番外編1:数学の宿題を見せて欲しいからって理由で人を公園に呼び出す奴は宿題以前に問題があると思うんだが……
ただの番外編です。読み飛ばしても本編には何も影響しないと思います。
この番外編は1000文字小説にも掲載しています。
少し曇りがかった空が街全体を覆っている。こんな日には出来るだけ外には出たくないのだがしかし、
優海との約束とあれば仕方ない。行かないわけにはいかないだろう。
「数学の宿題を見せて欲しいからって理由で人を公園に呼び出す奴は宿題以前に問題があると思うんだが……」
自分の部屋のドアを開けて出ていく足取りも重い。
「あいつの将来が心配だ……」
はぁ、とため息をついたところで何も始まらないので数学の宿題を探す。実はまだやってないのだ。
「さっさとやって優海に教えれるようにしとかないと……」
玄関に放置してあるカバンの中にある宿題を取りに行く途中。気づいたことが一つ。
「あいつ確か今風邪ひいてたよな……」
どうしたもんか。
優海を見捨てるなんて選択肢は最初から無いが。
「まぁ、見舞いがてら数学のノート置いてくるか」
結局いつもどおりの展開。優海の言うことは絶対。
家近いし。こんな寒い日に病気の人間を外に出すわけにもいかないし。
…なんて後付けの理由だけど。
ーというわけで優海の家に来たけども。お昼ごろから出掛けていきました、とかなんとか。家の人も呆れ顔である。
病人が元気に外出してんじゃねぇよ。
まさかとは思うが公園に……。
目標を肉眼で捕捉。
「いたよ、馬鹿が。仁王立ちで……」
俺が心配してしまった時間を返せ!
なんで病人が昼から出かけてて、しかもなんで夕方の公園で一人仁王立ちしてんだよ!
「遅いぞアキラ!女子を待たせるんじゃない!許して欲しくば……」
「許さなくていい」
俺は待ち合わせの時間よりも少し早くにここに到着しているんだから許すも許さないもない。無実だ!
でも、
「……俺はお前を許さない!!」
病人のくせに家を抜け出すな!大人しく寝てろ!どれだけ心配したと…
「…っ!?寝やがった……」
俺の思考回路を読み取った上でそれに従ったのだろうか?
なんにしろこのまま置いとくわけにもいかない。顔が赤いし、熱も上がってしまっているかもしれない。
さっさと家までおくってやろう。
しかしチキンな俺が女の子をおんぶ出来るわけもなく、まるで親の遺影でも持つかのごとく不自然な格好で優海を抱えておくり届ける形になってしまった。
まぁ、なるべく身体と身体の接触面が少ない形を心がけただけだけど…
そして、
優海を抱えて家を訪れた俺に対する優海の母親の「お姫様抱っこみたい」という感想に、ようやくそのことに気づいた俺は顔を真っ赤にして顔を俯けることしかできなかった。