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MOIRA  作者: 流民
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七章 ~開戦~


フェリス達がコントロールルームに着くと、すでにガルメシア宇宙軍に対して警告が発せられていた。

「ガルメシア宇宙軍に告げる。貴艦はジュピトリスの領有宙域に入っている。直ぐに転進せよ。繰り返す、貴艦はジュピトリスの領有宙域に入っている、直ぐに転進せよ、さもなければ攻撃を加える……」

 画面を見つめるフェリス。

「やはり警告は無視ですね。キャプテン、どうしますか?」

 コントロールルームにいた黒髪の長い女性が話しかけてくる。

「面白くなってきたじゃないか。ええ、アマルテア。構わないよ、照準レーザーを照射してやんな。それで引かないようなら、遠慮はいらないからミサイルをぶちかましてやれ!」

 アマルテアはため息を吐きながら頷く。

「照準レーザーガルメシア宇宙軍先頭艦に対して照射。ミサイル発射準備も同時に行え」

 アマルテアはオペレーターにそう言うとオペレーターは直ぐに命令を実行する。ガルメシア軍艦はレーザーを照射されているにも関わらず、領有宙域進んでくる。そして、レーダー上でガルメシア軍から小型の飛翔体が発射される。

「ガルメシア軍がミサイルを発射した模様。距離三〇〇〇キロ、数二〇」

「迎撃ミサイル発射!」

 アマルテアがすかさず迎撃命令を出す。ジュピトリス側のリングポートから迎撃ミサイルが倍の四〇基飛び出す。三〇秒後にはガルメシア軍から打ち出された総てのミサイルが消滅する。

「ミサイル全機破壊確認」

「ガルメシア軍もやってくれるじゃないか。気に入ったよ。じゃあ、こっちからもご挨拶と行こうじゃないか。ガルメシア宇宙軍全艦に対してレーザー照射。その後ミサイル一番から三〇番まで発射用意!」

 フェリスの言葉に直ぐにオペレーターが返す。

「発射準備完了」

「ファイヤー!」

 フェリスの命令と共に、三〇基のミサイルはガルメシア軍艦に向かって飛翔する。レーダー上で見る見るうちにガルメシア軍とミサイルの距離は縮まって行く。その距離が半分を切ったところでガルメシア軍から小型の物体が発射される。それが、ミサイルに接近するとジュピトリス側のミサイルは総てレーダー上から消滅し、ガルメシア側の残った迎撃ミサイルがジュピトリス側のリングポートに接近するが、それが途中で消滅する。その瞬間、レーダー真っ白になる。

「なんだ!? なんでレーダーが利かなくなったんだ?」

 カミュの言葉にアマルテアが答える。

「恐らくガルメシアが迎撃ミサイルと一緒にECMミサイルでも撃って来たのでしょうね。これで当分レーダーは役に立たないわね」

 アマルテアは冷静に答える。

「え!? じゃあ、どうするの?」

 カミュの言葉のすぐ後にオペレーターがフェリスに話しかける。

「キャプテン、全艦発進準備整いました」

 フェリスは頷くとすぐに命令する。

「解った、私もすぐに行く。ジュピター級以外は順次発進せよ!」

 フェリスの命令に従ってすでに発進準備の整った艦は直ぐに水素エンジンに火を入れ発進していく映像が映し出される。それに手を振って見送る整備員達。

「ここは頼んだよアマルテア」

「ご武運を!」 

フェリスはそう言うとすぐにコントロールルームを出て、その数分後にはジュピター級護衛艦は発進する。


「艦長、全艦に向けてレーザー通信開け!」

 フェリスがジュピターに乗り込むとすぐに麾下の艦隊にレーザー通信を開かせる。

「キャプテン、レーザー通信開きました」

 艦長の報告に頷くフェリス。

「皆聞いてるかい? 皆も大体の事は解っていると思うが、あたいらがこれから戦うのは海賊でも宇宙人でもない。軍隊として編成されたガルメシア宇宙軍の艦隊だ。もしかしたらリングポートに戻れない奴もいるかもしれない。しかし、これは横暴なガルメシアに正義の鉄槌を下す為の戦いだ。地上の事はあたいには解らない。しかし、これは今後の地球の運命を左右する戦いになるだろう。その運勢を占う為にもこの初戦は負ける訳にはいかない。勝つための策は練ってある、あたいにあんた達の命を預けて欲しい。各員の奮戦に期待する! 以上」

