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15. 王女を襲う者

 鬱蒼と茂った木々が広がる。

 流れるのは清涼な空気、踏みしめるは若々しい草木の枝、柔らかな土。


〈ふむ、妖精どもが住み着きそうな森林よ〉

「実際は迷宮に挑む探索者だらけですがね。情緒もへったくれもありませんが」


 フォードは『リベラの森』という森林に立ち入っていた。

 この森の中にある第五迷宮《岩窟》を目指したのである。再スタート後、初めての迷宮探索だ。一番の人気、初心者でも進みやすい迷宮を選んでいた。


 一口に迷宮と言っても様々な種類が存在している。

 灼熱の炎に覆われた《紅蓮》。

 絶対零度にさらされる《氷河》。

 無限の砂が立ちはだかる《砂楼閣》。

 茫漠な海が広がる《水殿》。

 万物が入れ替わり立ち変わる《流転》。

 死と絶望を振りまく屍のはびこる《冥府》

 侵入者を幻惑する《惑乱》など――いずれも難攻、入れば命すら危うい難所だ。


 しかし第五迷宮《岩窟》はその名の通り迷宮の中では普遍的な洞窟だった。ただの岩の道ばかりが続くこの洞窟は、初めての探索にはうってつけの迷宮と言える。

 ゆえに、フォードは此度の探索には《岩窟》が最も良いだろうと結論付けた。


〈ほう。じつに多き探索者よ。これが迷宮に挑みし者らか〉


 エリゼーラの興味深げな声に、フォードが応える。


「稼ぎに挑む人たちですね」


 森の中、フォードとエリゼーラの眼前には幾多の人々がいた。

 長剣を携えた戦士、短槍を担ぐ青年、戦斧を下げた老人、杖持つ少女、重い鎧を着る大男――全て、『探索者』である。

 いずれも第五迷宮《岩窟》に挑む連中だろう。あるいはたった今探索を終えた者達か。

 鬱蒼と茂った木々の合間に無骨な鎧や壮麗なローブが見え隠れする。


 精悍な壮年から明らかに初心者ルーキーと判る若者まで。武装も名剣からなまくらまで様々。多種多様な『修羅に身を置く者』たちの圧巻なる光景。

 多種多様な探索者に喜悦を覚えたのだろう、エリゼーラが声を弾ませる。


〈ほう! ほうほう! じつに壮麗な景色よ! 強者、弱者、曲者。様々な人間がおる!〉

「ええ、第五迷宮《岩窟》は比較的易しい迷宮ですからね。ベテランからルーキーまで訪れる人は様々です。おまけに、探索者相手に商売をする商人や踊り子、地図師や武具屋もいますから、これほど壮麗な光景となるのです」

〈なるほど確かに武芸者以外の人間もおるな。武器、食料、情事、地形図……全てが商売の種となるわけだ〉


 《迷宮》から魔物は出てこない。

 この理由は専門家の間でも諸説あり、迷宮奥の宝を守るため、外界に興味がないため、気候が合わないため、魔物自体が迷宮の構成因子の一つであるため等――数千年間、未だ定説は生まれていない。

 学者達には大いなる探求の元だが、いずれにせよ、安全な迷宮の付近では、探索者を相手に商売する人間で溢れかえっているのだった。


「そして、《迷宮》は一つの入り口だけとは限りません。初心者に最適な経路から、一流でなければ即死する危険な経路。じつに二十五種類ものルートが存在します。第五迷宮はこれでも少ない方ですが、どれも三百層は下らない大迷宮。そのため、各種品物を取り揃える人間も絶えないのですよ」


