全力疾走
それから小一時間ほどエメラダに勉強を教え、区切りのついたところで部屋を出た。
……というか追い出された。
仕方ないので、廊下を歩きながら次はソフィアとアンのどちらの元へ向かおうか考えることにした。
「きゃはははっ!」
「どいてくださ~い!」
すると、前からアンとメイドがものすごい勢いで走ってきた。
「あっ、あぶないですよ~!」
全力疾走するアンの前方には……階段か!
「天翔ける風よ……!」
袖口のナイフに魔力を籠めながら、最低限の詠唱で軽量化の魔法を行使する。
足に風が纏ったことを確認し、俺は廊下を翔けた。
*
「ま、待ってくださ~い!」
私は今日もアン様を追いかけていた。
姉と一緒に遊んでいるときは比較的大人しいのだが、どうにも私と遊ぶのは退屈なのか、いつも決まって追いかけっこになってしまう。
はじめは普通に捕まえることが出来たのだが、アン様は日に日に速度を増していき、今では身体強化を使わなければ追いつかないほどになってしまった。
まだ幼いアン様がどうしてこれだけの速度を出せるのかはわからないが、お世話をするのは私たちメイドの仕事。
角を曲がり、距離を詰める。
「きゃはははっ!」
「どいてくださ~い!」
曲がった先に昨日入った新人の……レオン?様が歩いていたので走りながら警告する。
あの速度でぶつかれば流石にタダでは済まないだろう。
「あっ、あぶないですよ~!」
なんと、今日はアン様の部屋からほど遠い階段まで来てしまった。
つまりそれだけアン様が早くなってしまった証拠だ。
しかし、このままではアン様が階段から落ちてしまう!
足に魔力を込め直し、速度を上げる。
「間に合いました……っ!」
なんとか階段ギリギリでアンを捕らえたが、アン様の勢いを殺しきれず階段から落ちてしまった。
「だめ……っ!」
なんとかアン様だけは守らねばと思い、抱きかかえる。
そのまま階段の下に叩きつけられ――
「間一髪でしたね……。お二方とも怪我はありませんか?」
*
「間一髪でしたね……。お二方とも怪我はありませんか?」
「あはは! たのしいの!」
階段下でなんとかアンとアンを抱えているメイドを抱きかかえた。
「あれ? 痛くない……ってレオン様!? どうして!?」
「様は不要ですよ」
そう言いながら二人を下ろす。
「どうして、と言われましても。アン様を追いかけるのが見えたので、その手伝いをしようかと」
「手伝いって……さっきすれ違いましたよね~?」
「ええ。ですので魔法で追いかけてきました」
「レオン様も身体強化を使えるんですか!?」
「ちょっと違いますが……無事なら良かったです」
「レオンすごいの!」
状況がわかっていないアンは一人はしゃいでいる。
こういう時は、しっかり言わないとダメだ。
「アン様」
「?」
「今回は私たちが間に合ったからいいものの、下手をしたら大けがをするところでしたよ?」
「どういうことなの?」
「あー……つまり、です。アン様は悪いことをしたんです」
「……アン、悪い子なの?」
「そうです。悪い子です」
「ちょ、ちょっとレオン様~!」
流石にマズいと思ったのか、メイドが焦った声を出す。
だが、言わないとこのくらいの子供はわからない。
「うー……」
顔をうつむけ目じりに涙を浮かべ始めた。自分のやったことがすこし分かったのだろう。
「……ですので、謝りましょう」
「ふぇ?」
アンが顔を上げる。
「悪いことをしたら、謝りましょう。そうすればきっと許してくれますよ」
「……うん、わかったの」
アンがメイドに向き直る。
「カティア、ごめんなの!」
そして勢いよくメイド――カティアに謝った。
「そ、そんな。お顔をお上げください!」
そんなアンを見てカティアはうろたえている。
「あとレオンも……ごめんなの」
「良いのですアン様。でも、また同じことをしたら許してもらえないかもしれませんよ?」
「も、もうやめるの!」
必死にアンが主張してくる。これならもう大丈夫だろう。
「それではアン様、一緒に遊びましょうか?」
「いいの?」
「ええ。アン様は何がしたいですか?」
「えーっと、じゃあね! おにわでボールあそび!」
「かしこまりました。カティアも一緒に行きましょう」
「は、はい!」
そしてアンが疲れて眠るまで、一緒に庭でボール遊びをしたのだった。
勢いで書いたので、後で推敲します




