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150話 逃げるゴブリンに哀愁を見た

やっと書き上げました!







 双眼鏡を覗くマノックがつぶやく。


「しかたねえ。ロリっ子、あの弾を使うぞ」


「へっ? なんの弾よっ」


「なんだ、聞いてねえのか? ランドトータスの牙から削り出した砲弾。硬芯徹甲榴弾だよ」


「そんなの持ってきてたのっ、ってゆうかそんなの作ってたのっ? 全然聞いてないからっ」


「ランドトータスみたいな貴重な魔物素材をな、1ッ回こっきりの砲弾で使っちまうのはもったいないって反対されたんだけどよ、なんとか頼み込んで工房にこっそり作らせたんだよ。でも手間暇かかるからたくさんは作れなかったんでよ、無駄撃ちはできねえから慎重に狙えよ」


「わかったわよっ。なるべく当てる様にするからっ。その代わり出来るだけ敵に近づきなさいよっ」


 クルーザー級の船体装甲に俺の突撃艇!の76㎜砲では役不足だ。命中させたところで跳ね返されてしまうのが落ちである。超至近距離ならば当たりどころによっては貫徹できるかもしらないのだが、期待は出来ない。


 しかしランドトータスの硬い牙から削り出された砲弾であれば、この76㎜砲でも貫徹できる可能性は非常に大きい。

 通常の砲弾の材質よりも硬く、さらに魔物から作られた弾とあって呪符との相性も良い。

 唯一の欠点はというと、貴重な材質を使い捨ての砲弾にしてしまうのは余りにも無駄であり、しかも硬い素材な為に工作に非常に時間が掛かるということだ。。というよりも、そんなもったいない使用方法をする者はマノックくらいしかいない。


 しかしシェリーにはそれが解らないらしく、その貴重な砲弾をマノックから受け取ると何のためらいもなく装填する。

 通常の砲弾の数十倍はするであろうトータス弾である。


 それを確認したマノックは速度を上げさせて接近を試みる。


 しかしさすが戦闘部族のオークである。


 そう易々と接近させてはくれない。

 2隻の敵ライトクルーザーから射撃が始まった。


 見張り台に立つゴブリンのブエラが双眼鏡を覗きながら叫ぶ。


「マノック伯爵っ、斉射がきます!」


 その言葉の少し置いた後、恐らく14cmクラスであろう砲弾がマノックの艦隊スコードロンを襲う。


 爆発で舞い上がった砂が雨の様に俺の突撃艇!の甲板に降り注ぐ。

 その砂を浴びる乗組員も慣れたもので、すでにゴーグルをかけてしのいでいる。


 中々射程距離までたどり着けずに、イライラし始めたシェリーが言葉を漏らす。


「ったくもうっ。もっと速度だせないのっ。この距離じゃ届かないわよっ」


 現在この俺の突撃艇!に搭載されているエンジンは高性能であり、ガンボート級の中でもトップクラスの速さであるが、それでもマノック達の陸戦艇に搭載されている砲の射程内には、まだオークのライトクルーザーは捉えることが出来ないでいた。


