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俺の陸戦艇物語~武器ヲタおっさんの冒険譚~  作者: 犬尾剣聖


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40話 地竜はゴブリン艇に興奮する




 時々近くにいた魔物の群れなどにも教われたりもしたのだが、ワームの様な巨大魔物ではなかったので、特に苦労することもなくすべて退けた。

 つまり着々とサルベージ作業は進んでいたのだった。


 丸一日作業して夕暮れ時になると、その砂で埋もれた陸戦艇の半分ほどが見えてきた。ミルが召喚した魔物もその頃になると4匹に増えている。この魔物がいなかったらこれほどまで作業は進んでいなかったであろう。


 そんな作業を“俺の陸戦艇”の甲板上から見つめながら会話する2人がいた。


「思った以上にでけぇ陸戦艇だな。ちょっと型が古いのはしょうがねぇけど、売れそうなパーツがあるといいんだけどな」


「うむ、私は装甲多脚機サンドウォーカーに興味あるがな」


 甲板からサルベージを見学しているのはマノックとエルフのレラーニの2人だった。


「ちげえねぇ。俺も装甲多脚機サンドウォーカーには興味津々だよ。でもな普通に買いたくても買えねぇしな。それがまさかこんなところで見つかるとはな」


 マノックが言う様に、装甲多脚機サンドウォーカーは普通は手に入らない。というのも、まずは値段が高い。そのうえ製造数が少ない、というか製造できる人が少ないのだ。西方のドワーフが開発したのが10年以上も前、現在では数々のコピー品も出回ってはいるのだが、性能には雲泥の差があった。元々はゴブリンが使役するイエロースパイダーを見たドワーフが、その対抗手段として開発したのが始まりだとか。


「そろそろ日が暮れるな、今日の作業は終わりにしよう。夕食にしようぜ」


「私が皆に伝えてこよう」


「あ、すまねえな」


 レラーニがブリッジへと上って行く。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 その後ミルが召喚した魔物達は、陸戦艇の周りに配置して夜番をさせる様だ。

 作業をしていた乗組員は“俺の陸戦艇”へと戻り、疲れた体を癒し始める。あるものはシャワーを浴び、あるものは酒を飲み、それぞれがくつろいでいた。

 偵察に出ていた小型偵察艇も無事に2隻とも帰還し、何事もなく平和に終わるのかと誰もが考えた。

 しかし、その報告内容は平和に終わる内容ではなかった。



「はい、その辺りの位置でした。場合によっては接敵するかもしれません」


 偵察に出ていた偵察員の言葉だ。

 会議室に緊急招集された幹部たちが集まる中、偵察員が地図を指さして説明する。


「我々が発見したのは1隻だけですが、ゴブリン旗を掲げたデストロイヤー級がゆっくりと航行してました」


 それを聞いたレフが渋い表情で発言する。


「ちょっといいですか、おそらくなんですけどね。夜はこの魔力溜まりに入ってこないですよね。来るとしたら夜が明けてだと思うんですよね」


「ああ、俺もそう思う。だがなデストロイヤー級は厄介だな。もしかして俺達を追ってきたのかなやっぱり」


 レフの意見に賛同するマノックなのだが、ゴブリンの艇を襲ったことが報告されて、その追手がきたのではないかと言うのだ。


 そのマノックの意見に航法長のパットが口を開く。


「サルベージ最中に接敵は避けた方がいいんじゃないですかね。下手したらお宝が木っ端微塵ですぜ」


「そうなんだよな、そうなると奇襲するしかなくなるんだがどう思う、レラーニ」


 マノックは意味ありげにレラーニへと話を振る。


「そうだな、私は夜明け前に奇襲することを提案する。私にそれを任せてくれれば大暴れしてくるぞ」


「そうだよな、やっぱりそうか、奇襲するしかないか。他に意見はないか?」


 マノックは他の乗組員を見回すが、特に意見は出なかった。

 初めから奇襲するつもりでマノックはレラーニへと話を振ったのだ。レラーニなら奇襲することに間違いなく賛成すると思ったからだ。なんとなく皆もそれを察知していたのだが。


「よし、それでは夜明け前にデストロイヤー級の敵陸戦艇に奇襲を仕掛けることにする。イエロースパイダーは2匹共に出撃させる。それから小型偵察艇1隻とサンドスクートも全機主撃する。“俺の陸戦艇”はこの場で待機。奇襲はあくまでも撃沈が目的ではなく、足止めが目的とする。詳しくはこの後関係者で集まって作戦会議をする。以上」


