レオンVSセントリア魔法貴族院 中等部
それでは最終日となりますが、今日もよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
俺が号令をかけると、全生徒がピシッと揃えて礼をする。
「私が皆さんに最初の講義をしてからもう一週間ですか……」
この一週間教えた生徒たちを見回す。
初日のように俺を侮るような生徒はもういない。
「この一週間で皆さんは見違えるほどに成長しました。今日はその集大成を私に見せていただきましょう」
たった一週間。されど一週間。
どの生徒たちも、教える前とは比べ物にならないくらい、魔法が上達していた。
今からその成果を見るのが楽しみだ。
「初日と同様に全員で私にかかってきてください。手加減は無用です」
「今日と言う日を待ってたぜ、レオン先生」
「ジスト君」
中でも成長したのは、このジストだ。
忠実に、そして貪欲に訓練を重ねた結果、彼は土魔法に加えて水魔法も扱えるように成長していた。
「もう先生を侮ったりはしねぇ。先生に教えてもらった全てをブツけてやる!」
「俺たちも、そのつもりです!」
「これまでの私たちとは違うという所を見せて差し上げますわ!」
そんなジストに釣られて、他の生徒達の熱も上がる。
いい雰囲気だ。
「意気込みは十分のようですね。ではこのコインを投げて、地面に着いたところから開始としましょう」
生徒達から離れ、距離を取る。
そして、ポケットから取り出したコインを、生徒と自分の中間に向けてトスする。
太陽の輝きを受けて、輝くコインが回転しながら宙を舞う。
魔力を自分の杖に込める生徒達を尻目に、俺は少し離れた場所に位置するエメラダを見た。
彼女は、生徒の中で一人だけ杖すら持たず、あくまで自然体を保っている……ように見える。
だが、違う。彼女は機をうかがっている。
エメラダの成長も、この実習で見ることが出来るだろう。
基礎はおおよそ教えた。後は、彼女がその魔法をどう使うか……
そして、コインは甲高い音を立てて――落ちた。
『炎よ、巨大な弾となり、猛追せよ!』
『風よ、鋭い刃となり、障害を切り裂け!』
『水よ、三本の槍となり、その力を示せ!』
『大地よ、硬い岩となり、障害を打ち砕け!』
生徒達からの波状攻撃が俺に襲い掛かる。
一週間前からは考えられないほどの威力。そして連携も上達している。
これを風魔法だけで防ぐのは少々骨が折れるだろう。
だったら――
「『二重奏』!」
行使するのは風と水。
俺を覆うように現れた水の竜巻が、襲い来る魔法を防ぎ切った。
魔法を五種類同時に行使する五重奏は不可が多く多様出来る魔法ではないが、二重奏くらいなら普通に使えるレベルだ。
……少し疲れるが。
「くっ、流石ですわね。ですが、これからです!『土よ、我が同胞に、祝福をもたらせ』!」
ビスコッティの詠唱で今魔法を唱えた生徒たちの魔力と体力が幾ばくか回復する。
前回と違って、今回はビスコッティをはじめ、回復魔法を使う生徒が何人かいる。
つまり、前回のような生徒たちのスタミナ切れには期待できない。
……教えた身ではあるのだが、厄介だな。
「次はこちらから行きますよ。『炎よ――』!」
ナイフに魔力を込め、中位の炎魔法を繰り出す。
先日までの生徒達なら、この魔法で戦闘不能だっただろうが、今の生徒たちは違う。
「お前ら! やるぞ! 『大地よ、盾となり、我が身を守れ』!」
「「『大地よ、盾となり、我が身を守れ』!」」
ジストとその取り巻きの二人が巨大な土の盾を展開する。
その盾に阻まれ、俺の炎魔法が遮られる。
「行くぞ! 『風よ、足に纏い、我らに加護を』!」
「「おぉっ!」」
ジストを初め、半数の生徒が壁を乗り越え、俺の上を取る。
人的有利に加えて、位置的な有利も確保している。いい連携だ。
これは、もう少し気合を入れなおさないとな……!
中等部編が終わるまでは少し早めに更新できると思います。