 もともといた敵コルベットの2隻は、マノック艦隊スコードロンの後方へ回ろうと大きく進路を変える。


 2隻の敵コルベットを追うとライトクルーザーに後ろを取られてしまう。かと言ってこのままではいずれコルベットに後ろに回り込まれてしまう。


 マノックは決断する。


「このまま城壁の門へ突入するぞ。敵もまさか俺達が城壁内へ突入するとは思ってないだろうからな。行っけぇぇぇぇええっ!」


 舵を握る獣人兵のシルテが一瞬驚いた表情を見せるのだが、直ぐにニヤリとすると親指を立てて見せる。


「マノック伯爵、了解です!」


 しかし城壁の門からは続々と新たな陸戦艇が出航しようとしている。

 比較的出航準備が簡単なガンボート級などは、1隻、また1隻とパラパラと出航しているのが見える。


 そこへ突入しようというのだ。


 しかし敵は出航するために城壁門は開いたままである。


 ある意味チャンスと言えばチャンスなのかもしれない。あとはゴブリンの魔物部隊が暴れてくれればそのチャンスの可能性はもっと上がるであろう。


 そんな時、俺の突撃艇!の後方で激しい爆発音が鳴り響く。


 慌ててマノックは後方に目を向ける。


 すると単縦陣隊形で航行していた味方2番艇が、ブリッジ根本あたりから激しい煙を上げている。よくよく見るとそこには大穴が空いており、甲板もぐにゃりとめくれあがってしまっている。

