精霊魔法
「ま、待ってよレオン!」
「悪いが時間がない。移動しながらで頼む。『天翔ける風よ』」
校門から出たところで飛行魔法を行使する。
「もう! 『風』!」
続けてフィーネも飛行魔法……のような何かで飛び上がる。
「……俺が言えた口じゃないが、詠唱を略しすぎじゃないか?」
詠唱は略せば略すほど具体性を失う。
俺の詠唱も二節分破棄しているから、制御をやめればすぐに霧散してしまうだろう。
フィーネの詠唱はもっと酷い。が、彼女はそれでも行使できるだけの技量を持っている。
「いいの! それで、急にどうしたの?」
「実はな……」
俺は今朝、屋敷の前で見た大型魔動車と、屋敷に来る予定の剪定業者について話した。
「むむ。それって、もしそれが盗難車だったとしたら……」
「ああ。考え得る限り最悪のケースだが、リヒテンベルク邸が危ないかもしれない」
あの声が聞こえたということは最悪のケースである可能性が高い。
この速度のまま屋敷に向かっても、一時間弱はかかってしまう。
まだ転移用の魔方陣を書いてなかったのが裏目に出た。
「うん、事情はよく分かった。じゃあ、急がないとだね」
「どうするつもり……って、まさかお前」
「私も直ぐに追いつく。だから、先に行って?」
フィーネの真剣な瞳が俺に刺さる。
恐らく、裏技を使うのだろう。
「わかった。頼む」
期待には応えないといけない。
俺は身体に薄くまとっている風を強化する。
「行くよ! 『風精霊シルフに命じる。その力をもって、彼の者をリヒテンベルク邸へ』!」
フィーネの雰囲気が一変する。魔力によって大地に根付く精霊と交信する精霊魔導士独特の雰囲気だ。
「飛べぇ!」
「うおぉぉぉ!」
精霊の力を受けて異常なほど加速する。
この速度なら、もう十分程度で着くだろう。
間に合ってくれ……!
*
「ふぅ……ありがとシルちゃん」
シルフにお礼を言い、交信を止める。
精霊魔法は常人には不可能な魔法を行使できる代わりに相応の魔力と精神力を消費する。
更に使用条件も厳しく、習得も難しい。
「レオンの真面目な顔、久しぶりに見たな」
なんでもそつなくこなせるからこそ、レオンは燻っていた。
権力闘争が嫌だから仕事を蹴っていたのも半分くらいはあるだろう。
でも、もう半分は自分が真剣に、全力で取り組める何かを探していたからだと思う。
その実、今のレオンの目には、間違いなく熱があった。
「そっちの方が、カッコいいからね」
頑張れ、レオン。
5000PV 1500UUありがとうございます!
後で一回改稿します




