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75話 生意気なロリは強敵か



 王都の路地裏の通り。


 じめじめとした人通りもほとんどないような場所。


 そこで貴族らしい身なりの男と、やや小柄な体格でフードを深くかぶって表情が見えない人物が何やら会話をしている。


 フードの人物はどうやら獣人らしく、ふさふさとした尻尾が生えている。


 突如貴族風の男が声を荒げる。


「なんだとぉっ、失敗しただと!」


「はい、申し訳ございません。確実に強化手榴弾は獣車の窓から投げ込んだのですが、まさか奴が装甲車の方に乗っていたとは思いませんでしたので……」


「申し訳ないで済むはずがないだろっ、失敗は許されないとあれほど言ったではないか! どうするつもりだっ」


「はい、今一度チャンスを頂きたいと存じます。今度は絶対にしくじりません。必ずや仕留めますのでご再考を――」


「先ほどの俺の言葉を聞いていたのか? 俺は失敗は許されないといったのだぞ?」


「そ、それをなんとか――」


 その時、「ターン」という銃声が路地裏に響いた。


 獣人は驚いた表情をフードの隙間から見せる。


 しかしすぐに獣人は、自分の胸が赤く染まっていくのを確認すると、今度は蒼白の表情へと切り替わっていく。


 そしてゆっくりとその場に崩れ落ちる。


 貴族風の男は近くに止めてあったサンドランナーに跨ると、路地裏の奥へと消えて行った。



 ▽   ▽   ▽



「やっと到着したぜ。小物の魔物しかでねえから退屈だったなあ」


 ロックランドに到着した早々にそんな言葉でぼやくのはマノックだ。


 そんなマノックを一目散に出迎えたのは特異種少女のミルだ。

 緑色の髪を風にたなびかせ、獣人特有の長い尻尾を大きく振りながら走り寄って来る。


「レイさん、お帰りなさい。さ、寂しかったです……」


「ああ、すまんな。なんか変わったことはなかったか」


「ええっと、また手紙がたくさん来てましたけど――捨てときますね」


「いやいやまてよ、何の手紙か解らねえだろっ」


「ううう」


 ミルが言葉を詰まらせる。


「手紙は後で俺が確認する。他はないか?」


「えっと、レイさんに会いたいって来た人がいました。手紙出しても返事がないからって直接来たとか言ってました。会いますか?」


「はあ? 会いますかってロックランドに今もいるのかよ」


「はい、会えるまで帰らないって言ってたんでまだいると思いますけど、レイさんが許可してくれるんなら魔物召喚して――」


「まて! それはやめろっ」


「そうですか、残念です」


 ミルはうつむいてしまう。


「だがな、どこの貴族様令嬢なんだか知らねえが、それはちとしつこいよな。まあいい、俺が直接会って追い返してやる」


 マノックは詳しい話を聞きに、おそらく事情を把握しているだろうミランダのところへ足を向ける。




 マノックはノックもせずにいきなり扉を開け放つ。


 部屋の中ではテーブルに山のような書類をさばいている女性がいた。

 扉が急に開き、驚いた表情でマノックを見つめる人物がミランダである。


「マノック男爵、ノック位してくださいよっ、驚くじゃないですかっ」


「お、忘れてた。すまん、すまん」


「で、お戻りになられたんですね。報告書の類はそちらに置いてあります。どうせ見ないんでしょうけどね。他に何か御用はありますか?」


「えっとだな、俺がいない間に客人が来たって聞いたんだがな。その客人がまだロックランドに滞在してるってんでさっさとお引き取り願おうかと思ってな。その客人ってのはどこにいるんだ?」