 敵の主砲が命中したらしい。


 その1発の命中で味方ゴブリンのコルベット級が、速度を落として戦列から離れてく。


 マノックはその脱落していくゴブリン艇を見ながら「すまねえ」と小さな声でつぶやくと、その艇は見捨てる決断をして再び前を見て、鋭い眼光でオークのクルーザーを睨む。


 その脱落したコルベット級は、あとから後方を追いかけて来るオークのコルベット級の集中砲火を浴びることになる。


 敵に近づけば近づくほど着弾も接近してくる。

 俺の突撃艇!も小さいがゆえに命中こそはないが、衝撃により船体は激しく揺さぶられ、破片が船体に多数突き刺さる。


 その破片の1つがマノックの左腕に突き刺さる。ちょうど革鎧の無い所である。


 しかしマノックは表情ひとつ崩さずに、その破片を右手で引き抜いて甲板に投げ捨てる。

 傷口からは血が滴り落ちて甲板を汚すのだが、直ぐに次の着弾で舞い上がった砂がそれをかき消す。


 それを横目で見たシェリーはつぶやく。


「痛いって感情忘れちゃったのっ? あんたもやっぱり魔物だったみたいだわねっ……」


 見張り台のブエラが再び叫び出す。


「マノック伯爵、3番艇に着弾です!」


「くそっ、またか。オークめ、良い腕をしてやがる」


「まずいです! 3番艇、着弾場所の右舷船体から炎を吐いています」


 ブエラの報告の数秒後、その炎を吐いていたコルベットは大音響で爆沈してしまった。

 その爆発はすさまじく、その前後を航行していたゴブリン艇にも破片が降り注いだ。


 するとそのゴブリン艇の爆沈を機に、突如、残りのゴブリン艇が転舵を始める。


 1隻、また1隻と戦列を離れ始めるゴブリンのコルベット。

 形勢不利と判断したのか、ゴブリン艇は逃走に入ったのである。


 マノックは苦渋の表情で言葉を漏らす。


「嫌な予感はしたんだがな。やっぱりそうなるか。逃げる姿が可哀そうにも思えてくるから変だな」


 マノックの言葉に対してゴブリン兵であるブエラが小さな声で返す。


「同族がすいません……」


 人間の世界で育ったとはいえゴブリン種であるブエラは、申し訳なさそうな表情をする。


 そうなると俺の突撃艇!単艇での突撃で他ならない。


 いや、それでもまだイエロースパイダーや角トカゲの魔物ライダー部隊は奮闘しているだけ良い。


 ただ、こうなるとマノックは正面から迫るライトクルーザー1隻と、後方から追って来るコルベット2隻を相手しなければならない。


 しかもそれ以外に数隻の小型艇が出撃してきている。

 さすがに焦りの表情を見せるマノック。


 そんな最中、城壁門から何やらでかい陸戦艇が出航してくるのが見える。肉眼でもわかるほどでかい陸戦艇だ。


 その姿を双眼鏡で覗きながら報告するブエラだが、その言葉は震えている。


「マノック伯爵、やばいです。バ、バトルシップです!」


「まじかよ。遂に出ちまいやがったか」


 シェリーは初めてバトルシップ級に遭遇したようで、目を丸くして言葉がでない。


 そこへ舵を握るシルテが声を上げる。


「マノック伯爵、どうしますか? やはりこのまま突撃するんですか……」


 歴戦の兵士であるシルテでさえも声に張りがない。心が折れかかっている証拠である。


 しばし沈黙の後、マノックが言葉を発した。


「くそっ、しょうがねえ。悔しいが――」


 そう言いかけた時だった。


 迫りつつあるオークのライトクルーザーに多数の砲弾が降り注いだ。


 その内の1発が第一砲塔に命中して砲塔を丸ごと砂海へと吹き飛ばした。


 マノックが叫ぶ。


「なんだ?! どうなってんだ!」


 マノックが周りをキョロキョロと見回す。そしてある一点で視線が止まる。


 その視線の先は遙か後方に見えるいくつもの船影だった。


 その船影から発砲炎がチカチカと見えて数秒後に、再びライトクルーザーに直撃弾を浴びせる。


 状況が把握できないマノックがブエラに疑問を投げかける。


「ブエラ、何が見えるんだ?! 説明しろ」


 説明しろと言われてブエラは焦りながらも状況の説明に入る。


「船影複数。その中で射撃しているのは2艇のみのようです。この射程距離となると28cm砲以上だと思われます。識別旗はこの距離だと確認できませんが、明らかにオーク艇を狙っていると思われます。少なくとも敵ではないんじゃないでしょうか」


「ここはオーク支配地域だぞ。敵じゃないってんならなんなんだよ。仲間割れか? ますます解からねえじゃねえか」


 そんな事を言ってる間にもライトクルーザーに向けた砲撃は続くのだった。













女子会2










レラーニ:「みんなの初恋の相手ってどんな人だった?」


シェリー:「そうねっ、私は社交界で出会った伯爵家の次男坊だったわねっ。イケメンの上にダンスが上手だったのよっ」


ミル:「私は初めて私を“人”扱いしてくれたダンディーなおじ様です! 優しいし、すごい雷系の魔法を使う英雄さんです!」


シェリー:「それってマノック伯爵でしょっ? もういいからその話はっ。何回も聞いたわよっ」


ミル:「すいません……でもレイさんはですね――」


シェリー:「はいはいっ。レラーニはどうなのよっ。初恋っていうのはっ」


レラーニ:「そうだな。私は同級生で仲の良い奴がいてな。ある日突然そいつから告白されたんだ。それまでは全く意識してなかったんだがな、それ以来意識するようになってしまってな。それで付き合う事になったんだ」


シェリー:「それは良い話ねっ。でもよっ。レラーニって女子寄宿学校の出身じゃなかったかしらっ? 女子校よねっ?」


レラーニ:「そうだ。相手は同じ寄宿学校に通う同じ部屋のルームメイトだ」


シェリー:「ぐぬぬぬっ……えっとっ、そ、そうねっ。ソニアの初恋はどうだったのかしらっ?」


ソニア:「あらあら、まあまあ。私の初恋ですか? そうですわね、あれは小学生の頃だったかしら。学校の帰り道にイケメンの中学生と出会いましたの」


レベッカ:「ソニア姉さま。あの時の話ですわね?」


ソニア:「そうそう、確かレベッカと一緒の帰り道でしたわね」


レベッカ:「あの時のソニア姉さまは凄かったですわね。指をくわえてその男性中学生を見つめていましたのよ。あれは一目ぼれですわね」


ソニア:「そうそう、レベッカもよく覚えていますわね」


レベッカ:「確かあのあと直ぐにですわね。2人掛かりで路地裏に引きずり込んだんですわよね?」


ソニア:「そうそう、あれがわたくしの初恋でしたわね。ああ、懐かしいほろ苦い思い出ですこと。おほほほほ」


一同:「……」









ということで不定期投稿が続きそうですが、引き続きよろしくお願いします。





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