 フェリスはそう言うとシートに腰を下ろし、シートベルトを締める。

「キャプテン」

 艦長がフェリスに声をかけ、モニターにレーダーが捕えた最後のガルメシア艦隊の位置を映し出す。それを見るフェリス。

「ふむ……ガルメシア軍の艦種は解ってるのかい?」

 モニターの隅にガルメシア戦艦の画像が映し出される。

「ウェイン級戦艦二隻、ツキ級駆逐艦三隻の編成です。ウェイン級は高出力ビーム砲、ツキ級はレールガンがメインです。有効射程はウェイン級が一五〇〇キロ、レールガンの射程距離は実質無限と言って良いですな」

「メティスの発艦準備は?」

「今発艦準備をさせています。もう間もなくエウロパ級から発艦します」

 オペレーターが答え、それに頷くフェリス。

「メティス発艦。各編隊、指定のコースに乗ります」

 メティス型強行偵察機がエウロパから次々と発艦していく。暫くは相手の位置の探り合いになるだろう。最初にいた位置からはそうは動いてはいないだろうが、それでも距離を詰めては来ているだろう。フェリスはそうよんでいる。それから数分の時間が流れるが、未だに敵艦隊発見の報は届かない。ECMミサイルの効果が利いているうちに決着を付けようとすればそれ程時間はかけられない。ガルメシア軍はそれが十分に解っている以上時間はかけていられない。ECMの効果は長くても二時間、それ以降は効果が段々と弱まって来る。それまでに決着を付けなければ、ガルメシアは初戦に敗退する事は目に見えている。そう考えれば、もうそろそろ発見の報が入ってもおかしくはない。その時、オペレーターがフェリスに報告を入れる。

「コース〇二一のメティス編隊よりレーザー通信! ウェイン級戦艦発見の報あり、座標送られてきます!」

 肘掛けに肘を付け、面白くなさそうに頬杖をつくフェリス。

「どう思う艦長?」

 フェリスの右斜め前、一段下がったところに座る艦長がフェリスの方に向き答える。

「そうですな。ウェイン級は囮でしょうな。本命はツキ級駆逐艦の肉薄攻撃でしょう」

「はやりそう思うかい? とすると、ツキ級は何処にいる?」

 艦長がモニターにジュピターとウェイン級の位置を映し出し、ツキ級の予測位置を映し出す。ウェイン級はジュピトリス艦隊の左方向、それに向かうようにジュピトリスが動けば、側面からツキ級の攻撃を受ける。そう言う構図になる。

「恐らく、我が艦隊の側面を突くつもりでしょう」

「やっぱりそうかね~。では、あたいらはまず、ツキ級を片付けるかね。という事で艦長、全艦に通達。全艦面舵三〇度! その後レールガンを放射状に斉射三連! ジュピター及びガニメデ級はその後取舵ウェイン級に向かう! エウロパはツキ級の撃沈を確認後本体に合流。もし、ツキ級の破壊が確認できなければ、追加で攻撃を行う! エウロパ分艦隊の指揮は一番艦艦長に一任する! 一分後に全艦取舵。以上」

 それからきっちり一分後、一糸乱れぬ動きで取舵を行い、レールガンを放射状に斉射三連を行い、直ぐにジュピターとガニメデ級はウェイン級の位置に向かう。そして、一分後、エウロパ一番艦艦長よりレーザー通信が入る。