「はいはい、シェリー・ラッセルお嬢様のことですね。2日前にお見えになられてからずっと街のホテルに滞在していますよ。マノック男爵にはぜひあって頂きたいわね」


「会う事は会うんだが、目的は追い出すためだぞ?」


「そんなこと言ってるのも今の内だと思いますよ」


「まさか、有力貴族の令嬢とかなのか?」


「そうですね~、そこそこの力をもっている伯爵令嬢ってとこですけども、3女ですからね~どうなんでしょう?」


「ふん、それくらなら叩きだしてやるっ」


「できるならやってみてくださいね」


「あっとミランダ、ちょっと調べてほしい事があった」


「はい? なんでしょうか」


 マノックは王都で襲われたことを話し、それについて調べるようにお願いしたのだ。

 ミランダはできる限りは調べるけど、結果は期待しない方がいいと言われる。


 それもしょうがないと納得してマノックは部屋を出る。

 向かうはロックランドで唯一のホテル、その名も『ロックホテル』だ。



 4輪装甲車を運転しロックホテルに到着する。


 ホテルの真ん前に堂々と駐車すると、堂々たる雰囲気で正面入り口から中へと入って行く。


 少し遅れてオートバイに乗った兵士2人が到着して、すぐさまマノックの後を慌てる様に追っていく。


 マノックがホテルの受付カウンターまで来ると、領主の登場に従業員が慌ててスタッフルームへ責任者を呼びに行く。


 入れ替わりで少し偉い雰囲気のスタッフが出て来て直ぐにマノックに応対する。


「これはマノック男爵様、当ホテルに何用でございましょうか」


「ああ、ちょっとここの宿泊客に用事があってな。ちょっと呼び出してくれるか?」


「はい、呼び出しですか。それでその相手の名前というのは?」


「えっと……ジュエリー? ジェリー? とかなんとか」


 そこへマノックの後を追いかけて来た兵士2人が助け船をだす。


「「シェリー・ラッセル様です!」」


「なんだお前達、護衛なんていらねえって言っただろ」


「いえ、そうもいきません! 現に王都で狙われていますから、いくら地元といえども襲われない保証はありません。ましてや護衛しないと我々がミランダ女史に怒られてしまいますから」


