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俺の陸戦艇物語~武器ヲタおっさんの冒険譚~  作者: 犬尾剣聖


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46話 洞窟に悲しみを見た





 まるでダンジョン内へと突入するような緊張感、それでいてワクワクするような高揚感。怖いもの見たさと言えばそれで片付いてしまうのだが、彼らの気持ちはもっと複雑だ。命の危険があるのだからそれは当然のこと。


「準備はいいか、突入するぞ」


 マノックの掛け声とともに洞窟内へと侵入する。

 彼らの歩く頭上には、魔法の光球が光り輝いている。それが洞窟内を照らす。

 マノックの『ライト』の魔法によるものだ。


 歩くこと5mほどだろうか、そこで彼らは落胆する。


 期待に胸を躍らせて入ったダンジョン(・・・・)だったのだが、それが単なる居住空間だったからである。

 彼らが行き着いた場所は、10mほどの広さの生活空間が広がっていた。


「ったく、期待させやがって! ゴブリンどもの居住区じゃねえかよ!」


 マノックが悪態をつきながら怒りに任せて構えていた短機関銃を壁ににぶっ放す。


 その時


「ひっ!」





「ん? マノッキュ、今奥の方から声がしたぞ」


 レラーニが尖った耳で聴き耳を立てている。


 マノックが魔法の光球をレラーニが指し示す方へとゆっくりと移動させる。

 

 部屋の壁際に光球が到着すると、その壁にはさらに奥へと続く洞穴が照らされる。

 マノックはキースとレラーニに無言で指示を出す。

 2人はその洞穴の両脇に構えて、いつでも戦闘できる体制だ。

 

 マノックは光球をその洞穴へと、確かめる様にゆっくりと侵入させていく。


「き、貴様ら、それ以上入って来るなよ! これが見えな――ふげぇえっ!」


「あ、す、すまん。反射的に矢を放ってしまった……」


 レラーニが魔法の矢を放った言い訳だ。


「レラーニ! 反射的とか言いながらまだ止めを刺そうとかしてないか? その魔法の弓矢を早く解除しろ!」


 マノックのやや強めの制止に、渋々と魔法の弓矢を解除するレラーニだった。


「キース、中へ。 俺が援護する」


 マノックの援護の元、キースがショットガンを構えながら洞穴の奥へと進んで行く。地面には先ほどの魔法の矢を受けたオークが悶絶している。

 キースはそのオークが持っていたであろう拳銃を足でマノックの方へ蹴って渡す。

 そのオークの横には壁を掘って作った牢屋があった。


「マノック艇長、中に人がいますよ」


 キースが牢屋を指さして声を上げた。


 マノックが短機関銃を構えながらキースの側までくると、光球を牢屋の中へと移動させた。

 そこに照らされたのは人間の女性達だった。


「ひっでぇ事しやがる……」


 牢屋の中を見たマノックは光球を少し後ろに下げながらつぶやいた。


 牢屋にとらわれている女性達は、ほとんど着る物も身に着けずに、しかも明らかに栄養失調と思われるくらい痩せこけていた。


「レラーニ、中へ入って来てくれ!」


「わかった、今行く!」


 マノックの声に反応したレラーニが洞穴へと入って来る。


「女性のレラーニの方がいいだろう。頼む」


 マノックが牢屋を見る様に促す。


「あ、ああ、そうだな」


 レラーニがやっぱりといった顔で牢屋を見たのち、腰の剣を引き抜いて牢屋の鍵へと斬撃を喰らわせた。一撃で牢屋の鍵は破壊され、扉がゆっくりと惰性で開く。


 しかし女性達は牢屋の奥で固まって怯えるだけで、出てこようとしない。


「キース、俺達は外へ出ていた方がよさそうだ、来い」


 マノックはキースを連れて洞穴の奥へと移動した。


 洞穴の奥からは「助けるからもう大丈夫だぞ」と言うレラーニの言葉が聞える。

 その数秒後に、オークの悲鳴と肉を殴る音が無数に聞こえた。

 オークの悲鳴が途絶えた後も、しばらく肉を殴る音が続いたのだが、それも徐々に収まり、程なくしてレラーニに引率された女性達が洞穴から出て来た。

 その女性達の手はオークの血液の色である、緑色に染まっていた。


「オークは?」


「……」


 マノックの質問にレラーニは無言で横に首を振るだけだった。


 洞穴を出て居住区の広間に来ると、女性達の一人が水が入っていると思われる大きな樽に走り寄る。その女性に続いて他の女性達も水が入った樽に群がり、貪るように水を飲む。さらに近くにあった食料に手を出し、びくびくしながらも貪るように食ベ始める。

