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執事とお嬢様の魔法五重奏《マジカルクインテット》  作者: 幻馬
第一章 リヒテンベルクの人々
36/73

襲撃 1/2

「団長!」

「キャッ!」


運転をしていたはずの団員がドアをけたたましく開く。

その音でローゼンクイーンがかん高い声を上げる。


「なんの騒ぎだ!」

「み、道が!」


その団員は顔を真っ青にして信じられないものを見た、と言った表情をしていた。


「道がどうした!」

「道が無いんです!団長!」


それは俄かに信じがたい話だったが、嘘を言っているとも考え難い。


「降りて確認しろ!」


俺は団員共に指示を出し、ドアをあけ放ち外に出た。

そこにあったもののは……いや、あったものが無くなっていた。


「オイオイ……冗談だろ」


団員の報告通り、道が消失していた。

いや、道どころか俺たちの前方一帯に大きなクレーターが出来ていた。

立ち昇る土煙と、魔力の残滓からつい先ほど行われたことが見て取れる。

つまりこれは――


「敵襲だ」


俺がそう言うとざわついていた周りの団員が一斉に動き、陣形を組む。

訓練で染みついた行動だ。


各々が臨戦態勢に入った直後、土煙の中から奇妙な男が現れた。

男は黒髪に黒を基調とした執事服。

この場に似つかわしくない恰好ではあるが、その姿は不思議と馴染んでいた。


「コイツは……ヤバいな」


あの身なりから察するに、恐らく奴はローゼンクイーンの関係者だろう。

屋敷にいた関係者は全員眠らせたはずだ。

あの屋敷にいない実力のある関係者は、精々家主にしてセントリアの領主、アレキサンダーくらいなものだ。


だが、奴はアレキサンダーじゃない。

事前の調査でもあんな奴はいなかった。

全くもって情報がない。

しかし、俺たちを発見する追跡能力。

道を断絶するほどの破壊力。

これだけでも相当な実力者であることに疑いの余地はない。

そして何より、俺の勘がヤバいと訴えている。


「よう、若者。そんな物々しい顔で俺たちに何か用かい?」

「お前らが屋敷を襲った野盗だな?」


やはり俺たちのことを追ってきたようだ。

片手を後ろに回し、団員に指示を出す。


「そうだ、と言ったら?」


そう言いながら俺も気力を高め、いつでも腰の剣を抜けるように準備する。


「殲滅するだけだ。『風よ――』」


さぁ、戦闘開始だ。



「『風よ――』」


手心を加える必要は無い。

薄く、鋭く、素早く。

鋭利な風の刃を解き放つ。


「――」

「ガッ!」

「おっと!」


六人いた敵のうち、二人は絶命した。

だが、残りの四人はそれぞれ避ける、剣で受けると言った方法で凌いでいた。


「『炎よ――』」


それを見て、俺はすかさず体勢を崩した一人の野盗に炎の弾を打つ。


「この程度!」


が、身体を捻ってそれを回避する野盗。

しかし、それは想定の範囲内だ。

炎魔法に紛れて投げていたナイフに転移し、素早く背後から一撃。


「嘘、だろ……」

「あと三人」

「いやはや、お強いねぇ若者」


そこまでしたところで野盗のリーダー格が話しかけてくる。

ここまでの一連の攻防で顔色一つ変えていないのはこの男だけだった。


「お前、部下が殺されて怒らないのか?」

「俺たちはそれなりに覚悟してこの任務に挑んでるんでな。アイツらも悔いはないだろうさ。だがまぁ、敵は取らせてもらうとしようか!」

「ッ!」


男が剣を構え、突撃してきた。

その速度は魔法で身体強化をしている俺に匹敵する速度だった。


「ぅおらっ!」

「『水よ』!」


当たれば一たまりもない斬撃を、水の盾で受ける。

一次的に斬撃の速度が鈍ったのを確認してから後ろに下がり、魔法を詠唱する――


「させるかよっ!」


しようとしたところで残りの二人が切りかかってくる。

リーダー格の斬撃には及ばないが、それでも十分鋭い太刀筋だった。


「チッ!」


それを両手のナイフに魔力を込め、紙一重で弾く。

そのままナイフを少し離れた場所に投擲し、そこに転移する。


「魔導士にしちゃいい動きだ。いいとこ育ちのボンボンってワケじゃなさそうだ?」

「お前たちこそ何者だ? 野盗にしては統率が取れている。それにその技は、騎士剣術に通ずるものだろう?」

「おっと、そこまで見抜くか。なら、これ以上の長話は不要だな」


そこまで言うと再び男は剣を構えて突進してきた。


「『水よ』!」


先ほどと同様に水の盾を構える。


「同じ手は二度も食わんさ」


が、男の剣は軽々と水の盾を切り払い、俺の眼前に迫る。

それを魔力を込めた両手の短剣で受け――


「甘いっ!」


受けきれず、力強い斬撃に弾き飛ばされる。

地面に激突する寸前、風魔法で勢いを殺して着地する。


「魔導士の弱点はその詠唱だ。お前さんは一節詠唱(ワンキャスト)で中々の魔法を使えるようだが、それじゃ俺は倒せない」


男は余裕を崩さずに俺にそう告げる。

この男は強い。魔導士との戦い方を心得ているだけじゃない。

それを行うだけの技量に度胸も兼ね備えている。

間違いなく、ただの野盗じゃない。


「ああ。そうらしいな。だから――」


俺は二本のナイフを、胸の前に構える。


「――これで終わらせる。『独奏ソロ』」


あとで一度改稿します。

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