 迷宮とは、古代の謎の潜む大いなる神秘。人類の欲望や羨望が集まる魔窟だ。

 命がけで挑む彼らのため、商売人は今日も集う。

 人類の過去を掘り返す者、彼らの武装と日常を支える者。様々な人種で《迷宮》ははびこっている。

 ふとエリゼーラが言った。


〈我が契約者よ。そう言えば徒党を組む気はないのか? 一人より複数の方が良かろう。ただでさえ久々の探索の身、情報を交換し切磋琢磨するのも一つの手であろう?〉

旅団パーティですか。しばらくは、考えていません。僕はあなた――というか《憑依》能力や冥王臓剣を使いこなす必要性がありますからね。まず自分を鍛える、鍛えてから他者と交流する、そういう手順を取ろうと思います」

〈ほう、孤高の狼とな。まあそれも良かろう。我が契約者と二人っきり、というのも悪くはない〉


 エリゼーラは艶然と笑う。

 なんだか妙に機嫌が良かった。提案した本人なのにフォードが『独りで』探索すると主張した途端に声が弾んでいる。冥王臓剣を折ったことなどもはや思考の彼方だ。


 フォードは思うのだが、エリゼーラは妙にフォードに親しい。彼が寝ているそばで愉しそうに顔を覗き込み、飯を食べている時は周囲でふわふわと浮かび、夜の読書の時は一緒に読もうとする。

 さすがに浴場までついて来て「ぬしの裸を観たい」などと笑ってからかうのは追い返しているが、なかなかに友好的、というか悪霊がこれで良いのか、と思っていた。

 とはいえ契約した悪霊と良好な関係なのは悪いことではないだろう。彼女のおかげで《憑依》も使える。フォードは自分と契約した悪霊王を好意的に解釈していた。


 そんな矢先だった。

 森の外れに向かうフォードの耳に、小さな悲鳴が聞こえてきたのは。


「……エリゼーラ、今の聴こえましたか?」

〈ふむ、女の悲鳴だな。数は――一、いや二か〉


 フォードは方向を転換し、悲鳴の元へと駆ける。

 《迷宮》は基本的に人が立ち入らなければ危険はない。が、稀にだが魔物が外に出てしまう事もある。

 はぐれ魔物と呼ばれるものだ。さほど多くはないが、万一出現したら大変な被害が出る。

 過去に、オーク数体が村に紛れ込み虐殺が起きた『ポエラ村壊滅事変』、ハーピーの群れ三十匹が海賊を壊滅させた『南西海の事変』、一国の王女がさらわれた『レフィーナ王女誘拐事変』など。


 近隣の街や村、上級の魔物ならば複数の里が襲われる可能性もあった。

 それは好ましくない。フォードは冥王臓剣を鞘から抜き放ち、駆け続けた。

 森の雑草を切り払い、一目散に進む。悲鳴のもとへと急ぐ。

 ――きゃああぁぁ……

 また聴こえた。大きな茂みをフォードはが抜けると、木々に囲まれた広場に出て――。

 

【――スキル『■■改■』が発動しました】

 

 脳内にひび割れた声が聞こえた気がしたが、悲鳴に気をとられ、フォードは気が付かなかった。

 彼は走り続ける。

 女性の声が大きくなった。

 まだ若々しい、気品を備えた声が聴こえる。


「いやっ、来ないでください、退いて!」

「ひゃははっ! 逃がすな! 逃がすなぁ! 何としても捕まえろ!」


 女性の乗った馬車が、荒くれどもに追いかけられている。

 追手の男はいずれも武装。

 人数は二十以上。全員が弓を持ち、馬を駆り、罵声を上げて矢を射掛ける。

 馬車の方は幌がついているのだが所々壊れている。男たちの矢で破壊されたのだろう。その隙間から綺麗な女の金髪が見え隠れしていた。


 ――野盗!