 止めるわけにもいかずに、マノック達はしばし立ち止まる。

 10分ほどすると1人の女性が泣き始めた。それに続いて他の女性達も泣き始める。

 どうやら理性を取り戻し始めたようだ。


「行くぞ……」


 レラーニが沈黙を破り、女性達をなだめながら洞窟の入り口を目指す。


 明るさに慣れていないせいか、女性達は眩しがる。


 女性達は“俺の陸戦艇”へと案内して、ミルの魔法『クリエイトウォター』を使って大量の水を用意してもらい、女性達にシャワーを提供した。


 そうしている内に、マノックとキースの2人は洞窟内の物色と、奥に係留されている陸戦艇の探索をする。レラーニはミルと女性達の付添い兼護衛として残ってもらっている。


 洞窟内の居住区には案の定、宝箱があった。中身は盗賊行為で奪ったであろうお金や貴金属、そして安い魔道具らしいものもいくつか見られた。


「まぁ、ここじゃあこんなもんだろう。酒類はほとんど飲まれちまっているようだしな。本命は奥の陸戦艇だな」


 マノックは宝箱を担いで一旦洞窟の外に置くと、今度は奥に係留されている陸戦艇へと歩を進める。


 近くで見てみると結構な損傷を受けており、金になるかは微妙なラインであった。


「キース、どう思う?」


「そうですね――外見を見るとダメですよね、エンジン部分にも被弾してますから無理ですよね~恐らくパーツ代くらいにしかならないと思いますよ」


 マノックの質問にキースは答える。


「一応中もざっと見ておくか」


 マノックはそう言うと、陸戦艇に繋がるタラップを渡って行く。


 どうやら小型の貨客艇らしく船体には王都のマークが入っている。つまりは王都所属の貨客艇という事らしかった。


 マノック達が甲板に立つと、「ダンッ」という音が響き、その足元に銃弾が突き刺さる。


「キース、ブリッジからだ!」


 マノックは甲板上の構造物に身を隠し、短機関銃を構える。


 ブリッジの操舵室からボルトアクションのライフルを撃っているようで、3秒ごとにオークが顔をだして射撃する。彼の装弾スピードが3秒なのであろう。


 マノックはそれを見極めると、オークが射撃してきっちり3秒後に誰もいないブリッジに射撃する。

 するとオークが丁度射撃しようと顔を出したところに、マノックの放った短機関銃の銃弾が1連射分着弾した。

 オークの顔面に無数の穴が開き、そのまま操舵室内に崩れ落ちた。


「キース油断するなよ、まだいるかもしれねぇぞ」


 マノックは銃を構えたまま歩き出す。

 そしてそのままブリッジ内へと侵入し、操舵室へと階段を上って行く。

 

 操舵室の扉の前まで来ると、キースが扉を開けて中の様子を伺う。しかし反応はない。そこでキースとマノックは一気に操舵室へと突入する。

 

「どうやらこの部屋にはこいつだけみたいだな」


 そう言いながらマノックは、さきほど倒したオークの生死を蹴って確認している。


 2時間弱かかって艇内はすべて探索したのだが、結局初めに接敵したオークだけで、他には誰もいなかった。

しかし貨客艇だったため客室がいくつかあり、その部屋から女性ものの衣類を入手できたので、それを持ち帰る。もちろん捕まっていた女性たちに着せるためだ。

 残念ながら貴重品は一切見つからず、マノックのほしがる酒類も一切なかった。



 マノックとキースは大量の女性衣類を抱えながら“俺の陸戦艇Ⅰ”へと戻っていった。


 2人が戻ってくると、真っ先にレラーニがマノックに駆け寄り声を荒げる。


「マノッキュ! 大変だ、大変な事実を知ってしまったぞ!」


「いいから落ち着けって、落ち着いてから話せよ」


 興奮した様子のレラーニの両肩に手を置いて、マノックは興奮を落ち着かせようとする。


「あ、ああすまない。はぁ~――よし。あの女性の中の一人に王族の親族がいたんだ」


 レラーニは自分を落ち着かそうと深呼吸をしてから重大発言をする。


「はぁ? どういうことだ、それは」


 マノックはすぐに理解できずにもう一度聞き直す。


「だ~か~ら~、あの女性達の中の1人に王族がいるんだ。本人自ら言ってきて、証拠の紋章入りの指輪も見せてくれ……ちょ、マノッキュよ、顔が、近い……」


 レラーニは照れた様子でマノックから視線を外す。


「あ、す、すまん。でもなんでこんなところに王族の人間がいるんだよ」


 マノックは慌ててレラーニの肩から手を放す。


「さすがにそこまでは聞いてないが、っていうか聞きづらいだろう、この状況では」


「まあ、そうだよな。とりあえず女性ものの服を見つけてきたから、これ」


 マノックとキーズは持ってきた大量の女性ものの服をレラーニに渡す。


「お、お、ま、待て、そんなに持てないだろ。そんなにのせるな!」


 レラーニの制止など無視して、キースはどんどん衣類をレラーニにのせていく。


 レラーニは大量の衣類をフラフラとした足取りで、裸同然の女性達の元へと届けるのだった。





 しばらくして薄汚れた格好だった女性達が、お洒落な服装をした若い淑女達となって現れた。

 しかし服装とは裏腹に、精神的に相当なダメージを相当負っているのだろう。彼女達は皆常に怯えている様子であった。


 その中の1人、王族と名乗り出た女性がマノックの前へと歩み出て口を開く。


「あなたが責任者のマノック殿でしょうか」


「ああ、そうだ。大変だったみたいだな。これから俺達は王都へ行かなきゃいけねえんだ。なんでよ、皆もまずは王都へ行ってもらうぞ。そこで番兵なり衛兵に話をするなりしてくれ。そこからは俺達は関知しないがそれでいいか。それから盗賊のゴブリン達を捕らえているんで、そいつらも王都で引き渡すつもりだ」


「はい、何とお礼を言っていいものか。本当にありがとうございます。あ、申し遅れました、私はロレッタ・バッテンダールと言います。王族とはいえ遠戚えんせきですので、その辺はお気になさらずに」


「しかし王家の紋章の指輪なんか隠し持ってたんだな」


「はい、これが奪われたら大変なことになりますので、必死で隠し通しました」


「そうか、まあ王都に着くまでまだ時間があるんで、小さい艇だが体を休めてくれ」


「はい、お心遣い有り難うございます。王都に戻りましたら必ずやお礼は致します」


「ああ、いいよいいよお礼なんざ。盗賊から陸戦艇回収できたんでね」


「欲のないお方なんですね……」



 こうしてマノック達は改めて王都へ向けて、盗賊の根城から出航する。

 




次回投稿は14日の予定です。



今後ともよろしくお願いいたします。




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