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72話 大蛇の秘密は闇に葬った



「ん~、なんだか体中が痛いぞ。というかなんでこんなところに私たちはいるのだ?」


 ベットの上で軽く上半身をストレッチのように捻りながら疑問を投げかけるのはレラーニだ。


「ん~なんか怖い夢をみたんですけど……ん? ここ、ベットの上? レラーニさん? ええ! レイ、さん……」


 目覚めたミルも現状把握できていないらしく、目をこすりながらレラーニとマノックを不思議そうに見回す。


 2人は何故ここに自分達がいるのか全く分かっていない。


 マノックは大きくため息をついた後、昨日2人が飲み過ぎて寝てしまったこと、やむ追えず自分の家に連れ帰ったことなどを説明した。


「――ま、という訳で2人はここにいるんだよ」


 その説明に2人は申し訳なさそうにうつむいてしまう。


「レイさん、ご迷惑をおかけしました。まさかそんなに酔っぱらっていたんですね。すいません……」


「私としたことが、そんな迷惑をかけてしまったとは。申し訳ない!」


 2人してマノックに謝罪するのだった。


「ああ、今度からは酒に飲まれない様にしてくれよな」


「「はい……」」


「お前ら昨日のままの服だろ。着替えを用意させるんでシャワーでも浴びてこい」


 マノックはメイドを呼ぶと2人にシャワーを浴びさせるように指示をする。

 するとメイドは無言で2人をシャワー室へと背中を押すように連れて行った。


 マノックはロックランドの領主である。その領主の屋敷にはメイドや執事くらいいるのであった。というかまわりが勝手に専属のメイドと執事を住まわせたというのが正しい。

 マノック本人は初めは嫌がったのだが、領主の屋敷に召使いがいないのはおかしいと説得させられたのだった。

 説得したのは元ドロップポイント女性高官である『ミランダ』である。 今回の事件の大元である、女性高官救出作戦の主役だった人だ。


 現在ではロックランドの実質的にやりくりさせられている人物でもある。簡単に言えばマノックの代わりをやらされているのである。


 2人がシャワーを浴びている間に、マノックも別のシャワー室でさっぱりして服も着替える。


「ふ~、なんかすっきりしたな。ちょっと遅めの朝食でもするか」


 マノックのその言葉にすかさずメイドの1人が反応する。


「マノック様、朝食のご用意はできております」


「お、そ、そうか。準備がいいな」


 マノックはメイドに案内されるようにテラス席に到着する。

 するとそこには豪勢な朝食がずらりと並んでいる。


 マノックが席に着いてしばらくすると、ミルとレラーニが別のメイドに案内されて来た。


 2人はこぎれいな余所行きで着るような服装をしており、メイドたちにしっかり化粧までされていた。


「おお、2人共見違えたじゃねえか。まるでいいとこ出のお嬢様だぞ」


 それを聞いた2人は上機嫌のまま席へと着いた。


「レイさんすごいですね。いつもこんな朝食とってるんですか?」


 料理をまじまじと見つめながらミルが質問した。


「そんな分けねえだろ。客人がいるからってんで豪勢にしてくれたみたいだぞ。俺1人でこんなことしたら俺が怒るからな、ははは」


「そういえばレイ、シャワーの時にミルとも話したんだがな、変な夢を見たんだ。その夢が妙に生々しくてな。もしかしてレイも同じ夢をみてるんじゃないかと思ってな」


 レラーニが真剣な面持ちで乗り出すように話してきた。


「んん~? どんな夢みたんだよ」


「それがミルと私と同じ夢を見てるんだ。夢の中には毒水を吐く大蛇と私とミルとそしてレイ、お前も出てくるんだ」


「はあ? 俺も出演か、はっはっは。それはおもしれえな。で、どんな夢なんだよそれは」


「それがだな、私が目を目を覚ますとレイが大蛇にまたがってるんだ。その両脇に私とミルがいてな。突然なんだが大蛇が毒水を吐きだしたんだ」


「そう、そうなの! 私の目の前で大蛇が何もない岩陰に向かって毒水を吐きだしたの。それでレラーニさんが叫び声を上げたんで、つい私も悲鳴を上げちゃったの」


「な、なあ、ミル。そ、それってどんな叫び声だったんだ?」


 マノックは恐る恐る尋ねた。


「はい、レラーニさんは『いっ~やぁぁ~』って叫んだんです!」


 ミルの言葉を聞いたレラーニが慌てて言葉を返す。


「なっ、ミルも『ひええぇええぇええ』っておっきな声で悲鳴を上げたんだぞ。おっきな声でな!」


「でもレラーニさんの方が声おっきかったですよ」


「何を言ってるの、ミルの方が大きかったじゃない」


「ええええい! 声の大きさなんてどうでもいいわっっ!」


 マノックが声を荒げて割って入る。


 少し落ち着きを取り戻したミルがマノックに疑問を呈する。


「でもレイさん、叫び声とか悲鳴とか聞いてどうするんですか?」


「え、いや、その――なんでもない。ちょっと気になってな……」

(あの時の悲鳴と叫び声じゃねえか!)