 フォードの内側に、憎悪と怒りが噴き出す。


「ひゃはははっ! 回り込め! 仕留めろ!」


 男たちは馬車の護衛――馬を操る戦士たちへ矢の雨を降らす。

 馬車の護衛たちは懸命に振り払うが、矢の数は膨大過ぎる。たちまち一人射られ、二人射られ、その数を減らしていく。


「ひゃははははっ!」「ざまあみろや!」「それ、追い詰めろ!」


 追手の男らから歓声が上がる。口笛が盛んに吹かれる。

 壮麗な幌つきの馬車の車輪に矢が当たった。魔術の矢だ。強烈な一撃の矢は車輪を砕き、体勢が崩れ、馬車が横転する。

 下卑た笑いを浮かべ、男たちが馬車に近寄っていく。幌の窓から綺麗な金髪が見えた。怯えた女性の顔。野盗どもはにやにや笑って、馬車の幌に手をかける。


 それを見たフォードの眼に、憎悪の闇が宿った。

 ――倒す。

 フォードは冥王臓剣を構えると、渾身の力を込め、投擲した。


「なっ!?」「ぎゃあああっ!」


 いきなりの奇襲は野盗たちにとって、まさに青天の霹靂だったろう。

 野盗の一人を貫いた冥王臓剣は、瞬く間に別の野盗をも貫き、切断し、血の雨を降らせる。


「敵襲だ! 敵襲だ!」「野郎、矢を放て!」


 しかし対応が遅い。馬車を襲い獣欲にまみれた野盗たちは傍目にも動きが悪かった。

 矢が放たれるも散発的、フォードは冥王臓剣を振り回し、片っ端から迎撃する。

 暗黒に煌めき、邪気をまとう魔剣は、その瘴気だけで矢をどろどろに溶かしていく。

 かすっただけで矢はボロクズと果て、地面に落ちる。

 妖気が空間ごど黒く染め上げ、瘴気が周囲の木を、地面を溶かしていく。

 野盗たちがフォードを強敵と踏んだのだろう、確固に木々の中へ散開、そこから矢を連射する。


「甘いですね、そんなことで僕は倒せませんよ?」


 フォードは投げた冥王臓剣を振ると、思いっきり右へ薙ぎ払った。

 暗黒色の刃が、立ち並ぶ木々ごと野盗たちを斬り捨てる。


「ぐあああ!」「な、馬鹿な!」「かわせ、ぐっ」


 次々と、地面に倒れ伏す野盗たち。

 散開していた残りの野盗たちが青ざめた。その顔にありありとした恐怖が芽生える。


「なんだ今の剣は……」「人を、紙切れみたいに……」


 野盗どもが怯え、恐怖を穿つように、矢を放ってくる。

 フォードは左手のリバースソード改を、思いっきり地面に叩きつけた。


 吹き上がる土砂の壁が、全ての矢をを吹き飛ばす。衝撃に耐えきれずリバースソード改の刃が砕け散る。その隙に野盗が突っ込んでくるが、しかしそれは計算のうち。

 リバースソード改の残骸がたちまち修復され、刃が復活すると、フォードは飛び掛かっや。野盗たちへ次々斬撃をお見舞いする。


「うああああ!?」「馬鹿な!?」「くそ、距離を取れっ」「手強い! 狩られるぞ!」


 名にし負う名剣にも匹敵するリバースソード改の銀刃が、野盗たちを斬り刻む。

 リバースソード改で近寄る野盗を迎撃し、離れた野盗を冥王臓剣の投擲で仕留める。


 流星のごとく迫る魔剣と、破壊しても再生する名剣。

 二つの脅威の剣に、野盗たちは為す術なくその数を減らしていった。

 だが森の奥で控えていた首領リーダーらしき男が、にやりと笑った。


「なかなかやるじゃねえか! 俺が仕留めてやるよぉ!」


 赤髪をゆらりとさせ、その手には細く美しい装飾剣。馬の背から跳躍し、首領はなんとフォードへと斬りかかってきた。


「げははははははっ! 死ねやぁ――――――っ!」


 その声に、フォードは瞠目した。

 その笑い。

 その赤髪。

 あれはまさか――ルザではないか!