「エウロパ一番艦よりジュピターへ。ツキ級駆逐艦、三隻に着弾を確認。損傷の具合は解りませんが、少なくとも中破以上。三艦共戦闘区域を離脱していきます。追いますか?」

「よし、戦意の無い物は追わなくていい。エウロパ分艦隊は時計方向に廻り、ウェイン級の背後を突け。あたいらはこれからウェイン級と戦闘を行う! 急げよ」

 一番艦の艦長は敬礼するとすぐに通信は切れた。そして、フェリスの目の前にはウェイン級の二隻が確認できる位置にまで来ていた。

「全艦、砲戦用意!」

「敵艦射程圏内まで距離後一〇〇キロ」

「まだだよ! 敵艦との距離はもっと縮めるよ。最低でも一〇〇〇キロまでは寄るんだ、気合い入れていけ!」

 フェリスの言葉に艦長は反対する。

「キャプテン、それではウェイン級の射程の中に入ってしまいます! 危険です!」

「解ってるよ! だけど、そうでもしないと装甲の厚い戦艦には有効打は与えられない! いいね! ここが勝負どころだよ!」

「解りました。ですがせめて我が艦隊の前方にエネルギー減衰層を張るべきです」

「解った。そのように頼む艦長」

 艦長は頷くと各艦に指示を出し、それは直ぐに実行され、ウェイン級とジュピトリス艦隊の中間地点に向けエネルギー減衰層を展開するべくミサイルを撃ち込む。

「距離一五〇〇キロ。ウェイン級より高エネルギー反応確認! 我が艦隊に向かってきます!」

 発射が確認されて直ぐに、エネルギー減衰層に入り、そのエネルギーの光を散らし、ある程度はそのエネルギーを分散させる事に成功するが、それでもその威力は三分の一ほど削られただけでガニメデ級二番館、三番館は被弾し、その行き足を遅らせる。

「二番館、三番館被弾。戦列を離れます! 続いて第二射来ます!」

「回避運動! ウェイン級との距離は!?」

「敵艦後退しています! 我が艦隊との距離、依然一五〇〇キロ!」

 その報告と同時に第二射が来るが、それは回避運動が功を奏し艦隊に被害は出なかった。 

「やるじゃないか、ガルメシアの指揮官も。しかし、後進ではそれ程の速度は出ないだろう! 全艦最大戦速! 突っ込め!」

「無茶です! 回避運動を続けたままでは追いつけません!」

「だったら直進するまでだよ! 全艦密集隊形を解いて個艦で突撃! 的を絞らせるな。エネルギー減衰膜追加で打ち込め。急げ!」

 すぐさま命令は実行され、艦隊は編隊を解き、個艦でウェイン級に突っ込む。

「第三射来ます!」

 報告が有った時にはガニメデ級の四番艦は被弾しており、戦列を離れる。しかし、その時、ウェイン級の一隻から、火災の発生が確認される。

『エウロパ一番艦よりジュピターへ。ウェイン級の後方に攻撃を加えました! これより、ウェイン級の退路を断ちます』

「来たね! よし、全艦一気に距離を詰めるよ。距離一〇〇〇になったら一気にレールガンを打ち込むよ! 全艦、最大戦速。エンジンが壊れても突き進むんだよ! 行け!」

 フェリスの命令は直ぐに実行され、ガルメシア軍の混乱も有り、その距離は直ぐに縮まり、相対距離は一〇〇〇キロに到達する。

「ファイヤー!」

 ジュピターとガニメデ級一番艦はレールガンを発射する。レールガンにより発射された質量弾はその破壊力を存分にウェイン級に見せつける。そして、今まで無事だったウェイン級一隻はその活動を停止する。その直後、もう一隻から発光信号が送られてくる。

「読め」

「『我降伏スル』です」

 その後すぐにウェイン級の動力が生命維持を除いてすべて停止した事を確認すると、フェリスは直ぐにエウロパ一番艦に連絡する。

「よし、エウロパから、臨検隊を送れ。それと周辺の捜索を行えよ。敵と言っても人だからな。出来る限りは助けろよ」

 フェリスはそう指示する。そしてエウロパからウェイン級戦艦に乗り移り、無事臨検が終わった事を確認した後フェリスは帰還命令を下す。

「よし、後はエウロパにまかせてあたいらはリングポートに帰るよ」

 フェリスはそう指示すると、ジュピターとガニメデ一番艦はリングポートに戻って行く。

「取りあえず初戦は何とか勝利できたけど、今後の戦いは辛くなりそうだね……」

 フェリスは明らかに今の戦いでジュピトリスがガルメシア軍と戦うには戦力不足である事が認識できた。装甲の薄い駆逐艦や巡洋艦なら何とかジュピトリスの輸送船や工作艦でも対応できるだろう。しかし、戦艦の火力や装甲の厚さは並大抵のものではない事を今はっきりと再認識した。

