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執事とお嬢様の魔法五重奏《マジカルクインテット》  作者: 幻馬
第二章 セントリア魔法貴族院
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エメラダの答え


翌日。放課後の修練場。


昨日はエメラダとローゼンクイーンの事について考えていたせいでよく眠れなかった。


持つ力を制御出来ない者と、制御するだけの力すら持たない者。

相反する二人をどのように導くか。いくら考えても足りない問題だ。


気を取り直して、今は目の前のエメラダに向き合うことにしよう。


「エメラダ様。答えは出ましたか?」

「……昨日から一日、考えたですよ。レオンの言ったことについて」

「ええ。それで?」


「正直、よく分かんないです。私がどうするべきか、なんて」


……中々的を射ている答えだ。

自分が何をするべきか。信念、目標、欲求。行動原理は人それぞれだ。

不知の物を知る機会を得て、いきなりその行動原理を決めろ、と言うのは難しい話だ。


「……でも、昨日レオンと話したおかげで思い出したんです。私が、どうしてこの学校に来たのかを。大嫌いな貴族に囲まれて、大嫌いな魔法を学ぶ意味を」


昨日の話を思い出す。

あの話おかげで、エメラダがよく他人に向ける敵意のある眼の正体がよく分かった。

あれは――貴族と言う立場に対する眼だったのだろう。

嫌悪や憎悪、そして侮蔑。あれだけの事をされたのだ。友好的な感情なんて、持てるはずがない。


「私は、守れなかったんです。大好きだった家族を。自分の居場所を。そして、自分自身を」


彼女は家族を失い、暖かな居場所を失った。

そして貴族になり、農家に生まれた平民の彼女はいなくなり、『エメラダ・フォン・リヒテンベルク』という一人の貴族になった。

……つまり、彼女は彼女自身すら失った、ということだ。


「今の居場所だって、私が望んで手に入れたものじゃないです。成り行きです」


エメラダは続けてそう言う。

彼女はすべてを失い、そして手に入れたものは何もないと。

……普通の人間なら、そこで絶望しても、全てを諦めてしまう可能性すらあった。



だが、彼女の眼はまだ何も諦めていない。



「だから、今度は私の手で、私の居場所を手に入れて、それを守るです。それが、私の目標です」


エメラダは、過去を振り切るようにタクトを掲げ、俺にそう宣誓する。

今まで見た中で、一番いい眼をしている。


「良い目標です」

「その目標を達成するためなら、何でも利用してやるです」


黒い表情を俺に見せるエメラダ。

その表情は、エメラダの心からの表情な気がした。


「じゃあ、レオン」

「はい、何なりと」


改めてエメラダに向き合う。

その後に続けるであろう彼女が出した答えは、聞くまでもなく予測できた。


「――空魔法を、私に教えてください」

「ええ、勿論」


エメラダと握手を交わす。

『エメラダ・フォン・リヒテンベルク』と言う人間がここから始まるのだ。

ようやくここまで来れました。

次回からエメラダの魔法訓練が始まります。


そして、もう一人も……?

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