 かつて同じギルドで切磋琢磨し、養成所で最後に会話した粗野な男。

 宝物庫に忍び込み、金銀財宝を盗もうと誘った張本人。

 フォードをおそらく冤罪で嵌めた、悪辣なる男。

 それが野盗に成り果て、刃を振り、襲い掛かってくるとは。


 フォードはあまりの事態に反応が遅れた。冥王臓剣を弾かれ、あわや斬撃を胴にもらいそうになるところ、リバースソード改で凌ぐ。

 だがルザの装飾剣はなかなかの業物のようだった。リバースソード改が腹に斬撃を受けると一発で砕け散り、返す力で振り下ろされたルザの一撃をフォードは背後へ跳躍してかわす。

 ルザが狂気を帯びた瞳で突っ込んできた。束の間、フォードははルザと斬り結ぶ。


「よく生きていたなぁ! フォード!」

「ルザっ! なぜ貴方が!? 野盗など、どういうつもりです!?」

「決まってんじゃねえか! 暇つぶしだよ暇つぶしぃ! 綺麗な女がいるって聞いたからよぉ! 俺のモノにするため襲ったんだよぉぉ!」

「な――」


 あまりの身勝手な言葉に束の間フォードの体が硬直する。その隙、ほんの僅かな空白を縫うようにルザが三段突きを放つ。

 フォードの頬、首が浅く裂かれ、肩にも刃が走り抜ける。


「何を世迷い言を! あなたは正気なのですか!」

「正気も正気、いたって正気だよぉ! 俺はな、目の前にある全ての財を頂く! 女も、武具も、宝もっ! 全ては俺の支配下よ! げはははははハハハ――――――っ!」


 外道も外道。ルザは正式な探索者となった後、更なる悪道へ落ちぶれていた。おそらくは親の金を糧に、傭兵を雇い、好き勝手に暴れている。

 野盗をしながら、富みを、宝を、罪もない女性を我が物にしていたのだ。


 フォードの中に、かつてないほどの怒りが湧く。

 探索者の挟持を忘れ、堕落した愚か者。

 己の欲に溺れ、極悪に染まった悪魔。

 ――許せない。フォードの冥王臓剣を叩きつける腕に、力がこもる。


「その様子だと僕を監獄送りにしたのもあなたですね!?」

「そうだよっ!」

「罪もない人々を陥れ、享楽に走り、下劣に笑うその姿――許せません。あなたの外道には飽き飽きです。鍛錬場でも散々思っていました。――ルザ、あなたは明らかな害悪です! 僕がこの場で、成敗してあげますよっ!」

「やれるもんならやってみろやオラぁああああああっ!」


 フォードがルザの装飾剣を弾きつつ突貫する。

 フォードにとって探索者は夢そのものだ。

 妹に託され、腕を磨き、知性を磨き、得られた力はただ探索するためのもの。

 金銀、宝石、まだ見ぬ伝説の武具、そういった未知への探求と妹への誓いのため、必死に練磨してきたのだ。

 レミリアのことや冤罪事件もあったが、フォードにとって探索者は自分の生きる道だ。

 その夢を、メリルとの思い出すらも穢されたようで、フォードは怒りに打ち震える。


「ヒャハハハッ! 何必死になってんだフォードォ!」


 フォードの眉間狙う刺突と袈裟懸けと下段払いを弾いたルザは笑う。


「俺はギルドの幹部の息子だぜ? 俺に敵うわけねーだろ! ギルド幹部は支配を司るもの! それは世界を管理する者に等しい! 財も、富も、女も! 全てが俺の支配下! げはははっ! 俺にはさぁ、世界の全てを好きにする権利があるんだよ!」


 ルザの持っていた装飾剣が、横薙ぎに振るわれる。フォードはリバースソード改で受けるも、刃が砕け散る。再生する。さらに破壊される。

 彼のまとう黒紅色の篭手が、真っ赤に灼熱し轟炎を放った。フォードが冥王臓剣で火炎ごと斬り裂く。


「そんな屁理屈、通るはず無いでしょう。あなたは馬鹿なのですか?」

「てめえこそ馬鹿だろう? 俺様は超越者っ! 神、神、神! 偉大な神なんだよおおおおおぉぉぉぉ! 現人神に逆らうフォードこそいけない奴だよなぁ!? そんな愚か者はさぁ、俺が始末しねえとなあぁぁぁっっ!」

