてくれた。言い合う痴女の仲裁に入って、宥めて落ち着かせて、ペアを発表して、ブーイングをあしらって・・・・・・これらを全て一手に担ってくれたのだから、もう本当に救世主としか言いようがない。今日からは「救世主健様」と呼ばせていただくことにしよう。
で、どういうペアになったか、というと。
なるべく迷惑人が暴走しない組み合わせを考えた・・・・・・もちろんバッシングは覚悟の上だったが、あのバッシングの多さは少なからず健先輩のせいだと思う。
以下、発表時の様子。
「あー・・・・・・そんじゃ、発表するぜ。この俺が決めたレジェンドサイクロンフレアな組み合わせ、心して聞――」
「健、早くしてくださります? 鬱陶しいですわ」
「・・・・・・心して聞くんだな。ゴホン! えー、まず誉れある一番手・・・・・・『三点リーダー直人』こと森直人アンド、『永遠に幼き似非幼女』こと小川小春!」
「テメェ後で面貸せ・・・・・・なのですわっ!」
「・・・・・・堅実なる二番手! 『我らの姐さん』こと小林ミドリ! アーンド、・・・・・・この俺! 『真の神々のおわす地より降臨されたし永久なる疾風の運命の伝説』こと堀口健ッ!」
「・・・・・・健、すごく鬱陶しいわ」
「続く三番手は『迷惑拡散機』こと金井華アンド・・・・・・まだ見ぬ終焉の美女の手下の誰か!」
「ちょっ!? 迷惑拡散機って何ですかセンパイ! ひどいですにゃ! っていうか今の流れ、祐平きゅんだと思ったのに! なんでー!」
「祐平は終焉の美女のもとで別の仕事があるそうだ」
「ぐぬぬ・・・・・・終焉の美女許すまじ・・・・・・うにゃー・・・・・・!」
・・・・・・突っ込みどころが多すぎて、僕は終始沈黙を貫いた。口を開いてもまず一人では突っ込み切れない自信があった。
だが痴女コンビが救世主・健様に殴りかかるなどといった事態は発生せず、思ったよりはスムーズにことが運んだ。・・・・・・これでスムーズというところに、ぜひ連中のどうしようもなさを感じて欲しい。
まあ決めることは決めたし、後は暮葉さんの部下(手下?)を待つだけだ。精々静かに過ごさせて頂こう・・・・・・。
――と、程なくして。
バーン!
という効果音を幻視しそうな勢いで突然襖が開いた。続いて「邪魔するよ!」という威勢のいい少女の声。
――ああ、また面倒くさそうな奴が来た。
もしかしてこれが、いわゆる「ハーレム」状態なのだろうか? だとしたらこれって、思ったよりいいもんじゃない。全然、ちっとも。攻略したいのなんて暮葉さんとラピス、コパルくらいだ――と、物思いに耽る僕の目の前に。
ポニーテールの利発そうな少女は、仁王立ちした。
「へー、あんたがコバヤシユウヘイ? 暮葉ちんに聞いたんだけど」
僕は呆気にとられながらも、答える。
「は、はぁ・・・・・・そうだけど」
周りの皆は展開についていけず呆然とするばかりで、助けてくれそうにない。
なんでだよ!
こういうときこそ出しゃばれよ、クソ姉貴!
・・・・・・と、ポニーテール女の後ろから、桃色の髪をしたショートカットの女の子が顔を出した。西校の制服を着て、なぜか頭の上に、深緑のベレー帽をのっけている。――いつから居たんだ? 気付かなかったが・・・・・・。
「ちょっと楓、初対面の人に向かってそれは・・・・・・。いくらコバヤシユウヘイが世紀末の変態野郎だからって、一応念のため礼儀はわきまえないと」
そっ・・・・・・そんな可愛い顔してそーいうこと言うなよ! 泣きたくなるだろ!
「えっと・・・・・・コバヤシユウヘイさん、楓が無礼なことを言ってすみません。私、雨咲桃音といいます。よろしくお願いしますね」
にこっ、と微笑む雨咲桃音。天使の微笑み――恐らく同年代だが、僕が変態だとかそういうのは差し置いても、普通に可愛い娘だった。
なんか、学年に一人はいる清楚系モテ女みたいな。
――と、さらにその後ろからぬっと顔が――。
「俺は広樹。暮葉様の部下の一人だ。よろしく」
がたいの良いスポーツ刈りの少年、こいつも楓や桃音と同年代。
・・・・・・男子じゃん!
まあ世紀末の変態野郎ではない僕は、別に三人目の登場人物が女子じゃなくたって、がっかりなんかしないけど。
いやこの際それは割とどうでもいい。
問題は。
「・・・・・・登場人物多すぎだろ・・・・・・ッ!」
キャパオーバーだよ!
人多すぎ!
「ちょっとコバヤシユウヘイ・・・・・・何その顔。気色悪いから早く指示出してくんない? なに? あたいが案内すんのはどいつなの? あたい馬鹿だからわかんねーし」
キレ気味に突っかかってくる楓。さっきから仁王立ちといいその態度といい生意気な奴だ――ムカついたので、一番面倒くさそうなペアを押し付けてやることにした。
「あーっと・・・・・・楓? でいいんですか? じゃあそこの赤ジャージの人とパーカー着てる人、お願いしますよー。赤ジャージは僕の姉貴で、パーカーは天才にして中二病です」
「・・・・・・はぁー? うん、よくわかんないけど分かった。分かったけどナニ言ってんのかよく分かんない。ごめんねー、あたい馬鹿だから」
ドヤ顔で言うな。
その「あたい馬鹿だから」っていうのは何? そういうキャラなの?
続いて、広樹が口を開く。
「コバヤシ。俺が案内する奴らも教えてくれるか」
「あ、はい。そこの無口そうな男子と、やたらと小っさい女子です。お願いします」
「おう」
なんだこの人。対応が武士みたいで怖い・・・・・・寡黙な人なのだろうか。小春先輩が「ちょっと祐平! もっかい言ってご覧なさいよ! 今なんて言いましたこと!?」と喚いているが、それは徹底的に無視する。
「えーっと、じゃあ桃音さんは・・・・・・」
「私は、余った方と組みます。あのロングヘアの方で良いんですよね?」
「そうです。彼女は変態なので気をつけてくださいね」
「分かりました。でもきっとユウヘイさんほどじゃないですよね」
先ほどのように、にこっ、と天使の微笑みを浮かべる桃音さん。
・・・・・・絶対に、僕より華先輩のほうが変態だと思う。
ともあれ僕は、突然の来訪者――暮葉さんの部下三人に向かって、頭を下げた。
「では皆さん・・・・・・よろしくお願いします」
年末ですね!!
皆さまクリスマスは如何お過ごしでしたか?木染は偉いのでおうちでひたすら執筆してました。偉いので。はい。
「館」は年末年始関係なく毎週水曜更新を保ちます、次回更新は一月二日です。私みたいに偉いから年末年始お暇な方はぜひ読んでやって下さい。
これからも「館」をよろしくお願いします!
そして皆さま、よいお年を!!