 その後、出撃する隊員たちが集まって作戦会議を行い、夜明け間際の約2時間の暗闇を利用して奇襲をかけることになった。

 目的は時間稼ぎである。そのためには敵陸戦艇の進路変更をするための風の噴出口付近にある、方向陀の破壊もしくは損傷させる。そうなると敵陸戦艇は修理に時間要する。

 そしてその隙にサルベージを終えて脱出するとい筋書だ。


 こうして急ピッチで作戦準備をを終えると、魔物がうようよとする砂海をデストロイヤー級陸戦艇目指して出撃する。


 小型偵察艇には敵の陸戦艇までの先導をしてもらうことになり、その周りを取り囲むように護衛しながら重装備のイエロースパイダーと砂上バイク(サンドスクート)が砂海を進む。


 イエロースパイダーには騎乗用の戦闘室と呼ばれる箱が乗せられており、その2人用の戦闘室に入って1人が騎乗操作、もう一人が武器及び偵察を行う役目となっている。       

 イエロースパイダー自体は被弾に特別強い皮膚をしている訳でなないので、その素早い動きで被弾しないように動き回る、ヒット&アウェイ戦法が主な戦い方だ。

 武装は4連装81㎜“スピガットモーター”に機関銃1丁と、対陸戦艇用の中装備だ。

 イエロースパイダーの戦闘室には2人のゴブリンが騎乗して、イエロースパイダーの操作と武器の操作に偵察もこなす。


 一方砂上バイク(サンドスクート)の3台には、レラーニ、ミル、そしてマノックがそれぞれ乗っていた。マノックはいつものように俺の陸戦艇をレフに任せて出撃してきたのだ。


 何度か魔物に遭遇もしたのだが、この奇襲部隊は軽快性が取り柄なため、魔物に接敵させることなく、すべて回避して進んで行く。

 そしてデストロイヤー級の敵陸戦艇がいると予想される警戒地域へと侵入する。

 まずは砂上バイク(サンドスクート)の3台が散開して偵察することになった。しかし散開して数分で、すぐに目標の敵陸戦艇は見つかる事となる。


 マノックが集合地点に戻ると、停泊している敵陸戦艇をレラーニが発見したと報告がある。


「停泊してるのか。無警戒すぎるだろ、さすがゴブリン軍だな」


 マノックはあきれ顔で言うのだが、これで作戦はしやすくなったと少し安心する。


「よし、夜明け前の暗黒帯まで待機だ」


 日が沈むを月が砂海を明るく照らすのだが、その月が沈むと真の暗闇が訪れる。約2時間ほどすると日が昇り、再び明るい時間帯がやって来る。この真の暗闇は2時間ほど続き“暗黒帯”と呼ばれる。夜行性の魔物達がもっとも活発に活動する時間帯でもある。

 この暗黒帯を利用して、暗闇に紛れて奇襲をかける作戦だ。


 この辺りは魔力溜まりからは少し離れているため、魔物の出現はそれほどでもないのだが一応は警戒しながらの待機だ。

 暗黒帯までひたすら遠くの岩陰からデストロイヤー艇を睨む。

 マノックは砂上バイク(サンドスクート)の後部に積んでいる荷物を点検している。

 マノックの砂上バイク(サンドスクート)にはスピガットモーターのような武装はない。その代わりに急造の爆薬が積まれている。以前に角トカゲ騒動の時の轟炎の機雷を使った爆薬のようだ。機雷には多数の柄付棒状手榴弾が縛り付けてあり、爆発効果を上げようという考えらしい。