 そこまでいわれるとさすがにマノックもそれ以上言えない。


「しょうがねえなあ。それじゃあ、しっかりついて来いよ」


「「はい」」


「すいません、お話のところ。確認いたしますと、シェリー・ラッセル様をここへお呼びすればいいのですね」


 ホテルの受付スタッフが改めて帳簿を見ながら確認する。


「あ、すまん。話の最中だったな。そうだ、呼んでくれ。そうだな、あっちのラウンジで待ってるんでよろしくな」


 マノックはホテルのラウンジを指さし、さっさとラウンジへと歩き出す。


「かしこまりました」


 ホテルスタッフはマノックの後ろ姿に深々と頭を下げる。


 マノックはラウンジのカンター席に着くと、まだ午前中だというのに関わらずビールを3杯注文する。


「おい、お前達もこっちへ座って飲め」


 マノックが自分の隣のカウンター席を指さす。


「え? それは勘弁してください、ミランダ女史に殺されます」


「今俺に殺されるのと、どっちを選択するんだ?」


「「ちょうど喉乾いてました、頂きます!」」


 こうして大の男3人が昼間からカンターで並んでビールを飲み始める。


「で、お前ら自己紹介しろよな」


「すいません昨日したんですが覚えてらっしゃらないようですね……」


「ああ、すまん。昨日は飲み過ぎててな。もう一回頼むよ」


「はい、私がハンス・ラルといいます。剣術が特技です」


 ハンスの身長はマノックより低く、ちょっと小柄な体格ではある。すっきりとした目鼻をしていて、はっきり言えばイケメンだ。


「僕はヘルマン・ラルといいます。特技は銃剣術です」


「2人ともラルってことは兄弟か?」


「はい、僕が弟です」


 弟と名乗ったヘルマンの方が身長が高く、体格もがっしりとしている。弟の顔立ちもきりっとしていて、はっきり言わなくてもイケメンだ。


「兄弟揃ってイケメンとは、卑怯な!」


「な、なにをおっしゃいますか。マノック男爵殿のモテぶりには私達も頭が上がりませんですよ」


 兄のハンスが慌ててフォローを入れる。


 そんな話の最中に、彼ら3人の後ろから女性の声がかかる。


「大変お待たせしました。マノック男爵」


 ラル兄弟が慌てて椅子から立ち上がり振り向き、警戒態勢を取る。


 その後になって、ビールジョッキを持ったままゆっくりと振り返り、嫌みっぽく言葉を返す。


「ああ、やっとお出ましか」


 マノック達の目の前には声を掛けて来たアラサー女性1人、そのすぐ後ろに10代前半くらいだろうか女の子が1人立っている。


 さらにその後方では体格の良い男が2人が威嚇するように立つ。

 後方の男2人は護衛のようだ。


「遅くなりましたこと、深くお詫びいたします」


 アラサー女性が謝罪する。


「で、俺に用があるとか?」


「はい、まずは自己紹介から。こちらがラッセル伯爵の娘であります、シェリー・ラッセル伯爵令嬢であります。私はシェリー様お付きのバーバラと申します。後ろに控えておりますのは護衛の2人でございます」


「そうか、俺がここの地の領主のマノックだ。で、何の用だいったい」


「はい、お嬢様とぜひちぎって貰えないでしょうか?」


「はあ~~~っ」


「突然のことで驚かれるとは思いますが、せめて見合いでも構いませんのでお願いできないでしょうか?」


 護衛のラル兄弟は聞いてはいけない話とさとって席を立ち距離をとる。


「はいそうですかって言う訳ないのは解ってるだろう。だいたいまだ子供じゃないか。その子にしたら俺はただのおっさんだぞ」


 マノックのその言葉に激しく反応したのがシェリー本人だ。


「私子供じゃないですもんっ」


「何言ってやがんだよ。エルフじゃねんだから見た目通り12歳くらいなんだろ」


「15歳ですからっ、もう成人ですからっ、結婚出来る年ですからっっ」


 見た目12歳の少女は両腰に手を当てて、金髪の髪の毛を振り乱してまくし立ててくる。


「へえ、見えねえな~。ま、どっちにしろそう言った話はお断りなんだよ。そんな話が後から後から湧き出て来るんでな。すべてお断りだ。さ、帰ってくれ」


 マノックは手をヒラヒラとさせて追っ払う仕草をする。


「バーバラっ、こいつ生意気ですっ。おっさんがこんな若い少女と結婚できるっていうのに生意気ですっ! 堂々とロリコン人生を謳歌おうがさせてあげるっていうのにっ、こんな若い体を好き放題できるっていうのにこの態度っ、生意気ですっっ」


「いやいや、自分で何言ってるかわかってるか? だいたい俺はロリ専でもねえしっ、色気のある方が良いしっ」


「ぬぬぬぬ、ロリの何がいけないのですかっ」


「YESロリータNOタッチというのを知らねえのか」


「まあ、まあ、2人とも。ここは場所と時間を改めましてゆっくりと――」


 喧嘩腰になったところでバーバラが割って入った。


「ま、そうだな。別の場所で――っておい! 危なく流されそうになったわ」


「どうしてもダメでしょうか。せめて最後に説明だけでも聞いていただけないでしょうか。それでダメなら諦めて帰りますので」


「ん~そこまで言うなら説明くらい聞いてやるよ。だけどダメだったら素直にそっちの生意気なチビを連れて帰れよな」

 

 話の流れで何故か説明を聞く事になるのだが、この時点でマノックはバーバラの手の上で転がされつつあるのに気が付いていない。


 会って追っ払うだけのはずが、説明を聞く段階まできている事になんら疑問をもっていなかったのであった。


 その後、バーカウンターから奥の個室へと場所を移し、バーバラとシェリーとマノックの3人だけで話し合いが行われるのだった。





読んで頂き有り難うございました。


評価、ブック魔悪有り難うございます!


日間でジャンル別9位になった途端、急激にPVが増えて驚愕!


有り難うございました。


今後ともよろしくお願いいたします。



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