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装備、装着 そして再度街中へ

 翌日、食事会の時に立てた予定通りに、ギュールスはて防具屋に向かった。

 その付き添いは、昨日の道具屋へ馬車で向かったエリン、アイミ、ティルの三人と、私服の代金を受け持つ意思を半ば強引に押し通したケイナの四人。

 歓迎会を開いてもらった効果なのか、ギュールスの態度は前日とは違い、おどおどしている様子はない。

 かと言って堂々としているわけでもなく、自分よりも背が高い四人に囲まれながら、背中を丸め気味にして肩をすくめ、なるべく目立たないようにしながら歩いている。

 しかし白銀の鎧を付けた四人に囲まれれば、否が応でも目立つ存在。それが本部の施設の中であってもだ。


 そして時々驚いて少し跳ね上がる反応を見せる者もいる。

 間違いなく、ギュールスの青い体を見ての事。そこからトラブルを引き起こした事は町中で何度もある。

 体を小さくしても色は変わらないが、少しでも目立たなくなる効果に期待する。

 四人はそれに気遣って、せめて後ろから見られてもギュールスの体を見えづらくするために、彼の左右と後ろに位置取って歩く。


 何とか防具屋にたどり着き、店内に入ると店主がすぐに出来上がった防具を持ってきた。


「一人ですぐに脱着できるようにって言われてな。幅の広いベルトで付け外し出来る様にしようかと思ってたんだが、絡まると解くのに時間がかかっても困る。ベルトのような形状の板ではめ込み式にしてみた。肌の露出も多めにして、肘と膝の防具、あとはブーツ。頭部はいらないだろうって話だったな。ちょっとつけてみな」


 両胸を覆う白銀の曲面は体の面に沿い、腹部も覆っている形状。そして白薔薇の彫刻がなされている。

 脇の下と肩の上部も覆い、肩のパーツにも白薔薇。両肘と両膝は、左右の区別はない。迷わずに脱着できるための工夫のようだ。

 ブーツも白銀。薔薇の花ばかりではなく茎と棘まで描かれている。


「馬子にも衣裳?」


「それはちょっと違うかも」


「衣装負け」


「貫禄……。あ、ごめん。そんな自由もなかったんだよね」


 アイミが詫びるがギュールスは苦笑いで水に流す。


「うむ、その付け方でいい。お代はあとでそっちに伝えとくから。そのまま帰るんだろう?」


 帰るわけではないが、装備を身に付けたままという意味では正解である。

 が、まさしく衣装負けという言葉がぴったりだろう。

 装備を身に付けたまま、出来る限り体を小さくしながら礼をして店を出るギュールス。

 付き添いの四人は、もう少し堂々としてても良さそうなのにとやや不満顔。


「えーと……か、帰りましょうか」


「「「「まだでしょ!」」」」


 ギュールスはいたたまれなさそうにする。

 明らかに鎧の形状は違うものの、模様、色彩、光の反射など、装備の特徴には四人のそれとは統一感が感じられる。

 そんな装備が畏れ多いのか照れ臭いのか。いずれ体の青もそんな姿勢や考え方に影響を及ぼし、何を身に付けて色をどんなに隠しても、その態度は簡単に変えることはなさそうである。


「団長からもあれだけ言われただろう? それに討伐の対策本部に次いでの用事も言づけられた。行くしかあるまい」


 ギュールスは観念し、四人と共に繁華街の衣料品店へと向かった。


 エリン、アイミ、ティルの三人は途中で別れる。

 前日の巡回の馬車の使用経費の確認と支払いでその部署に向かうためだった。


「じゃあケイナ、頼むぞ」


「あぁ、また後でな。さ、行こうか」


 三人と別れ、大通りを進む。

 目当ての店はすぐに見つかり、下着、厚手の生地のズボン、そしてもう縁がなくなったと言っていい上着もケイナによって強引に勧められる。

 買ったばかりの品も、装備を外してから無理やり着替えさせられる。


「言われただろう? 身なりもそれなりに整えろと。これも近衛兵の一員としてのしつけの一つだぞ?」


「お……落ち着かない……」


 買ったばかりの衣類が素肌に触れる感覚は、もうすでに記憶の底に沈んでしまった。

 脱いだばかりの、今まで来ていた衣類を惜しむように見ている。


「古い奴は捨てたらいいだろうに、まったく……。ついでに普段身に付ける靴も用意したらどうだ? 我々だってこの装備を脱いで過ごす日もあるぞ?」


「靴屋も行ったことがないですね……。どこだろう……?」


 ケイナはギュールスと一緒に辺りを見回すがすぐに見つけられた。


「なんだ、対策本部の近くじゃないか。ちょうどいい。団長から頼まれた用件を済ませてくるから、一人で買いに行けるな? 私のツケにしてもらって構わんぞ」


 ギュールスが頷いたのを見て、ケイナは対策本部へと入っていく。


「お、『混族』じゃねぇか。昨日はどうしたんだよ。それに……なんだぁ? その格好。笑えるな。いつものシャツにズボンはどうしたよ?」


 それを見届けて、靴屋に入ろうとしたときに誰かからそのように呼び止められた。


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