 つづいてレラーニが疑問になっていたことを聞いてくる。


「そういえばレイよ、お主はその夢を見なかったのか? お主は大蛇にまたがっておったのだぞ」


「お、俺はそんな夢なんか見てねえよ……」

(跨った様に見えた大蛇はきっと俺の○○○だ!)


「そうなのか? その大蛇は毒水を吐いたんだぞ?」


「だからそれは悪い夢を見ただけだって」

(毒水のブレスなんかじゃねえよ、俺の立ちションだよっっ!)


「そうですね、妙にリアリティーがあったんで少し心配です」


 ミルが肩を落として困り顔をする。

 不安なマノックは確かめずにはいられなくなり、一番気になるところを質問する。


「あ、あのさ、そ、その大蛇ってはっきり形とか大きさとかって覚えてるのか?」


 その質問にレラーニが目を輝かせながら応える。


「ああ、はっきりと覚えてるぞ。あれは凄かった。あんなグロテスクな大蛇など見たことがなかったぞ。よくもあんな化け物にまたがってたなレイは」


「いや、またがってたわけじゃ――ああ、俺はそんなことしてたんだ。お前らの夢の中でな」

(グロテスク言うな! っていうかお前ら結局見たのか、俺の暴れん坊大蛇を!)


 そんな話をしている時に執事が会話に割って入ってきた。


「お話し中申し訳ございません。治安担当の者が報告に来ていますがいかがいたしましょうか」


「ああ、構わん通してくれ」


 報告者はロックランドの治安に携わる指揮官の一人だった。

 その指揮官が言うには昨夜祝賀会が終わった後、変質者らしき怪しい男が岩陰に少女2人を連れ込んだのを見た者がいるらしい。急いで兵士がそこへ急行したのだが、すでにそこには誰もいなかったそうだ。

 ロックランドで初めての事件の可能性があったので報告に来たそうだ。


 それを聞いたマノックは思った。

 それってミルとレラーニを連れて用を足しに岩陰に行った俺じゃねえかと。


(まずいな、大々的に変質者呼ばわりされちまうぞ)


「どうしましょうか? まだ犯人は見つかっておりませんが」


 少し動揺したマノックがそれに答える。


「そうだな、どうせ祝勝会で酔っぱらった奴が見間違えたんだろ。とりあえず女性全員の安全を確認すればいいだろう? 女性の数はそこまで多くないからな」


「はい、了解しました。そういたします」


 そう言って報告者は帰って行った。


「まあ、夢の話なんざ忘れて朝食にしようぜ!」


 マノックのその言葉にミルとレラーニは大きくうなづいてフォークを握るのであった。



 ◇  ◇  ◇



 朝食を終えたマノック達は今日の仕事に取り掛かる。


 政治的な事や街づくりなどは元女性高官のミランダに任せるとして、マノックが出来る事といったら防衛設備やその武器に関することくらいだ。つまりミランダは現在、マノックがやる仕事を一気に引き受けており、代官として働いているのであった。

 

 マノックは現在、戦場跡でサルベージされて集められた陸戦艇やそのパーツ、あるいは捕獲してまだ修理していない小型艇などの山を目の前に、どうしようかと腕を組んで悩んでいるところだった。

 

 簡単に言えば暇つぶしだ。


 ちなみにレラーニとミルは別の所へ行っている。

 マノックとは違い彼女達にはいくらでも仕事がある。領主が本来やるべき書類関連の仕事さえもできないマノックとは大違いであった。


 「分かりましたから書類には絶対に手を触れないでください」とまでミランダにいわれてしまうほどに、マノックはペンを持つことが苦手だったようだ。


 最終的には「ここにいても邪魔になるんでどこかで休んでてください」とまで言われれば、さすがに少しは凹むマノックなのだが、それも1日たてばそんな感情など忘れてしまうのだった。




 ロックランドの復興作業が着々を進むそんなある日のこと、伝書魔鳩によって王都より連絡が入った。


 それはマノックを陞爵しょうしゃくさせるというものであった。


 つまりは士爵だったのが男爵になるとうことらしい。


 大慌てのマノックにに対して、代官であるミランダは言い放つ。


「今回の領地獲得による報償ですね。爵位を持つ者が領地を獲得すれば獲得した者がその領地を得られます。そして最低でも男爵位がなければ領地は運営できない決まりですのでマノック士爵は爵位が上がり、領地を運営できる男爵となるわけです」


「つまり士爵が領地を確保したら必然と男爵になれるという事か」


「はい、そういうことですね。それでは王都へ行ってらっしゃいませ。領地持ちですから小さな陸戦艇ではなくて大きめので行ってくださいね」


「そうなのか。エリスに詳しく聞いてみるよ」


「あ、エリス子爵様はとっくに出航していますよ。反発石の初回分を出荷しに行きましたよ」


「え、まじか! それじゃあ付き添いなしで式典に行かなきゃいけねえのかよ」


 そういうことが苦手なマノックは青ざめるのであった。




読んで頂き有り難うございました。


やはり戦闘モードが書きたいw



今後ともよろしくお願いいたします。

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