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7話 酒の力は偉大なり


「積み荷が魔物ってどういうことなんだ、魔物の素材の間違いだろ?」


「まぁ驚くのも無理ないわよねぇ。でも魔物そのものなのよぉ、積み荷はね」


「サンドランナーとかか?」


「違うのよねぇ、もっと等級が高い魔物よぉ」


「ん~、ちゃんと説明してもらってもいいか」


「そうね~、あまり詳しくは話せないのよねぇ、ただねぇ、今言えるのは今後は生きている魔物も商品として扱うってことよぉ、これでいいかしら?」


「それはサンドランナー以上の魔物をテイムできるってことかい?」


「それ以上は企業秘密なのよねぇ、ごめんなさいねぇ、レイ、あらごめんなさい。マノックって呼ぶように言われてたわね」


「いや、もういい。昔のことだ……」


「そう、じゃぁレイ、これ以上は話せないのよぉ。あとはご想像にお任せするわね」


「おまえ、すごい事業に乗り出しやがったな。もしこれが軌道に乗ったら大変なことになるぞ。俺の読みだとサンドランナー以上の魔物をテイムするか、召喚してそれを売ろうって根端らしいがな、まずそんなことができる人物は間違いなく争奪戦になるぞ。取り扱いを間違えると戦争に発展するぞ。大丈夫なんだろうな」


「ふふふ、私はエリス・マッカーデンよぉ。見くびらないでよねぇ」


「はいはい、女王様。うまくやってください。だけどな、こんだけ重要性が高い仕事にしては…その…なんだな」


「ふ~言われると思ってたわよぉ、もっとよこせって言うんでしょうぉ」


「お、話が早くて助かるね!」


マノックは3杯目のワインを飲み干すと4杯目をグラスに注ぎ始める。

それを一気に飲み干すと空になった瓶を持ち上げて告げる。


「これお代りないのか?」


「それが報酬でいいのかしらぁ?」


「ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ、そんなんで済むかよ」


「あら、でもそのワイン1本3万シエルするのよぉ」


「……3万シエル……これ一本でか……さ、さすが貴族様でございます。おいしゅうございました」


「まあ成功報酬上乗せはお仕事の質をみて考えるわねぇ、これでいいかしら?」


「あ、ああそれでいい。も、問題ないよ」


 エリスはニコリと笑うと伝声管を通して食事を持ってくるように伝える。


 しばらくして朝食にしては豪勢すぎる料理がテーブルに並べられた。


「こ、これが朝食か?」


「ええ、好きに食べていいわよぉ。いつも食べきれないほど作るのよねぇ。味は保証するわよぉ」


 マノックには余りに豪勢すぎる料理だった。


 一心不乱に食べる、食べる、食べる。


 もうこれ以上無理というところでデザートのフルーツが出てきて、さすがのマノックもここでギブアップだった。


 マノックは自分の艇に帰るときに、魔道具である追跡装置を借り受けたのと、図々しくも魔石燃料の補充も受けていたのはさすが百戦錬磨のなせる業……なのか?!


 追跡装置は非常に高価な魔道具であり有名でもあったので使い方ぐらいは知っていたのだが、これ1台で安い陸戦艇くらいはすると聞いて扱いに慎重になるマノックだった。


 陸戦艇にかけられた梯子はしごが外されると、ハニークイーン号は汽笛を鳴らして遠ざかっていく。その姿を見ながら自分の今乗っている陸戦艇を見やると、やはり小さく感じてしまいマノックは若干落ち込むのであった。


