年相応
食堂で姉妹が食事を終えるまで厨房の監督業務をハウスキーパーのラスナに教わり、姉妹がそれぞれ自分の部屋に戻ったのを見計らってエメラダの部屋を訪れた。
「失礼します」
「なにしに来やがったですか」
ノートに向かう顔をチラリ、とこちらに向けるエメラダ。
不快感丸出しだ。
「いえ、宿題をしていると伺いましたので」
「そうですか」
やってる内容は……属性魔法序論だろうか?
「わからない内容がありましたらお教えいたしますので」
「余計なお世話、です」
そういうと再び宿題に向かった。
黙々と宿題に取り組むエメラダ。
さて、俺は……そうだな。
「んー……少し休むですか」
一刻ほど経ったところでエメラダが伸びをしながらそう言った。
「ハーブティーをご用意いたしました。どうぞ」
「ちょっとは気が利くですね」
先ほど用意したハーブティーをカップに注ぐ。
「……ん、美味しいです」
「ありがとうございます」
エメラダの顔が少し緩んだ。少しは警戒を解いてくれただろうか。
「……?」
「いかがなさいました?」
カップ半分ほど飲んだところで、エメラダが怪訝な顔でこっちを見てきた。
「お前、部屋から出てないのにどうやってこのハーブティーを用意したです? しかもこんなにちょうどいい温度の」
それは確かに当たり前の疑問だ。この部屋に台所はないのだから。
「それはまぁ、このように」
パチン、と指を鳴らす。
すると目の前に水の球体が現れた。
「お前、水魔法使いだったですか」
「残念ながら、違います」
さらに右手で球体に指示を出す。
すると球体はコポコポ、と沸騰を始めた
「……どうなってやがるです?」
「ここからでございます」
そこから左手を掲げる。
するとポットのようなものが出現した。
「あとはこうしまして……」
ポットにハーブを入れ、お湯を注ぎ、蒸らす。
「これにて完成にございます」
「……ハッ」
途中からポカーンとした顔をしていたエメラダだったが、いつもの顔に戻った。
「ど、どういうことです? 水魔法? 火魔法? そのあとは何を……」
「さて、なんでしょう?」
「は、早く教えるです!」
「そうですね……では、今やられております宿題の第三問目の解説から」
「関係無いですよ!?」
「いえ、それが意外と……」
そこからさらに一刻、レオンの解説を興味津々に聞きながらのエメラダと勉強が始まった。
なんだ、年相応な表情も出来るじゃないか。
この世界の魔法の原理については後程。




