帰宅 1/2
中途半端なので分割しました
「……今更だが、この服のまま行く必要はなかったか」
服を着替えていないことに気づいた。
が、今更着替えに戻るのも面倒だし、このままでいいか。
と、執事服の襟を正したところで何かが走ってきた。
灰色の装甲に大きい駆動音。
四つの車輪を回しながら、かなりの速度で迫ってくる。
「あれは……魔動車か」
魔動車。
駆動スフィアを軸として四輪を動かす魔道具だ。
「しかも最近出た大型モデルか」
開発されて以来、ここ二、三年で急激に普及している。
色々な研究機関がしのぎを削って開発にいそしんでいるので、俺が知らないモデルも増えてきた。
その魔動車は正門から離れた脇に停めると、中から作業服を着た人が数人出てきた。
「ふむ。さっき聞いた剪定業者だろうか?」
魔動車は非常に高価なものが多く、平民にはあまり普及していないのだが、よほど資金のある業者のようだ。
「おっと、急がないとな」
折角もらった休みだが、アンとの約束を破るわけにもいかない。
出来れば夕餉前には戻りたいところだ。
「『起動。空間転移。魔力接続……』」
目をつぶり、袖口のナイフに魔力を込め、俺の部屋の魔方陣に接続する。
良かった。まだ消されていなかったらしい。
「『接続確認。空間転移、実行』」
詠唱を終了するとともに、身体の引っ張られる感覚。そして浮遊感。
それから間もなく重力を感じ、着地。
「さて。この部屋に戻るのも久しぶり……」
久しぶりに転移した自分の部屋で見たのは、大量の可愛くファンシーなヌイグルミや服などで埋め尽くされた床。窓には可愛らしいレースのカーテン。
そして、
「しゅぴー……」
俺のベット(だったもの)で眠りこけるフィーネだった。
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