「これは今後の戦い方を考えないといけないね……」

 フェリスがシートで腕を組んだまま呟く。フェリスがあれこれ考えているうちに、ジュピターはリングポートに到着する。


「フェリス姉さん! 無事で良かった!」

 ユーリがすぐさまフェリスに飛びつく。

「あたいがあれくらいの戦いで負ける訳無いだろ? 余裕だよ、よ・ゆ・う!」

 はははは! と、豪快に笑うフェリス。

「お帰りなさいキャプテン。しかし、これからどうしますか?」

 冷静にフェリスに話しかけるアマルテア。

「そうだね……氷上さん。あんた達と手を組まざるおえなくなったね~。まあ、そう言う事だからよろしく頼むよ。まさか今になって怖気づいたりしてないだろうね?」

 フェリスが氷上をギロリと睨む。

「解っています。フェリスキャプテン。しかし、いろいろと準備もしなければなりません。それと今回の件、このまま放置しておくわけにはいかないでしょう。直ぐにでも世界中にこちら側の正当性を伝えなければならないでしょう。それに対してエイジアは直ぐにガルメシアに対して抗議する準備をします。とにかく、ガルメシアが今回の事を捻じ曲げて世界に発信する前に手を打たないと拙いでしょう」

 氷上の言葉にアマルテアも頷く。

「そうだね。じゃあ、そう言う事だからアマルテア、今回の件の記録は全部取ってあるね?」

「もちろんですキャプテン。直ぐにでも会見を開ける準備は整っています」

 頷くフェリスと氷上。

「解りました。では、私はエイジアにこの件を連絡します。会見は二時間後でもよろしいですか?」

 氷上の言葉にアマルテアは同意し、直ぐに会見の準備が進められる。その間に氷上はエイジアの春日に連絡する。

「首相。連絡が遅くなりまして申し訳ありません」

『君の連絡を待っていたよ。で、首尾はどうだ?』

「はい、何とかジュピトリスとの軍事同盟は締結できそうです。それに付きまして首相に一つお願いがあります」

『私は何をすればいい?』

 春日は氷上に続きを促す。

「はい。先ほど、つい一時間前ですが、ジュピトリスとガルメシア宇宙軍との間に戦闘が発生いたしました。恐らくこのままジュピトリスとガルメシアは戦争状態に移行するでしょう。それに先立ってジュピトリスは全世界にガルメシアを非難する声明を発表します。その後、首相にガルメシアを非難し、ジュピトリスを擁護する会見をお願いしたいのです」

 春日は氷上の言葉に驚いた。正直、そう言う会見が必要な時が近い将来に来るだろうと予測はしていた。しかし、それよりも前にジュピトリスとガルメシアの間に戦闘が発生するなど予想もしていなかった。

『本当かね氷上君!?』

「ええ、まぎれもない事実です。恐らくジュピトリスの会見の後ガルメシアの会見が行われるでしょう。それまでの間にエイジアはジュピトリスと正式に同盟を締結すると発表していただきたいのです」

 春日は少し考えて氷上の言葉に同意するように頷く。

『解った。君の言う通りにしよう。会見の原稿を直ぐに送ってくれ』

「解りました。今から送ります会見は一時間後です。時間はおよそ三〇分。その後首相がそちらから会見をお願いします」

 そう言うと氷上は直ぐに春日に原稿を送る。早速届いた原稿に目を通す春日。

『相変わらず仕事が早いな。解った、そちらの会見に合わせてこちらでもジュピトリス擁護の会見を開こう。細かい調整も必要だろう。少しの間はそちらで同盟締結の細かい事を打ち合わせしておいてくれ。しかし、あまり時間は無い。もう三日もすればガルメシアの太平洋艦隊がエイジアについてしまう。とにかく、急いで同盟を締結させてくれ。そして、それが終わればすぐにでもI・Hの脅威を取り除いてほしい。そうでなければエイジアは二度と立ち上がれなくなるほどの被害を被ってしまう! とにかく急いでくれ!』

「解りました。では、会見よろしくお願いします」

『まかしておけ。同盟の件、頼むぞ氷上君』

「解りました」

 氷上はそう言うと通信を切る。

「終わりましたか?」

 アマルテアが氷上に声をかける。

「ええ。そちらの会見が終われば春日首相の会見が直ぐに行われます。そちらの方は準備は大丈夫ですか?」

 アマルテアは頷く。

「準備は整っています。後はキャプテンが上品に原稿を呼んでくれるかの方が私は心配ですけどね……」

 アマルテアはそう言ってため息を吐く。

「まあ……恐らく大丈夫でしょう……」

 氷上も少し不安ではあるが、フェリスは公私を使い分ける事が出来る事は十分に理解していた。

「もう間もなく会見が開かれますよ」

 アマルテアがそう言うと、氷上は頷き、アマルテアと会見場に移動する。そこにはもう各国の記者が集まっており、フェリスの登場を待っていた。そして、時間調度にフェリスが壇上に立つ。