「くっ……」


 ルザの斬撃が激しくなる。

 リバースソード改が形状を再生させるも、また砕かれる。

 ルザの剣技はお世辞にも上手いとは言い難いが、武器が強い。


 冥王臓剣やリバースソード改と斬り結べるだけでも相当な業物だろう。一流の探索者やギルド騎士団、その上級位にいる者が持つような名剣だ。

 翼ある聖獣に家紋が入ったその装飾剣は、おそらく宝剣級。

 世界で数本としかない至高剣。おそらくギルド幹部の父親のツテで得た物に違いない。


 フォードは冥王臓剣で地面を打ち付けると、盛大に視界を埋め尽くした。

 その隙に《憑依》を発動。

 ルザの暴挙を止めるべく、『煙』になり、彼に取り憑こうとしたが――。


「ぐっ――これは!?」


 フォードは全身に激烈な痛みを感じ、引き下がった。


 『煙』の体が引き裂かれそうなほど激痛が走った。

 頭も手足も丸ごと千切れてしまったかのような錯覚。

 口もないのに血が大量に吐き出される感覚が湧く。視界が明滅し、フォードの自我が消失しかける。


〈――ほう。奴め。思ったよりは等級レベルが高い。――ぬしよ、注意するが良い。奴を《憑依》するのは今は無理のようだぞ〉

「……なんですって?」


 忌々しげにささやくエリゼーラの声に意識を取り戻してみれば、確かにルザの体がおかしい。

 体全体に禍々しい気が宿り、それが闇の鎧のように、フォードを弾き返したように見えた。


〈《憑依》は、一定以上の等級レベル相手には通じぬのだ。おそらく、奴の等級レベルは36以上――これでは今のぬしが操れぬのも道理〉

「なんですって? ……《憑依》の特性は判りました。……しかし、あれは――ルザを覆う妖気は、何なのですか?」

〈おそらく薬の副作用だろう。ふむ、奴の魂に歪みを感じる。どうやら奴は人為的に等級レベルを上げ、強化を施したか。フフ……恐らくは、奴の父親とやらに何か貰ったか〉


 確かに言われてより集中を凝らせば、ルザの体表に自然界でありえない紋様がある。

 等級レベルを上げる薬を、『昇華霊薬』と言う。

 術者がどんな等級レベルであろうとも、強制的にそれを引き上げ、強化する妙薬だ。

 翠麗飛竜エメラルドワイバーン灼皇一角獣ブレイズユニコーンなど、希少な材料のため多用はできないが――間違いない、ルザは親の権力に任せ、己の等級レベルを上げたのだ。


 わずか十八程度の若造に等級レベル36以上など達しようもない。

 ルザは鍛錬場時には20がやっとだったのだ。彼に、フォード程の才覚もないはずだった。


〈ぬしの《憑依》は現在Lv2、等級レベルが35以下の者しか操れぬ。ルザを傀儡とするならば、憑依の練度を上げる他はないな。だが――〉


 思念による一秒にも満たないやり取りだったが、棒立ちのフォードにルザが跳ぶ。

 猶予はない。フォードの本体が危うい。が、エリゼーラの口元にはあくまで艶めいた笑み。


〈……多少の誤算はあったが、拙い動きよ。我が契約者よ。まさかこれしきでやられるわけはあるまい?〉

「当然です。僕と対峙した事を後悔させてあげますよ」

 フォードは森の木の影にいたルザの配下――髭を生やした長身の青年へ取り憑いた。

 ――反撃が、始まる。


日間ハイファンタジー部門96位に入りました!(19時過ぎ時点)

凄く嬉しいです。

これも応援してくださる皆様のおかげです。

これからフォードの物語も盛り上がっていくので、これからもどうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m

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