第二ラウンド
「ふっ!」
ナイフを崖上に投げ、その位置に転移する。
まずは位置的な不利を何とかしないと――
「甘いですよ先生! 『風よ、矢となり、その力を示せ』」
動きに合わせて、魔法を繰り出す生徒達。
俺の転移魔法は何度も見せてしまったから、奇襲性は薄いか……!
「よっ!」
手にしたナイフで生徒の風魔法を防ぐ。
だが、その反動でバランスを少し崩してしまう。
その隙を見逃さない生徒達ではない。
「今ですわ! 『大地よ、壁となり、敵を囲え』!」
「良しっ! 『水よ、牢となり、敵を捕らえろ』!」
ビスコッティの土魔法とジストの水魔法が俺を囲うように現れる。
ジストは見立て通り、現出系の扱いが上達しているな。
「これなら転移も出来ないだろ! 『大地よ、槍となり、障害を打ち砕け』!」
動きを止めてから、確実に自分の魔法を当てる。
基礎中の基礎だが、それだけに効果的な戦術だ。
俺がこれまで見せた魔法の対策はされてしまっている。
ちゃんと考えてきたのだろう。
なら、ここはやはり俺本来の戦い方をするべきか。
「お見事ですよ、ジスト君」
牢に囚われた俺に、大地の槍が襲い掛かる。
――丁度いい。
「『風よ――』」
ナイフに魔力を込め、腰に構える。
コツは……薄く、鋭く、素早く、だったな。
「『一迅』」
構えたナイフを振り払い、壁と牢、そして奥から迫るジストの魔法を全て切り払う。
「なっ!?」
開かれた視界に映るのは、ジストを初め、驚きの表情を浮かべる生徒達。
今の算段で終わらせるつもりだったのだろう。
「ここから第二ラウンドです。準備はよろしいですか?」
足に風を纏い、ナイフに魔力を込めなおす。
さぁ、俺をもっと楽しませてくれ……!
*
「オイオイ、冗談だろ……?」
先ほどまでは消極的に、こちらが放った魔法に対して行動していただけのレオンだったが、先ほどから打って変わって積極的に魔法を使うようになっていた。
しかも、その戦い方は魔法使いのそれではない。
「だっ、『大地よ、我が同胞に――』」
「『――その力を打ち消せ』!」
「キャア!」
「そこです! 『炎よ、巨大な弾となり、猛追せよ!』」
「甘いっ!」
「うっ後ろに……うわぁ!」
「みんな行くぞ! 『水よ、槍となり、その力を示せ!』」
「……」
「み、みんな?」
「(ニッコリ)」
「せ、先生? うぎゃっ!」
魔法を打ち消し、転移魔法で攻撃を避けながら一撃を入れ、風魔法で更に別の攻撃を避けながらまた一撃。
展開が速すぎて、ついて行けない。
もう生徒の八割はダウンしている。
「さて、ジスト君?」
「っ!」
確実に視界に入れていたはずだったが、気づいたら後ろに立っている。
これ以上に怖いものは無い。
「君は十分成長しましたね。あとは増長する癖を治すことと、魔法の種類を増やすことです」
「……言われなくても! 『大地よ、槍となり、障害を打ち砕け』!」
「いい気迫です。『大地よ、槍となり、障害を打ち砕け』!」
ジストが魔法を放つと同時に、レオンも全く同じ魔法を唱える。
そして相殺し、次の魔法を唱える――
「『大地よ――』!」
ジストが唱えるその前に、レオンが再び同じ魔法を一節詠唱で唱える。
「だっ、『大地よ、盾となり、我が身を守れ』!」
なんとか壁を展開し、レオンの魔法を防いだが、そこで魔力が尽きた。
「……完敗だ、先生」
「ええ。また君と手合わせできる日を楽しみにしていますよ」
そして、次の生徒の場所まで転移した。




