122話 陸戦艇は儲からない
お待たせしました。
しばらくこんなペースになりそうです。
<(_ _)>
餌を使った作戦。
その方法とは、食い物と水を砂海に撒き、それに群がって来たデザートシャークを37㎜砲や15㎜重機関銃で殲滅するというものだ。
水は先の戦闘で船体に突き刺さった氷の塊がある。
この砂海では食い物よりも水に生き物は集まる。
氷を砂海へ放置しておけばあっという間に魔物が群がるはずだった。
言葉にすると簡単に感じるが、実際はそう簡単にはいかない。
一発打ち込めば魔物は散ってしまうか砂海へと潜ってしまう。最悪の場合は船底を砂海に着けている状態なため、船体をかじられる可能性もある。デザートシャークの牙であれば容易く船体を食い破る。
船底には現在45㎝低進弾が装着されている。それに喰いつかれたらおしまいだ。
「みんな、準備はいいか。餌と氷を投げ込むぞ」
そう言うとマノックは餌である魔物の燻製肉と氷を砂海へと投げ入れた。
すると徐々にその餌と氷にデザートシャークが群がって来る。
「ロリっ子、まだ撃つなよ。もっと引き付けてからだぞ」
「それはフリなのよねっ」
「アホかっ! ちげーから!」
そんなマノックとシェリーの漫才を遮るかのように、シルテ伍長からの報告が入る。
「マノック伯爵、数が多すぎます。20匹はいます! 危険です!」
「構わねえっ、ぶちかませ!」
マノックの合図で一斉に攻撃が始まった。
37㎜砲が発射され、15㎜重機関銃が辺りを掃射する。そして手榴弾がいくつもそこへ投げ込まれた。
手榴弾が炸裂すると手が空いている者もライフル銃などの小火器で攻撃を加える。
当初は攻撃を加えたら逃げると思われたデザートシャークだったのだが、その予想とは裏腹に牙を剥きだして襲って来たのだった。
「どうだ、今ので最後じゃねえか。もういなさそうだよな」
かなり激しい体当たりや牙により、ただでさえボロボロ状態だった俺の陸戦艇Ⅰ改は、さらにひどい有様となってしまっていた。しかしそれと引き換えに大量のデザートシャークの死骸が魔石と共に辺りに散乱している。
どうやらすべてのデザートシャークを撃退したようた。
緊張した様子のマノックがライフル銃を砂海へと向けているのだが、どうやらその必要もなくなったようであった。
「もう大丈夫みたいよっ、魔石回収よねっ」
シェリーが砂海へと降りようとするのだが、それをマノックは制止する。
「まて、魔石回収したいところだがな。その前に艇を修理しないといけねえ。このまま時間を置くと次の魔物が死骸に群がって来て修理できなくなっちまうだろ」
マノックが言う通りで陸戦艇の修理をするのには艇外から、つまり砂海からでないと修理ができない状態だった。それには魔物がいない今しかなかったからだ。
その後、シェリーが見張り台に立って魔物を警戒して、マノックを含めた全員で修理を開始した。
そのかいあってか夕暮れ前には応急処置は完了して、何とか航行できるまでにはなった。
魔石も少しは回収できたのだが、結局危険ということで諦めて出航することになる。少しでも早くちゃんとした港で修理しないと、急にエンジンが動かなくなる可能性もあったからだ。
「一応盗賊艇は動くんだろ、曳航できねえのか?」
盗賊艇に乗りこんで機関室を調べるフォンクにマノックが尋ねる。
「はい、曳航できそうですね。こっちを修理した方が早かったですよ」
そうやらパーツを交換すればそこそこ動きそうだという事で、いざとなったら盗賊艇で俺の陸戦艇Ⅰ改を曳航できるということだった。
「それじゃあここから離れるぞ、出発!」
こうして駆け足でこの地を離れるのだった。
「ねえ、マノック伯爵っ。あの盗賊艇を売ったらいくらになるのっ?」
シェリーがリゾートチェアでくつろぎながらマノックに尋ねると、その隣でやはり酒瓶片手にくつろぐマノックが面倒くさそうに答える。
「ああ、結構壊れてるから30万シエルってとこじゃねえのか」
「ふ~ん、砂人って結構儲かる商売なのねっ」
「ばーか、修理代と燃料代考えたらトントンに決まってんだろ。今回は魔石あるからマイナスにはならねえとは思うけどな」
「そうなのっ。期待して損したわっ」
「陸戦艇同士の戦闘だとな、被害を考えると儲からねえもんなんだよ。それで儲けるとしたら積み荷が高価なものであるか、人質をとって身代金を取るかだな。そんなんだから盗賊をやるのは割に合わねえ事の方が多いんだよ」
そんな話をしている最中、見張り台のシルテから報告が入る。先ほどのオークの盗賊艇と同じく不明陸戦艇だ。
「どうやら識別機は掲げて無いようですね。コルベット級の盗賊艇だと思われます」
「シルテ、こっちに気が付いていそうなのか?」
「いえ、砂嵐が近づいているので向こうからはこちらが確認できないと思われます」
