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曰く付きの館  作者: 木染維月
第二章 私情
12/39

「・・・・・・何ですかそれは」


「いや、何ってだから、お前が訊いてきたんだろ? 俺の思い出し事」


「僕はそういうことを言ってるんじゃありません」


 祐平は何とも言えない微妙な表情で、言った。


「何なんですか、その歯が浮いて口が腐りそうなエピソードは・・・・・・!」


「は? 何だお前、歯周病だったのか?若いのに大変だな。今度かかりつけの歯医者を紹介してやるよ」


「僕はそういうことを言ってるんじゃありません!」


 何故か祐平に怒鳴られてしまった。

 確かに「あの日」から話題が逸れている感じのするエピソードではあったが、関係性が深いと思ったから話しただけだ。それなのに何だ、祐平ときたら急に歯周病の話題など始めやがって。


 やっぱり、姉貴さんに甘やかされすぎてるよな、こいつ・・・・・・。


「あのですね、先輩。僕は蓮先輩の惚気話を聞きたい訳じゃないんですよ。っていうか、僕が奏音先輩絡みの惚気話なんか聞きたいと思う訳ないですよね? 蓮先輩ならよく知ってる筈なんですが」


「あん? じゃあお前、何が聞きたいんだよ。だいたい、さっきのを惚気話なんて言う奴の気が知れねえ。奏音にスライディング土下座してこい」


「嫌ですよ、そんな斬新すぎる土下座・・・・・・」


 露骨に嫌な顔をする祐平。どうしてこうも姉と弟で性格が違うのだろうか。


 それにしても、だ。「あの日」の頃の当時、祐平は小学六年生――中学生ですらなかった筈だ。なのに、どうして奏音のあの頃について知ってるんだ? 姉貴さんから聞いたにしても華から聞いたにしても、ちょっと詳しすぎだ。そもそも「あの日」のことを知っている時点でおかしいというのに。

 それに、知っていたとしても、小学生なら忘れてしまってもおかしくないのに。


 怖いから。


 その話は、高校生である今ならともかく小学生には少々酷だ。いや、祐平は今だって高校生ではない。中学三年生だ。…・・・受験生? こんな館で油を売っていていいのか?

 ・・・・・・まあ、祐平の身を案じる義理はないか。


「って、僕の歯周病の話はどうだっていいんです。さっさと続きを話してください。そっちが本題でしょう? 何を勝手に前置きなどして・・・・・・」


「・・・・・・何かお前、キャラ変わってないか? なんでロリコンから毒舌に転向したんだよ。毒舌はラピスだけで充分だ」


「ロリコンじゃありません! っていうか、ロリコンっぽいのは華先輩のが伝染(うつ)っただけです!」


 その叫びに、俺は思わず――「被害者の会」内の仲間意識のようなものを抱いた。


「・・・ああ、そうだったな。お前もまた、被害者・・・・・・」


「先輩もですか・・・・・・。心中お察し致します」


 許しあうことのない二人の間に、何か方向性の間違っているような気がする絆が芽生えた瞬間だった。


前話で愛想を尽かさないでくれてありがとうございます!!!

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