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偽りの正義の渦が消えた後

「とにかく毛嫌い一辺倒でした。二言目には『混族だから』ですからね。冒険者ウィラ=エノーワの証言から事実は判明できないものと思われます。気持ちは分からなくはありませんが……」


「『混族』か。確かに忌まわしい存在ではあるが、必勝を目的に掲げる国軍の戦力を見れば、正直猫の手も借りたいほどの戦力の乏しさ。参戦に来る者は拒まずだが……」


 夜の治安を守る近衛兵達が遭遇した、夜の街の大通りで起きた私刑。

 近衛兵の隊長は、加害者の集団や被害者のギュールスからその場での聞き取り調査などはせず、そのまま解散させた。

 あれだけの大人数をその場で聞き取りを行うことで暴動が起きるようなことがあれば、彼らが討伐に参加する場合魔族討伐の戦力が下がる恐れがある。

 隊長は冒険者達に対し参加しなくても構わないようなことを言ったが、参加しなければただの市民、国民である。国民の起こすトラブルを、なるべく被害を最小限に抑えるのも彼女たちの仕事。

 ゆえに治安を守る役目を持つ近衛兵隊の言動は正解と言える。

 そして取り調べによる拘束で、討伐に参加する可能性のある者を不参加にするのも国としての益は少ない。

 近衛兵の活躍の場は主に街の中。

 魔族討伐の参戦もすることはあるが、トラブルの元である本人達が不在の中でも調査する仕事も彼女たちの担当である。


「編成時に顔を合わせるわけにはいかんな。『混族』は一目でそうと分かるし、嫌い方も感情が入ると周りに嫌悪感を生じさせてしまう。彼女と似た年代の冒険者とも一緒にしない方が良さそうかもしれんな」


 近衛兵の部隊はいくつかに別れて、手分けして町の治安を守っている。町中の所々に設置されている駐留所の一か所にその部隊はいた。

 魔族討伐対策本部から得た情報の報告を部下から受けた隊長は、討伐の編成にまで思いを巡らせる。


「そのウィラとやらの冒険者になる前のことについて調べてみてくれないか。それと、あの『混族』についても過去を調べてみてくれないか。そっちはついでで構わんぞ」


 冒険者になれる条件や資格はある。まずは年齢。それ以外にも冒険者の職種に適しているかどうか。そして冒険者として適した性格かどうかということも重要な要素である。


「それにしてもあれほどまで嫌われてるというのに、それでもこの都市に拘るのはなぜだ?」


「人が多いですから、嫌う者も多ければそれほど気にしない者も多い、ということなのではないでしょうか? 普通の仕事に就くことは難しいでしょうし、そうなるとフリーの冒険者として仕事をする方がいくらかは生活が楽になると思います」


 一人の部下からの意見を聞いた隊長は「そういうものか」と呟き、物思いにふけた。


 ────────────


 その頃、いつもより遅い時間だがいつもと同じ行動をとっているギュールス。

 道具を何とか売ってもらい、宿の傍の小川で体を洗う。


「……まぁ体の回復はこの程度なら何とかなるけどな」


 それでも時折顔をしかめている。

 傷は治すことが出来ても痛みまで消えることはないらしい。


「……朝起きれなきゃ、明日の手当てはもらえねぇけど、起きられるかわかんねぇな……」

 体を洗い終わった後、五口ほど小川の水を飲む。


 どんなにつらい目に遭っても、生きて生き延びるという強い本能に身を任せるギュールス。

 そんな彼の目には何の輝きもなかった。


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