帰宅 2/2
「起きろフィーネ」
ぐーすか寝ているフィーネに声をかける。
「むにゃぁ……」
健やかな寝顔だ。できれば起こしたくはない。
……俺のベッドでなければ、の話だが。
「お・き・ろ」
「むぎゅっ」
フィーネの鼻をつまむ。
呼吸を急に止められたら、流石に目が覚めるだろう。
「ふわぁ……おはよう、レオン」
「おう。おはよう」
あくびをした後、大きく伸びをするフィーネ。
少し目のやり場に困る光景だ。
「……?」
「?」
焦点の定まっていない瞳で俺を見るフィーネ。
どうしたのだろうか。
「なんでレオンが私の部屋にいるの?」
「ここは俺の部屋だ!」
「ふぎゃっ」
思わず落ちていたクマのぬいぐるみを投擲してしまった。
*
「さて、どういうことか説明してもらおうか」
「い、いやぁ~……違うんだよレオン」
フィーネをたたき起こし、寝間着から私服に着替えさせて事情聴取をする。
俺のベッドで寝ていたのはまだ良いが、部屋が何故ファンシーな物で埋め尽くされているのかは説明してもらう必要がある。
「まずね? レオンがいない間私がこの部屋の管理をすることになったんだ」
「まぁそうなるだろうな。そこは感謝してる」
「それでね? 丁度私の部屋が手狭になってきててね?」
「それは知ってる」
フィーネは昔からファンシーなものを集めるのを趣味としていた。
フィーネの部屋の収納が亜空間になっているのはこの寮では有名な話だ。
「で、さ。家主のいない部屋があって、その部屋を彩るのに十分な量のインテリアがあったとしたら、レオンはどうする?」
「家主不在の部屋を勝手に装飾するのは嫌だからまずは家主に確認をとるな」
「そこはほら……レオンと私の仲だからいいかなって」
「……そうはならんだろ」
だが、現実として俺の部屋はそうなってしまった。
「分かってくれた?」
「理由は分かった。だが、納得は絶対しないぞ」
「むぅ。分からずや」
「こんなの分かる奴フィーネくらいしかいないだろ」
「そんなことないもん! 」
「はいはい。とりあえず不問にしてやるからカーツ教官のところに行くのを付き合ってくれ」
「うん、ありがとう! ……あれ? 私、レオンを怒る予定だったんじゃないっけ? どうして立場が逆転してるの?」
「知るか。ほら、行くぞ」
うやむやにして二人で教官室に向かう。
見慣れた廊下だが、不思議と懐かしさを感じた。
お待たせしました。