 そして遂に暗黒帯の時間が訪れ始める。月が沈みかけているのだ。


「よおし! 出撃するぞ!」


 マノックの合図とともに、砂上バイク(サンドスクート)3台とイエロースパイダーの2匹が動き出す。


 月が沈むと真の暗闇となるので、ライトがないと運転さえ難しい。なので完全な暗闇前に敵艇にたどり着かないといけない。

 警戒しながらも迅速に接近しいていく。

 デストロイヤー級艇は暗闇に備えて、サーチライトの準備で甲板上は忙しそうだ。

 発見される覚悟で接近する。

 そして完全な暗黒帯が訪れ、辺りは暗闇で視界が効かなくなる。


 デストロイヤー級艇から漏れる室内灯を頼りに、時折砂海を照らすサーチライトを避けながら部隊は接近する。

 そして部隊はなんなく無事接近するとことに成功する。

 マノックはざっと見回してから、風の噴出口付近にある方向陀に急造の爆薬を仕掛けるため、船尾へと向かう。そして出来るだけ音がしない様に、身を潜めて作業に取り掛かる。

 マノックが爆薬を仕掛けている間にも、ミルは召喚魔法の準備をしている。レラーニとイエロースパイダーは、少し離れたところから見つかった場合に備えて、煙幕弾の準備といつでも攻撃ができるようにと警戒をしてくれている。もちろんサーチライトを避けつつだ。

 しかし思った以上に爆薬を仕掛けるのに手間取ってしまっている。それは爆薬を仕掛けようとしている場所はどこも、近くを夜番が歩き回っており、隠れながらの作業となってしまい、なかなか作業が進まないのだ。

 なんとか見つからずに設置し終わったのだが、時間は1時間以上かかってしまっていた。


 マノックは設置道具をしまい込むと砂上バイク(サンドスクート)に跨り、敵船から気が付かれない様にゆっくりと遠ざかる。


 マノックが「これは上手くいきそうだな」と考えながら砂上バイク(サンドスクート)を走らせている矢先、突如目の前に赤い眼の何かが横切る。

 マノックは慌ててハンドルを切るのだが、時すでに遅く「ピギャァァァァァ!!」という叫び声を上げて、その赤い眼の何かが衝撃と共にマノックの砂上バイク(サンドスクート)に跳ね飛ばされる。


「しまった! やってもうた!」


 マノックが思わず叫ぶ。

 そして何かを跳ねた衝撃で、砂上バイク(サンドスクート)が横転しそうになるのを必至で立て直す。しかし慌てているためか思わずライト点灯のスイッチを押してしまう。パッと前方が明るくなり、照らしだされたのは“パラカピ”という夜行性の小型魔物だった。


「よりによってこんなところに……」


 マノックが停止してぼやくのだが、そこへ敵船のサーチライトが集中した。


「やっべ!」


 マノックはフルスロットルで脱出にかかる。


 デストロイヤー級の敵船では非常警鐘が鳴り響く。


 その鐘の音がまるで合図かのように、イエロースパイダー搭載のスピガットモーターが一斉射撃を始めた。

 つづいてレラーニの砂上バイク(サンドスクート)後部に積まれていた、60㎜のスピガットモーターも全弾発射する。

 暗闇の中スピガットモーターの発射閃光がパッと一瞬見え、青白い薄い軌跡を描きながら全部で8発の81㎜弾と4発の60㎜弾が飛んでいく。


 至近距離からの発射とあって、81㎜弾は8発中6発が命中と悪くない。敵船の各所では81㎜弾の弾着で敵船が明るく照らされる。

 少し遅れてレラーニの60㎜弾は全弾ブリッジへと吸い込まれて、派手な爆発音を響かせる。


 予想しない攻撃に敵船はパニックに陥っているらしく、叫び声があちこちで響く。

 そんな中でも機関銃塔からは、サーチライトで照らされているマノックの砂上バイク(サンドスクート)を攻撃してくる。


 もう一つの機関銃塔はなぜか撃ってこない。もしかしたらスピガットモーターの攻撃が命中したのかもしれない。


 さらにダメ押しの様にミルが魔物を召喚した。

 それは暗闇でよく見えないのだが、砂海を這うように移動してるようだ。

 その頃になると敵船ではいくつか火災が生じる。

 その火災は近づきつつある魔物を照らし出した。


 地竜だ。


 ゆっくりと砂海を踏みしめながら、ゴブリンの陸戦艇へと進んで行く。時折口から紫色の舌をぺろりと出すその表情は、まるで餌を目の前にした駄犬のようだ。


 炎で照らし出された地竜を確認したのか、機関銃塔がマノックから地竜に標的を切り替える。


 激しい銃撃が地竜を襲うのだが、15mはあろうかというその巨大な身体には、全く効いていないようだ。


 もう少しで地竜が敵船に接触する、というところで敵陸戦艇はたまらず動き出すのだった。






次回投稿は23日土曜日の予定です。


今後ともよろしくお願いします。


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