レオン流の実習
「さて、全員揃っているようですね」
「それで、何をすればいいんですか?」
「なに、簡単なことですよ」
右袖に仕込んでいるナイフを取り出し、魔力を込める。
「全員で私にかかって来て下さい。誰か一人でも、私に魔法を当てられたら講義終了とします」
生徒の実力を把握出来て、俺の実力を生徒に示すには一番手っ取り早い方法だ。
「アンタ、舐めてんのか? 俺たちはな……」
「御託は結構。実力で示してください」
「テメェ……! 上等だ!」
ジストと取り巻きがタクトを引き抜き魔力を込める。
いい魔力量だ。まだ年若くても貴族は貴族ということか。
「「「『炎(水、風、土)よ、矢となり、その力を示せ』!」」」
複数人から一斉に、魔法の弾が俺に襲い掛かかり、土煙が巻き起こる。
なるほど。威力だけはたいしたものだ。
「へっ、これだけ当てれば……」
「れ、レオン先生……!」
ジスト達から勝ちを確信した声が、女生徒からは悲鳴が聞こえる。
確かに当たれば一たまりもないだろう。
……当たっていれば、の話だが。
「なっ、なんで」
土煙が晴れ、無傷の俺の姿が現れる。
俺が右手に持っているナイフにはめ込まれたスフィアが魔力を受けて輝いている。
「私は全員で、と言ったはずです。さぁ、来なさい?」
ナイフを正面に構え直し、魔力を込めなおす。
その言葉に、生徒たちは動揺しながらもタクトを抜いた。
「あの先生、本気かよ……」
「百人近くいるんですよ。正気とは思えません」
「で、でもジスト君達が打った魔法、当たってないみたいだよ」
「やれって言ったのは先生ですわ! 恨まないでくださいね! 『炎よ、槍となり、その力を示せ』」
「かっ、『風よ、鋭き刃で、その力を示せ』!」
他の生徒たちからも波状に魔法が襲い掛かる。
そう、それでいい。
だが……
「『風よ』!」
俺が周囲に放った風魔法が俺に襲い掛かる魔法を全て霧散させた。
「冗談でしょ……?」
「……先ほどの言葉、訂正しましょう」
さっきの魔法にはまだ加減のようなものが感じられた。
この場では、そんなものは不要だ。
「私に「全力で」かかってきなさい」
さぁ、俺にセントリア魔法貴族院中等部の力を見せてくれ。
レオンも他人の事が言えないほど好戦的です。




