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12. 魔剣を求めて

〈さて、では我が契約者よ。まずどうする?〉


 ギルド直轄騎士団へ情報を提供した後、エリゼーラは気を持ち直したフォードにそう問いかけた。


「そうですね、まず感知能力を持つ人に取り憑こうかと」

〈ほう。感知能力とな?〉

「ええ。詐欺集団はギルドを悩ませているのでしょう? 当然、彼らは完璧に近い逃亡を行っているはずです。僕が普通に探索しても無駄骨になりますよ。ですから《感知》系魔術の達人に取り憑き、奴らの拠点を暴こうと言うのです」


 エリゼーラは長い黒髪をなびかせ、こう応えた。


〈しかしぬしよ。相手は名うての詐欺集団ども。いかに《感知》系の魔術を用いるとはいえ、一筋縄ではいかぬと思うが。何か策はあるのか〉

「ええ。まあそれなりに。見ていればわかりますよ」


 他者や物を探り出す《探知》系の魔術は、探索者にとって非常に身近だ。

 魔物や宝、罠を見つけるのに最適でもある。この街にも良い感知系の魔術使いがいるだろう。

 だが相手は詐欺集団。己の保身に長けた者はおらず、いたずらに探しても時間の無駄だろう。


 しかしフォードにはそんなことは関係なかった。すでに彼の頭には段取りが浮かんでいる。

 まずフォードは、先ほど会ったギルド直轄騎士団、『蒼の団』を追いかけた。そのうち先ほど話しかけてきた女性騎士へと、《憑依》する。


【レイラ 十九歳  ギルド四等騎士】

 体力:中  魔力:低  頑強:低

 腕力:中  俊敏:中  知性:中

 特技:槍術 短剣術

 装備:ミスリルアーマー(蒼) ミスリルガントレット(蒼) ミスリルブーツ(蒼) 蒼穹のマント ミスリルジャベリン ミスリルナイフ×五



 なかなかの装備である。しかし肝心の感知の魔術が使える装備は持っていなかった。


 魔術とは装備に含まれる『魔石』によって行使される秘技である。

 冥王臓剣の柄尻のように、かつての雷紋剣の柄頭のように、ランクの高低はどうあれ、魔石がはめられている装備のことを、『魔術具』と言う。

 この騎士は前衛の戦闘騎士だろう。装備は直接攻撃系ばかりで、探知系の魔術具の類は持っていない。


 仕方ない、フォードは他の騎士――全部で六人いるうち、他の騎士にも《憑依》していくことにする。


【ダルドリー 二十四歳 三等ギルド騎士】

 体力:低  魔力:中  頑強:低

 腕力:低  俊敏:中  知性:中

 特技:槍術 

 装備:蒼のミスリス装備一式 ミスリルランス ミスリルナイフ×二 ロック鳥の兜


 五人目で、目当ての感知系魔術を使えそうな騎士を見つけた。


 装備のロック鳥の兜が、おそらく感知できる魔術具だろう。

 ロック鳥とは西南の樹海に棲む巨大な鳥である。非常に視力が良く、数十キロの先を見渡せる。

 その因子を埋め込んだ兜。歪んだ曲線的なデザインの兜は、他とは一線を画する雰囲気を漂わせている。


「(これだ。この魔術具を使えば良いのです)」


 すぐに祝詞を唱え、兜を発動させる。


[卑しき者の住処を暴け。我は正義を貫く者。悪漢の拠点や何処に――『スカイアイ』]


 魔術を使ったが、他の騎士は特に何も言わなかった。この騎士が感知担当であり、これまでも何度も街中で使用したためだろう。

 フォードの脳裏に、街を俯瞰した光景が浮かんでくる。


 灯台に商店通り。

 歓楽街。

 宿場街。

 煙が上がっている職人街。

 一番背の高い建物はギルド支部だろうか? まるで大鷲が上空から見渡したような光景が広がっている。


 人の顔もつぶさに見て取れる。表通りの客の呼び込みから、裏通りの喧嘩まで。

 しかしその中に詐欺集団らしき者はいない。

 奴らも馬鹿ではないから、真っ昼間から姿を現す事はないのだろう。だから地道な聞き込みが重要なのだ。ギルドが誇る感知魔術でも、即座に発見するまでには至らない。


 そこでフォードは、「怪しい者がいます」と適当な嘘をでっち上げた。

 騎士達がその場所に向かう。その隙に、フォードは元の自分の体のそばにまで戻り、荷物袋を漁った。

 中から、『ラクシェルの腕輪』という魔術具を取り出す。

 これは賭博場で得た品物の一つだ。効力は『魔術効果二倍』。使い捨てだが十分間、他の魔術具の効力を二倍に増やすというもの。


 山吹色をした腕輪、『ラクシェルの腕輪』をはめ、祝詞を唱える。

 すると脳裏で描いていた『ロック鳥の兜』による俯瞰図が、さらに克明になった。


 見える。人の小じわから汗の流れる様、道端に落ちる針まで、極々小さなものまで見渡せる。髪の毛の落ちる様まで視える。


 その中に、フォードが重要視するものがあった。

 偽ギルド出張所から続く、足跡だ。

 通常の目では薄すぎて見ることも難しい、わずかな砂や土による足の跡。


 集団で移動したと思しき、詐欺集団の痕跡。それが街の一角から出て東通りを進み、貧民街を経て寂れた通りを進んでいったのが判る。

 当たりだ。おそらく人数は八人。フォードは注視してその道筋を全て頭に叩き込む。


「見つけました。東地区の廃倉庫、でしょうか。それらしき足跡です」

〈ほう! さすがは我が契約者よな。この短時間で暴きおった!〉


 嬉々としたエリゼーラの声が木霊する。

 フォードは舌なめずりをした。

 さあ、奪われた物を返してもらおう。

 卑しい欲望のツケを払い、後悔するのだ。

 フォードは通りを歩いていた別のギルド騎士に《憑依》し、アジトに乗り込んだ。


【ボークス 二十八歳 三等ギルド騎士】

 クラス:アックスナイト

 体力:高  魔力:低  頑強:高

 腕力:高  俊敏:中  知性:低

 特技:戦斧技 柔術 投げ斧術 

 装備:地竜の戦斧 ミスリルメイル(紫) ミスリルブーツ(紫) 地竜鱗のマント ミスリルアックス ミスリルナイフ×二 ミスリルヘルム(紫) ラクエシェルの腕輪 緋影の篭手


 憑依したギルドの騎士の装備に加え、元々持っていた緋影の篭手を携え、フォードは悪党どもの拠点へ乗り込む。


感想ありがとうございます!

とても励みになっております。

これからフォードの巻き返しが始まっていくので、愉しんで頂ければと思っていますm(_ _)m

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