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執事とお嬢様の魔法五重奏《マジカルクインテット》  作者: 幻馬
第一章 リヒテンベルクの人々
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ローゼンクイーンへ挨拶


「ありがとうございます」


厨房でメイドにローゼンクイーンの朝食をボックスに詰めてもらう。


「それはこちらのセリフで……って、いいんですか? お嬢様方への給仕は私たちの仕事ですのに」

「初日ですのでまずはコミュニケーションを、と思いまして」

「なるほど。でも、気を付けてくださいね。ローゼンクイーン様はとても気難しいお方なので……」

「御忠告、痛み入ります」


厨房を出てスフィアの案内通りに屋敷を進むと、他の部屋とは違うひと際豪華な扉があった。間違いなくここがローゼンクイーンの部屋だろう。

一呼吸おいて、ドアをノックした。


「……誰かしら」

「本日付でお嬢様方の執事を務めさせていただくレオンです。朝食をお持ち致しました」

「はぁ……マグダ、開けて頂戴」

「かしこまりました、お嬢様」


マグダ、と呼ばれた老齢のメイドが扉を開ける。

中はソフィアの部屋と同じく非常に広い。だが、インテリアはそれほど多くないように見える。


「で、何?」


その部屋の窓際。朝日を受けて艶めく長い緋髪を掃いながら、俺に問いかけてくる。

お前はなんだ? と。

ここで臆してはダメだ。


「まずはお嬢様に挨拶を、と思いまして。メイドの代わりに朝食をお持ちした次第にございます」

「そう。じゃあマグダ、お願いね」

「かしこまりました」


マグダが給仕の準備を始める。


「私が給仕も、」

「その必要はないわ。だって、貴方の用事はもう済んだでしょう?」


つまりもう出ていけ、ということか。

とりつく暇もない。


「……かしこまりました。失礼します」


持っていたモーニングボックスをマグダに渡し、一礼して部屋を出る。

初日ならこんなものだろう。

部屋に入れてもらえただけでも進展だ。


「さて、次は……」


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