Ⅵ
――ああ。
頭がぼんやりする。
意識が霞んでいる。
遠くのほうで高橋奏音が何か叫んでいる。
言葉の思いつく限りに悪態をついている・・・・・・のかもしれない。
ああ、今、手に何か当たった。
痛いような気がする。
硬くて冷たい。壁だろうか。
ここで私は、精も根も尽きるまで叫び続けよう。
もう誰とも関わりたくないし、じゃあエネルギー切れになるまで叫んで、
――そのままこの冷たい床で、転がっていよう。
発見されるのはいつだろうか。
腐敗する死体の臭いはすごいというし、白骨化までは待ってくれないだろうか。
「私」を演じる魂も、哀れなものだ。
こんな散々な目に遭うのは、たとえお芝居の役でも御免だろうに。
十数年連れ添った魂とやらのためにも――
もう、こんな茶番はやめにしよう。
ああ、でも、「あいつ」だけは腹立つなあ――。
こんな哀れな私の目の前で、煌めく青春時代を謳歌していたあいつだけは。
自分を哀れむと、こんなにも楽なんだ。
なんだか、心の中にある硬いものが溶けていくようだ。
そう、ちょうど、金属製の球体のような――。
もしかして今、私の心で溶ける何かは、溶けたらまずいものだろうか。
なんとなく、そうだった気もする。
でも別に、いいと思った。
特に興味もなかった。
喉が熱い。
体中が軋む。
どこかで一度、経験したようなこの痛み――。
思い出したくなかったあの日。
暴風雨。
おくじょう。
れん。
はなせんぱい。
あのまましなせてくれたらよかったのに――。
ならせめて。
どうせわたしもしぬんだから。
あいつをころしたいなぁ――。
………………はい。
これにて三章は完結です。
奏音ちゃんが遂に狂ってしまったわけですが。ここから物語はどう動くんでしょうか。
これからも「館」をよろしくお願いします!




