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執事とお嬢様の魔法五重奏《マジカルクインテット》  作者: 幻馬
第二章 セントリア魔法貴族院
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執事はお嬢様の才を見る

あの後、終鈴がなるまで講義を行った。

流石に今日一日で使える魔法が増えた、という生徒はいなかったが、魔法の扱い方が上達した生徒は少なからずいた。


その後、昼休みを挟み、残りの講義を大講堂で行い、今日の講義が全て終わった。


ジスト一行は授業中俺を目の敵にしていたようだったが、侮るような目ではなく、いつか倒すべき相手としてみるような目だった。

そのほうがこちらとしてもやりやすい。


さて、この後のエメラダ様との修練のために、少し上と話をつけてこないとな。



「ちゃんと来てくださいましたね」

「……逃げると思っていたですか?」

「まさか。エメラダ様はお優しいですから、もし仮に来ないとしても、連絡を入れて下さるでしょう?」

「……フンッ」


認めたくはないがその通りだ、とでも言うような荒々しい返事を返すエメラダ。

少し赤く染めた頬がそう語っている。


「……でも、なんでここ私とレオンしかいないんです? いつもなら、色んな人が魔法の練習をしている時間だと思うんですけど」

「あぁ、それはですね……」


この修練場に来る前、ここの管理者に『先ほどの講義で訓練用の的が壊れてしまった。自分が修理するので許可が欲しい。それと、危険なので関係者以外の立ち入りを禁止する許可も欲しい』と伝え、許可を貰ってきた。

……まぁ、その管理者というのはクリストフ学長の事なので、断られるわけないのだが。

なので、ここに俺とエメラダ以外の生徒が入ってくることはない。


「それって、ただの建前……いや、職権乱用……もはや自作自演です」

「私は事実しか言ってませんから問題ありません」

「……お前、いい性格してるです」


それはエメラダも同じだろう、と言葉にしなかった俺を褒めてほしい。


「では、お願いします」

「……見ても笑うなよ、です」


諦めたようにエメラダがタクトを取り出し、的に向かう。

さて、お手並み拝見。


「『炎よ、矢となり、その力を示せ』」

「……む?」


エメラダが使ったのは放出系の炎魔法だ。

だがその魔法は、タクトを這うように炎が現れ、少し間をおいてから的に向かって発射された。

その威力は80程度だった。


タクトを這う魔法、か……


「『水よ、矢となり、その力を示せ』」


エメラダが続けて水魔法を放つ。

先ほどの魔法と同じく、タクトを這うような挙動をみせてから水魔法が発射された。


「……これが、私の魔法ですよ」

「ふむ……」


なんというか、魔力の流れが少々おかしい。

ローゼンクイーンのような異常性は感じないが……

無意識に別の魔法が混濁している……といった所だろうか?


「少々失礼」

「ひゃっ」


エメラダの手を取り、魔法の残滓を調べる。

……魔力が薄くてわかりづらいな。


「な、なにするですか!」


ブンブンと俺の手を振り払おうとするエメラダ。

が、離さない。今手を離したら測定がブレる。


「もう一度魔法を使っていただけますか?」

「わ、わかったですけど……こ、このままですか?」

「このままです。お願いします。」


エメラダに頼んでもう一度魔法を使ってもらう。

この状態で使ってもらえればしっかりと魔法の測定ができるはずだ。


「ほ、『炎よ、矢となり、その力を示せ』!」


先ほどと同様にエメラダが魔法を使用する。

通った魔力が手を通して俺に伝わってくる。


……なるほど。純粋な炎魔法じゃないんだな。

炎属性の放出魔法と……別の属性の付与魔法が混ざってるのか?

混ざっている属性は……


「……なるほど。中々面白いものをお持ちでいらっしゃる」

「い、いい加減に離すですよ!」

「おっと。失礼しました」


これ以上は怒られそうだったので流石にエメラダの手を離す。

エメラダは少し涙目で顔を赤くして睨むようにこちらを見ている。

……そんなに怒るような事だったか?


「……それで、今のは結局何をしやがったんですか」

「ええ。少しエメラダ様の魔力を調べさせていただいたのですが……」


彼女の魔法があのような形になってしまっているのは、適性な教えを受けられなかったからだろう。

恐らく、この学校に彼女の才能を見抜ける人材はいない。

使い勝手が悪く、魔力の消費も大きいため、一般的には役に立たないとされているその魔法は――。


「エメラダ様、空属性の付与魔法に適性がおありですね?」

後で一度推敲します

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