「本日は記者の皆様にお集まりいただき感謝いたします」

 フェリスはそう言うと記者に頭を下げる。対応としては問題ない。ここで高飛車な態度を取れば当事国以外の国からも反感を買う可能性がある。あくまでも低姿勢で、そしてこちらが被害者だという事を記者たちに刷り込ますためにも、低姿勢で挑むのは大事な事だ。

「本日皆様に集まって頂いたのは他でもありません。本日十五時三〇分頃、我がジュピトリスはガルメシア宇宙軍と戦闘になりました」

 フェリスの言葉に記者団は驚きの声を上げる。中にはガルメシアの記者達もおり、でっち上げだと叫ぶ者もいた。それ沈め、フェリスの会見は続けられる。

「論より証拠と申します。早速ですが、一部始終を映した映像がございます。そちらをご覧ください」

 フェリスはそう言うと一度壇上から降り、その後ろに先ほどの戦闘の映像が写しだされる。その戦闘は明らかにガルメシアがジュピトリスの認められている領有宙域に警告を無視して進入し、ミサイルを撃つ映像だ。それに対してジュピトリスは防衛戦闘を行っている。完全にガルメシアの領有侵害に当たる行為で、更に戦闘を仕掛けてきているのもガルメシアというのが一目瞭然で解る映像だ。そして、映像が終わるとまたフェリスは壇上に上がり会見を続ける。

「ご覧の通り、我々はガルメシアから攻撃を受け、それに対して防衛を行いました。このような事態に対して我がジュピトリスはガルメシアを断固として非難します。正式な謝罪と賠償を要求いたします。それが受け入れられない場合は関係各国と連携してガルメシアに対して相応の対応を取る事になるでしょう。ガルメシアの誠意ある対応を切に願います」

 フェリスは記者達に強くそう表明する。そして、一通りフェリスの会見が終わると、その後記者達の質問が始まる。様々な質問に対してフェリスは無難に答え、会見は三〇分で終了する。そして、その後すぐにエイジアの春日の会見が始まる。その映像を見て、フェリスは口元を緩ませる。


 記者会見の会場で春日は壇上に一礼して上がり。記者会見を始める。

「エイジアは今回のガルメシアの暴挙に対し断固とした非難を表明する」

 春日は開口一番ガルメシアを非難する言葉を述べる。そして、その後に言葉を続ける。

「そして、先の戦闘でなくなられたジュピトリスの方々に哀悼の意を表します。今後このような事が無いよう、エイジアはジュピトリスに対して支援をする事を表明します」

 春日の言葉に記者団達は驚愕する。それは実質ジュピトリスとエイジアの同盟が結ばれるであろう事を暗に明言したことになるからだ。そこにはすでに裏で何らかの取引が有った事を記者達は解っただろう。一通り春日の会見が終わると、記者達はその事に着いて質問を投げかける。

「まだそのような事実は無い」

「時期が来れば何らかの動きは有るかもしれない」

 などと、のらりくらりと質問をかわし、会見を終わらせる。ジュピトリスとエイジアの会見後ガルメシアの会見も行われたが、ガルメシアは事実無根と言い張り、逆にジュピトリスを非難するとの会見を大統領報道官が行うにとどまった。その後、ヨーロッパ連合はガルメシアに対して憂慮するという発言に止まり、静観する構えだ。世界を賑したジュピトリスの会見の次の日、異例のスピードでエイジアとジュピトリスは軍事的な同盟を結び、対ガルメシアの姿勢を世界に対して共同で発表を行う。フェリスと春日の握手するシーンが全世界に報道された。これに対してガルメシアは断固として非難すると表明し、開戦も辞さないとの表明も出された。それに対してエイジアとジュピトリスも反応し、共同でガルメシアに対して更に非難する声明を発表。これによりガルメシアは戦線を布告。遂に両陣営は大災害以降初めての大規模な戦争状態に突入する事になる。




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