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23話 スライムは笑うのか

 大分お待たせいたしました。


 長くなったので分割しました。


 分割した分は本日連続投稿します。


 読む順番間違えない様にお願いします。





なんとか走行できるようになったとはいえ、エンジン出力は60%が限界の状態だと、このまま集合地点へ向かっても奇襲予定時間までには間に合いそうになかった。だからと言って、このまま帰還するようなみっともない真似はできないと、なんとか当初予定していた集合地点までたどり着いたマノック達であった。

 

 広範囲にあちこちと巨大な石が鎮座しているこの場所は、多数の艦船が集合しても目立たない地であって、集合場所としては抜群のロケーションとなる。そこへだいぶ遅れてしまってはいるが、本体に追いついたことを期待して巨石の散在する場所へと俺の陸戦艇を侵入させていった。


 しかし、侵入していって予想とは違う光景に目を奪われるマノック達だった。


 そこには多数の陸戦艇の残骸と、イエロースパイダーなどの魔物の死骸であふれていたのだった。


「どういうこった、この残骸と死骸の山は」


 マノックが呆れた様子でつぶやく。


「敵も迂回しようとしたんでしょうかね、それでこの地点で接敵したってことでしょうかね」


 航砂海士のレフが惨状を見回しつつ、現状から想像できる説明をしてくれる。


「そういうことか。微速前進、生存者を探すぞ、ゆっくりだ、ゆっくり進め」


生存者を救出して事情を聞こうと、注意深く陸戦艇を進めて行く。


「2時方向に動くもの発見です。岩山の陰に何かいます!」


 ミルが何かを見つけたようで、その指摘された岩山を乗組員はジッと見つめる。


「ああ、確かに怪しい、ちょっと動いたような感じだよな。何か隠れて居やがるらしいから全員戦闘配置だ。マックス、榴弾装填していつでも撃てるようにしておけよ」


「了解、榴弾装填します」


「パット、気が付いてないふりでそのまま微速前進をしろ。だけど急旋回もあるかもしれないんで準備しておけよ」


「了解、そのまま微速前進します」


「ミル、何か動きがあったらすぐ知らせてくれ」


「はい、わかりました」


 ミルは見張り台の上で望遠鏡を覗いたまま返事をする。今は獣人である証の尻尾は服の外に出しているので、返事とともに尻尾がヒョコッと動く。

 それを見たマノックは笑みを浮かべながら、船尾の15㎜重機関銃の狭い砲座に入り込んだ。


「レフ、両弦のカタパルトランチャーに煙幕弾を装填しておいてくれ」


 15㎜重機関銃のレバーを引いて、初弾の準備をしながらもレフに支持をする。


「はいよ、煙幕弾装填するよ」


「ミル、距離はどれくらいだ?」


「そうですね――距離2000ってところです」


「そうか、射程距離ではあるな。パット、これ以上はあれ(・・)に近づかないようにしてくれ」


「了解、あの岩山を回るような感じで走行ってことでいいですか」


「ああ、そうしてくれ」


『俺の陸戦艇』が、ちょうど船尾を向けた頃合いを見はかった様に、岩山の陰に隠れていた陸戦艇が踊りだしてきた。


「マノックさん! 岩陰から陸戦艇が出てきました、大きいです!」


 ミルが興奮した様子でマノックに告げる。


 それに続き、船首37㎜砲塔に入っていたマックスが声を上げる。


「マノック艇長、11時方に船影です! 岩陰から出てきます!」


「くそ、待ち伏せか! しかも挟まれたか!」


 おびき出すはずが前後から挟まれる形となってしまい、乗組員達が動揺し始める。


「9時方向の岩陰に逃げ込むぞ! キース、エンジン出力上げ! エンジンが壊れないギリギリで行くぞ! それからパット、俺の合図で回避しろ!」


「「了解!」」


 俺の陸戦艇は9時方向にある岩陰に入る為に、船体にいやな軋み音を響かせながら急旋回をし始める。


 俺の陸戦艇が丁度9時方向へと方向転換をしたところで、後方の岩陰にいた陸戦艇の船首砲塔から閃光が見えた。


「回避!」


 船尾15㎜砲塔から体を乗り出して、双眼鏡を覗きながらマノックが閃光に合わせて回避を支持する。


「了解! つかまっててください!」


 パッドがマノックの回避の言葉と同時に舵を切った。


 船体が大きく傾いて、横滑りを起こす。

 

 ちょうど船体が移動した後に砲撃が砂海に着弾して、辺りに砂塵が舞い上げる。

 至近弾であり、回避しなければ命中していた可能性が高い。


「レフ、煙幕弾を全弾続けて射出しろ!」


「はいよ、全弾射出するよ!」


ボンッ!

ボンッ!

ボンッ!


