詩 機会人形の逃亡者
ガラクタの山の中 いつからか倒れていた機械人形
だけど 手を差し伸べてくれた主人がいて
貴方の為に生きましょう 機械人形はそう決める
生まれてきた意味を忘れ 生みだされた理由は知らない
虚無を抱いたまま過ごすには この世界は広すぎて
心などというものは存在しないのに なぜか 一人でいる事が寂しくて
孤独を埋めるように主人は様々なことを教えてくれた
けれどある時 研究者達がやってくる
機械人形は主人と共に 逃げ続ける
彼らが追いかけてくる理由も分からぬまま
何千里離れた遠くへ 果てへ 逃れつづけて
けれど 途絶えることない追手の足に……
私は別れを告げる
――大好きだから そうするの
――幸せになって欲しいから そうするの
「さよなら 主人」
最後に言えて 良かった
せまる足音 忍び寄る影 追い詰められて……
「一緒にいるよ」
主人は言った どうして?
たとえこの先地獄が待っていようとも……
長く辛い時間を過ごすことになっても……
どこまでも いつまでも
「一緒にいるよ」
どうして? 分からない
初めてできた友達 あなたの傍から離れたくないの