 その後、自分が請け負った仕事を乗組員に話すと、特に文句を言われることなくスムーズに流れほっとする。


「よおし!それじゃあ出発するぞ!エンジン始動、微速前進」


 魔道具である追跡装置に魔石エネルギーを通すと、登録されていた小型輸送艇がいる方角を指し示した。


「13時方向へ船首を向けろ、目指すは小型輸送艇『T33』だ。種別はブリック艇になるらしいぞ、見逃すな!」


 俺の陸戦艇は魔石燃料も満タンの状態、しかも予備の燃料まで船倉に収納した状態での出発だったので、燃料の節約をすることもなく徐々にスピードを上げていった。


「この速度で走れば、明日の夕方には追いつくな。それまでは自由時間だ。見張りは怠るなよ。さて、ワインでも飲むか」


 マノックは高そうなワインをふところから取り出す。


「マノック艇長、どうしたんですかその高そうなワイン」


 欲しそうな目で質問する機関手のキース。


「いやあ、飲んでくれとばかりにハニークイーンの艇長室に置いてあったんでな、ちょっと借りてきたんだよ。飲み終わったらちゃんと返すつもりだからさ、つもりね」


 ちゃっかりエリスのワインを持ってきていたのだった。


「さてと、たまに手入れもしないとな」


 マノックは甲板に布を広げると、その上で腰の大型拳銃を取り出し分解し始める。

当然ワインを飲みながらである。


 こんな小型の陸戦艇での艇長専用の部屋はある。

と言っても小さいベットと小さな机と椅子があるだけなのだが、その狭い場所にもマノックはいくつもの拳銃とライフルを持ち込んでいた。


 早い話が武器が好きなのだ。


 暇を見ては銃を分解したりしている。


 そして今は甲板上でいつも持ち歩いている大型拳銃『スピリット』を分解掃除している。


 4連発の回転式大型拳銃なのだが、威力は拳銃の中でもトップクラスの性能であって、魔物相手でも通用するとまで言われる代物である。


 ただ、反動がものすごく命中させるのも大変だったこともあり、人気があまりでなかったので今じゃ絶版品である。


 絶版品とあって、弾丸の入手も一苦労する代物であった。


 マノックはいつも対魔物用の弾を2発と対人用の通常弾1発と閃光弾を1発装填している。


 用途に合わせて使い分けようと言うのだった。


 回転式拳銃のメリットがここにある。


 こうして旨いワインを片手に至福の時間を費やすのであった。


 銃の分解清掃がちょうど終わりワインがなくなる頃、日が暮れ始めて空が真っ赤に染まる。


「そろそろ夜行性の魔物どもが動き始める頃だな、見つけたら知らせてくれ。食料の確保もしておきたい。ハニークイーンから食料も貰ってくればよかったな」


 しかし食料確保も出来ないまま、結局朝を迎えるの事となる。


 いつもの様に朝食はビスケットという名の、岩のようなパンを薄めた安いワインで強引にのどに流し込む。

 チーズが付けば豪勢と感じてしまう。

 それが毎日繰り返されるのだが、さすがに飽きる、いやそんなレベルではなく無性にうまい物が食べたくなる。

 そこでどうするかというと、新鮮な肉を得るために『狩』をするわけだ。

 稼ぐための狩ではなく、食べるための狩である。

 どう違うかと言えば食べるための狩は、食べられる獲物を目標とするので、いつもなら見逃すような50㎝位の小さな魔物まで狩ることになる。

 かえって小さい獲物の方が美味しい場合があるくらいなのだ。


 砂しかないようなつまらない場所では、娯楽といったら食べる事とカードの賭けくらいなので、食べる目的での狩は誰もが必死であった。

 ましてやハニークイーン号から、陸上でもなかなか食べられないような食事を食べた乗組員は、なおさら食べる事に欲求が出てしまうのであった。

 そんな彼らはまずい食事を済ませると、まるで戦闘態勢のような素早さで獲物確保の準備を始めるのであった。


「よおおし、野郎共、これから『岩ネズミ』の捕獲作戦を実行する。一番でかいのを釣り上げた者には特別に、ハニークイーン号から持ってきた高級ワインを進呈するぞ!」


「「「「おおおおお!!!」」」」


高級ワインというだけで大盛り上がりである。


「それでは、取り掛かれ!!」


「でけ~の釣り上げるぞお!」


「負けてられっか!」


乗組員全員が目の色を変えて動き出す。


 長いロープの先に羽の付いた鉤針を取り付けて、そこに餌となる干し肉を引っ掛け船から垂らす。

 陸戦艇は動いているので餌が付いた鉤針が羽の動きも相まって、砂の上を上手く疾走するのだが、岩ネズミから見るとそれが生きた獲物に見えるらしく食いつくのだ。


 ただ、岩ネズミはどこにでもいるわけではなく、岩がないところには生息せず、岩が大きいと今度は陸戦艇では通れないとあって狩場が難しい。

 現在走っている場所は小さな岩が多く、狩場には適しているのだった。


 最初に岩ネズミを確認したのは狩を始めて30分ほどしてからだった。


 レフの仕掛けた餌に岩ネズミが反応して、追いかけはじめたのだ。

 しかしここからが腕の見せ所だった。

 頭のいい岩ネズミを警戒させることなく、鉤針に食らいつかせなければいけない。

 しかしそこはやはり長老と言われるだけあって、年期が違った。

 岩ネズミは餌が付いた鉤針を追いかけてものの数秒で餌に食らいついた。


「ひょっほ~~、やりましたよ、一番のりですよ!」


 レフは嬉しそうにロープを手繰り寄せる。


 体長が50㎝はある岩ネズミなので、さすがに1人で引き上げるのは難しく、数人ががりでなんとか船上に引き上げた。


「意外とでけ~なこれ」


 引き上げた獲物を見て、パットの代わりに舵を握っているマノックは驚く。


 体長の長さは普通なのだが丸々と太っていて、おそらく重さは一般的な岩ネズミより重いと思われた。


「くっそ~負けてらんないぜ!」


そのあとすぐに動きだしたのは酒には目がない機関手のキースだった。


「とりあえず今日の昼の食事は岩ネズミのステーキで決定だな。それに高級ワインが付くのはレフになるのかな」


 マノックがワザと発破をかけるべく、高級ワインと言うキーワードを出す。


 マノックの思惑通り、そうはさせまいとキース以外の乗組員も慌てて仕掛けの餌を取り付け直す。


「おまえらさあ、いつもこれ位の意気込みで仕事もしてくれると助かるんだけどなあ」


 それを見ながら思わず本音がでてしまうマノックだった。


 そんなことをやってる間に、予定よりもだいぶ早く小型輸送船に近づきつつあることに、誰も気が付かなかった。


 その理由は小型輸送船を発見して初めて知ることになるのだった。







読んで頂き有難うございました。


どなたかが評価していただいたようで有難うございます!

いや~嬉しい物ですね。


今後ともよろしくお願いいたします。



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