「そうか、あそこの尖岩群島に入ってやり過ごすぞ。ブエラ、舵は頼むぞ」
「了解です、尖岩群島に船首向けます」
俺の陸戦艇Ⅰ改の後方からは砂嵐が迫っていた。といってもまだまだ距離はある。コルベットと砂嵐を避ける意味でも尖岩群島は持って来いの場所だった。
名前のごとく多数の尖った山の様な岩がある場所だ。
砂嵐を防ぐにはちょうどいい場所であり、小型陸戦艇が隠れる様な場所がたくさんあった。
ただし魔物達の隠れ家としても有名な場所であり、多くの種類がここに生息している。
「ブエラ、あそこの深くなった窪みに艇を入れろ。ぶつけんなよ」
「マノック伯爵、任せてくださいよ」
窪みを確認すると奥が結構深くまであり、100m以上はありそうだ。すっぽりと2隻分が収まってしまった。
その後マノックは双眼鏡と発光信号機を持って岩山に登り始める。
そして頂上付近に陣取る遠くに見える砂嵐の動向を見つつ、コルベット級の陸戦艇を監視する。
マノックは双眼鏡で陸戦艇を監視しながらひとりつぶやく。
「上手く通り過ぎてくれよ……」
しかしマノックの願いとは反対に、不明陸戦艇は尖岩群島に近づいて来る。
「なんでこっち来るんだよ……あ、またオークが乗ってやがる。盗賊艇確定じゃねえか。味方私掠艇という望みもこれで消えた、くそっ」
さらにマノックは反対側から迫る砂嵐に視線を移すとかなりの接近をしており、それを避ける機会はすでに逸している。
マノックの頭の中で目まぐるしく思考が展開する。
マノックは覗いていた双眼鏡から目を外すと、一呼吸した後に岩山を下りて行く。
降りて来たマノックに乗組員が集まり、その中でも真っ先にシェリーが口を開く。
「マノック伯爵っ、状況を教えて頂戴っ。砂嵐と艇籍不明の陸戦艇のよっ」
「それじゃあな、まず砂嵐からな。あと1時間もすればこの辺りがすっぽり砂嵐に覆われる。はい、次は陸戦艇情報な。1時間もすればこの尖岩群島に来る。あ、ちなみにあれオーク艇だったわ」
「なっ! 落ち着いてる場合じゃないでしょっ、どうするのよっ」
「そうだな。まず逃げるには遅すぎだ。それじゃあやり過ごすか。これもオーク艇がここへ向かってる時点で見つかる可能性が高い。砂嵐があるうちはいいが、弱まったら速攻見つかっちまうからな。それじゃあ次に戦うっていう選択。相手はコルベット級、こっちは壊れかけのガンボート級に俺の魔法、正面切って戦っても勝てる光景が目に浮かばねえ」
「そ、それじゃあどうしようっていうのよっ!」
「ああ、それで俺は岩山の上からここの地形を見ながら考えたよ。それで複合作戦にした。ま、これしか思いつかなかったんだがな」
ここで今まで黙っていたシルテ伍長が話に入って来た。
「マノック伯爵、詳しい作戦をお聞かせください」
「ああ、そうだな。簡単にいっちまえばやり過ごすのと待ち伏せ攻撃の複合作戦だよ。気が付かれなかったらここでやり過ごす。気が付かれたらしょうがねえから戦う」
それを聞いた途端にシェリーの表情が変わる。
「なによっ、そんなの作戦でもなんでもないじゃないっ」
それとは反対にシルテはニヤリと笑う。
「なるほど、それはいいですね。砂嵐も来ますしね。砂海の嵐作戦とでも名付けますか」
こうして砂海の嵐作戦は始まるのであった。
ロック兵器工房のロバート・タックでございます。
さて今回ご紹介する商品は……
砂海を颯爽と走り抜ける物体。
小型陸戦艇?
いや、それよりも圧倒的に小さい。
イエロースパイダー?
いいえ、それは機械で会って生き物ではありません。
そうです、砂上バイク(サンドスクート)です。
手軽に乗れて小回りが利く。それにもかかわらず7.7㎜機関銃が固定装備可能!
さらには各種スピガットモーターも装備可能ときたら、イエロースパイダーも目じゃありません。
かの鮮血の雀蜂の二つ名をもつロックランドの英雄の1人、レラーニ少佐も愛用しておりますこの機体。ヤンキキ製『YS900』
これに跨ればあなたも砂海の走り屋!
落ち込んだ時に乗ってスカッとするもよし。
近くの狩場までちょい乗りするもよし。
数を揃えて砂海で暴走するのもよし。
遊び方は無限に広まります。
ぜひ手に取ってお試しください。
今回はなんと、7.7㎜機関銃はサービスでお付けいたします。
もちろん工賃は一切頂きません。
さてそれで気になるお値段はというと……
税込みでなんと“79800シエル”!
しかも先着10名様に限りあの鮮血の雀蜂仕様のペイントサービス!
手数料、送料はすべてロック兵器工房がご負担します。
ただし申し訳ございませんが今回は50台限りとさせていただきます。
数に限りがありますのお急ぎください!
それではご注文お待ちしております!
ということで次回もよろしくお願いします。




