1話 巨大ワームは砂に没した
設定に変なところありましたらご愛敬ということでお願いします。
(おそらく説明できないと思われますので…)
ちょっと趣味全開で勢いだけで書いてみました。
どうぞよろしくお願いいたします。
どこまでも続く砂の海。
その砂海の上を1隻の“船”が航行している。陸戦艇という乗り物だ。
この陸戦艇の艇長はレイ・マノック。
30代の中年おっさんだ。
主に魔物を狩って生計を立てている”砂人”の1人。
常に砂海上にいるため体中砂だらけの生活を送っている。そんな彼等が陸に上がろうものなら、歩いた跡に砂が残る。
それで誰が言いだしたか彼等を砂人と呼ぶようになった。
マノックは陸戦艇の見張り台の上から、酒瓶を片手に双眼鏡で砂海を眺めつづけている。
「魔物さ~ん、どこ隠れてんだよ~。そろそろ出て来てもいいころじゃねえの」
酒がまわっているのか、マノックは1人遠くを見ながらつぶやく。
その時、マノックが眺める砂海に動きがあった。
「砂が動いたぞ、何かいる! 14時方向、距離3000。パット、面舵60度」
パットと呼ばれた強面の操舵手がすぐに舵をきる。
「面舵60度、よ~そろ~」
陸戦艇は動いた砂の方へ船首を向ける。
陸戦艇の船底には反発石と呼ばれる砂を弾く石が詰まっている。その性質を利用して砂海からわずかであるが船体を浮かしている。ただし、その反発石に魔力を流さないとその性質は発揮されない。
その魔力を作り出すのが魔石と呼ばれる魔物から採取される石である。魔石から精製した魔石燃料が魔道エンジンを動かし魔力を発生させ、反発石に送られる。
そしてその魔力は風魔法も発生させて、排気口からそれを噴射することにより陸戦艇の推力としている。
「レフ、なんだと思う?」
マノックの問いに航法手であり最年長のレフが答える。
「この辺りだと砂モグラじゃないのかね」
「やっぱりそうか。レフ、カタパルトランチャーに振動弾を装填してくれ」
「はいよ、装填するよ」
カタパルトランチャーというのは各種の弾薬筒を飛ばす機械なのだが、射程距離は非常に短く放物線を描いて飛んでいく。そのため命中率は期待できない代物だが、煙幕弾も使えたりと用途は広い。
「マノック艇長、奴が動き出します!」
そう叫んだのは船首の40㎜砲座に座る、最年少である砲手のマックスだ。
「右舷振動弾射出!」
ボンッという音と共に円筒形の振動弾が、放物線を描いて動く砂へと落下する。
砂海へ着弾したと同時に、呪符されていたアースシェイクの魔法が発動した。
着弾付近の砂が激しく揺れ動く。
弱い魔物ならばこれだけで眼球が飛び出し、口から内臓を吐き出して息絶える。
しかし結果は違った。
砂の中から苦し紛れに飛び出したのは、巨大なワームだった。
「緊急回頭、取り舵60度、最大船速で離脱しろ、引き離すぞ!」
「方向舵が壊れちまっても知らないですよっ」
緊急回頭は方向舵を砂に直接うずめて船体の向きを強引に変える方法なので、急速に船首の向きを変えたいときには有効なやり方だ。
しかしその代償として船体には大きなダメージを被る。
船体が大きく傾きながらも巨大ワームから徐々に離れていく。
「よおし、マックス、40㎜砲撃てるか?」
「はい、いつでもいけます」
「マノック艇長。7時方向、ワームが追ってきますよ!!」
レフが叫ぶ。
「後ろには主砲が撃てねえ、くそお」
マノックが悔しがるのもしょうがない。
船首には40㎜砲が装備されているのだが、後ろには撃つことができない。しかも船尾には何も武器が搭載していない。できるとすればせいぜいライフル銃で船尾から狙い撃つくらいだが、ワームにそんな攻撃が通用するはずがないことくらいは誰もが知っている。
「パット、あれをやる。タイミングを見計らってもう一度緊急回頭だ。それで40㎜砲の射界にワームを入れろ。チャンスは一度だけだぞ、いいなっ」
「了解です、マノック艇長」
「マックス、聞いていたな。必ず当てろよ、いいな」
「はい、分りました。緊張しますね……」
ワームの速度は思った以上に早い、いやこの陸戦艇が遅いのかもしれない。
マノックは船尾へと移動すると、その後方から砂塵を巻き上げて接近する巨大ワームに対峙する。
その姿を見つめながらマノックは空中に魔法陣の構築を始めた。
その魔法陣は高位魔法のものらしく、非常に大きなものとなっていく。
晴れ渡っていた青空はこの場所だけが暗雲が立ち込め、バチバチと稲光までが見え隠れする。
そして魔法陣が構築し終わった時、巨大ワームはマノックのすぐ目の前に来ていた。
「轟雷!」
マノックが魔法を発動させる。
すると天から一条の稲妻がワームへと落ちた。
凄まじい音と、手で覆いたくなるほどの雷光があたりを包む。
激しい雷がワームの体を痛めつけ、まるで踊っているかのように揺れ動く。
しかし、それほどまでの魔法攻撃を受けたにも関わらず、巨大ワームはまだ生きていた。
陸戦艇が軋み音をあげながらも、大きく船体の向きを変えていく。
そしてワームが40㎜砲の射界に入った。
「マックス、撃てぇぇぇ!」
マノックの叫び声と一緒に砲声が響く。
砲口から発射された40㎜砲弾は動きが鈍った巨大ワームの頭に食い込む。その刹那、砲弾に呪符されていたエクスプロージョンの魔法が発動した。
巨大ワームの頭は大きく吹き飛んで、あたりに肉片を撒き散らす。
頭部を失った巨大ワームは、地響きを立てて砂海に倒れ込んだ。
その瞬間、陸戦艇乗組員からは「わっ」と歓声が上がった。
「マノック艇長やりましたね!」
「これは早く帰って祝勝会ですね」
「マノック艇長ごちですっ!」
「まじっすか、やった艇長の奢りだ」
「勝手なことを……まあ、今回は大漁だから奢ってやるか」
それを聞いた乗組員からは再び歓声が上がる。
「さあ、さっさと解体して回収するぞ。全周警戒も怠るなよ」
巨大ワーム1頭狩ると、大量の食用肉と大きな魔石が手に入ることになり、お金に換金すると彼ら乗組員達5人の一か月分の収入に匹敵する金額になる。
今や陸戦艇には甲板にまでワームが山積みされていた。それだけ巨大だったわけだ。
「これでしばらく燃料、弾薬に困らねえな。余裕があったらこのオンボロ艇の修理もだな」
マノックがしゃべりながら船体をポンポンと叩く。
「マノック艇長、どうせならもうちっと大きな陸戦艇に乗り換えませんかね」
操舵手のパットが皮肉たっぷりに言ってきた。
「そうだな、それじゃあ後2~3匹狩ってから帰るか。巨大ワーム」
船上では苦笑とも取れる笑いが巻き起こるのだった。
そして陸戦艇は一番近くの街を目差して航行していくのだった。
こちらは不定期投稿となっています。
申し訳ございません。
忙しくて時間が取れないなどといいながら2作目の連載をだしてしまうといアホなわたしです。
それでも温かい目でよろしくお願いします。