顔合わせ 2/2
「じゃあ自己紹介から。私はソフィア・フォン・オリエント・リヒテンベルクって言うの。ソフィアでいいわ。一応、次女ね」
「よろしくお願いします。ソフィア様」
柔らかい雰囲気だ。優しさが滲み出ている。
「それでこっちが……ほら、エメ」
深緑の髪の少女が食事から手を放しこっちを見た。
「エメラダ、です」
それだけ言うとまた食事を始めてしまった。
かなり警戒されているようだ。
「エメは三女なの。よろしく頼むわ」
「エメラダ様もよろしくお願いします」
「それで最後が……」
「アンなの!」
手にしたフォークを天高く振りかざし、金髪の少女がそう高らかに宣言した。
食べていた魚料理がこぼれる。
「よろしくなの!」
「アンは末っ子で、まだ初等部にも入っていないの」
ソフィアがそう補足する。
確かにそのくらいの年齢だろう。あ、またこぼした。
「よろしくお願いします。アン様」
天真爛漫、という言葉がピッタリだろう。
周りにいる人間も元気にしてくれそうだ。
「それで、さっき出て行ってしまったのがローゼンクイーン姉様。ちょっと気難しいけど、いい人なのよ?」
少しだけソフィアの歯切れが悪い。
常にあの態度なのだとしたら、気難しさはちょっとどころではないだろう。
「あと、今ここにはいないけどあと一人。メアリライト……メリーって言う妹がいるの。そのうち会うと思うからよろしくね?」
「かしこまりました」
……そのうちとはどういうことだろう。
この家に住んでいないのか?
「それじゃ、あなたのことを教えてくださる?」
そういえばまだ俺の自己紹介をしていなかった。
「かしこまりました」
しかし何を言えば、いや、言っていいのやら。
「私はレオン。センテルム魔法大学校から来ました。お嬢様方の教育係を務めさせていただきます。至らぬ点もございますが、どうぞよろしくお願いいたします」
このくらいでいいだろう。
「……貴族院じゃない? それに、教育係?」
「はい、よろしくねレオンさん」
「レオンなの!」
三者三様の反応が返ってくる。
このくらいで良かったらしい。
「それじゃ、冷めたら美味しくないし食事を始めましょ。神に祈りを」
「……いただきます」
ソフィアは簡単な祈りを神にささげ、俺は最低限度の言葉を口にして、食事を始めた。
ようやく顔合わせが終わりました。ここから少しずつ物語が動きます。