 左舷カタパルトランチャーから煙幕弾が3発射出されると、その3発は砂海に着弾する前に空中で爆発して、その爆発の威力で煙幕を一気に放出する。


 その3発だけでも小型陸戦艇ならば、十分に隠れられるのだが、さらに右舷のカタパルトランチャーからも、3発の煙幕弾が射出された。


 すると辺りは広範囲で真っ暗となり、視界はほとんど得られない状況となった。しかも岩山が多数あるこの場所では、視界不良のまま動き回れば、その巨大岩山に激突の可能性もあって、お互いに動きが取れない状態となるのだった。


「よし、これで時間を稼げる。あとは奴らの出方次第だがな。エンジン出力落とせ。ゆっくり進め、ゆっくりだぞ。マックス、船首から前を確認してくれ」


「了解です、だけど全然見えませんけどね」


「俺はミルと砂上バイク(サンドスクート)で出る。レフ、後の指揮は任せるぞ。煙幕は途切れない様に頼む」


砂上バイク(サンドスクート)なんかで何をするのかね?」


 レフがマノックに疑問を投げかけるのだが、それに対してマノックは不敵な笑みを浮かべながら親指を立てて告げるのだった。


「ミルの力を借りる、どのみちこのエンジンじゃ逃げきれねえからな。まあ、見てろって」


 砂上バイク(サンドスクート)を砂海へと下ろし、何が何だか分からないといった様子のミルを後部座席に乗せると、マノックは煙幕で全く視界が取れない中を走っていく。


「よし、視界が開けてきたな。作戦を説明しておくぞ」


「作戦、ですか?」


 煙幕が広まっていないところまで出ると、砂上バイク(サンドスクート)の速度を上げて行き、後部座席でマノックに嬉しそうにしがみつくミルは、首を傾げながらもマノックの作戦とやらの説明を聞くのであった。


「――分かりました。任せてください」


 説明を聞き終わるとミルは、真剣な赴きで右手をポケットに手を入れて、小さく頷くのだった。



 砂上バイク(サンドスクート)は視界が開けた後、その軽快さを活かして一気に迂回すると、煙幕の手前で時折威嚇射撃ををする敵陸戦艇の左舷側、距離にして500位のところにでる。


「よし、ドンピシャだな。音を絞ってゆっくり近づくぞ、ミル、準備しておけよ」


「はい、いつでも行けます!」


 ミルは右手をポケットに入れたまま決意を言葉に表す。


 砂上バイク(サンドスクート)が敵陸戦艇のほぼ真横まで接近する。

 そこまでくるとさすがに甲板上の会話までが聞こえてくるのだが、聞こえて来た言葉をマノックとミルは理解できなかった。「ギギャア、ギギググ」などとしか聞こえず、間違いなくゴブリンの言葉であったからだ。


「よし、ミルあとは任せたぞ」


「はい、いきます!」


 マノックの合図にミルは、右手を入れていたポケットから紙を取り出して、それを掲げると魔力を注ぎ込み、程なくして青白く光りそして燃え尽きた。すると、ゴブリンどもが乗る陸戦艇よりも高い位置で空間に裂け目ができ、そこから1体の魔物がボトリッと甲板上に崩れ落ちた。


 一瞬何が起きたか理解できないゴブリン達は、誰もが作業を止めて、その落ちて来たものに視線が集まった。


 ゴブリン達に見つめられる中、その落ちて来た漆黒の液体のような物体は、ゆっくりと一か所に集まると、水溜まりの様な形成をしたまま、ゴブリン達のいる方へと移動を始める。


 1人のゴブリンが何だろうと近づいた途端、その水溜まりは激しい波のような動きで、一気にそのゴブリンを漆黒の液体で包んでしまった、いや捕食したという表現が正しいのだろう。そこでやっとゴブリン達は気が付いた、それが『ダークスライム』という名の上級魔物であることを。


 そうなると陸戦艇の甲板上では、ゴブリンの悲鳴や怒号が交差する大混乱状態となり、もはや操船どころの騒ぎではなくなっていた。距離が離れていれば、陸戦艇の武器で対応可能であるのだが、陸戦艇の甲板上に出現されたら大抵は対応できる武器などは供えられているはずもなく、せいぜいが小火器があるくらいだ。しかしこうも混乱状態であるならばそんな抵抗もできないであろうとマノックは考えた。


「ミル、この陸戦艇の戦力は削いだ、もう一隻に行くぞ」


 マノックはさらにもう一隻、前方にいた陸戦艇へと迂回していくのだった。


 その間にもダークスライムは1匹、また1匹とゴブリンを貪るように食していく。その光景を見たあるゴブリンは、表情のないはずのスライムが笑っている様に見えたと恐怖した。





読んで頂き有り難うございました。


本日中にアップしますがまだチェック段階ですのでお待ちください。



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