表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

外伝10

外伝の続きです。


説明は外伝1へ。


今回で外伝はおしまいです。


それでは次回投稿からまた本編に戻りたいと思います。



「一週間」


最後の七夕までの一週間、そろそろ限界になりつつある脳内メモリーに日記をつけることにする。


こんなことをしても、誰にも何も伝わらないけど、最後くらい女の子らしいことがしたいから。


一週間なら大丈夫だよね?



『六月三十日』


アキラがカップ麺を吐き出した。


何事かと思ったらお湯を注ぐ時に私のオイルが混ざってしまっていたらしい。


反省。


とりあえず私の愛情ということでごまかした。



『七月一日』


アキラがしつこく二度寝をしたがる。


まぁ、いつものことなんだけど。


あんまり世話焼かせないで欲しいなぁ。


と思う反面、こういうやり取りが懐かしくて、楽しいなぁ。


って思ったり。


それとアキラの曜日感覚というか日付感覚というかがものすごく狂ってる。


今年の七夕は大丈夫かなぁ……。



『七月二日』


アキラが歌の練習に飽きかけていたので、ちょっと無理をして、顔を生きていた頃の私の顔に変形させてみた。


皮膚の下でオイルとか固めて形保ってるから結構燃費が悪い。


熱くなるとオイルが溶け出して目元から溢れてきちゃうし、その分またオイル使わなくちゃいけないから。


でも、長い時間この顔でいるわけじゃないし、七夕までなら大丈夫そう。


アキラの奴驚いてポカーンとしてたなぁ。



『七月三日』


アキラが私に相談を持ちかけてきた。


私が生前の顔でいたら二度寝しないで頑張る。


らしい。


オイルも残り少ないから最初は断ったけど、やっぱりどうしてもって頼み込まれると断れないや。


これが噂に聞く惚れた弱みってやつなんだろうか?


無理しちゃったせいでオイルとか身体の中の部品を結構たくさん吐き出しちゃった。


ごまかせるだけごまかすためにアキラの苦手な方向に話をもっていった。


私もあんまり得意な話題ではないけど優秀なAIのおかげか、思いのほか言葉はスラスラと出てきた。


アキラったらチキンだから簡単に思考を放棄してたね。


全然変わらないや。


何もしてないんだから避妊なんて、ましてや妊娠なんてしてないに決まってるよ。



『七月四日』


アキラがまだ固まってる。


だいぶ無理してるせいで私もなんだか身体が固まり始めてる。


だから今日は私も少しお休み。



『七月五日』


アキラが動き始めた。


でもなんだかぎこちない。


歩くときに同じ側の手足が同時に行ったり来たりしてる。


でも私も他人のこと言ってられないかも。


なんだか少し歩きづらい。


明後日に七夕をひかえた今日はあいにくの雨模様だし、今日も少しお休みしようかな。



『七月六日』


アキラが私を起こしに来た。


あぁ、童話の中だけだと思ってたこのシチュエーションが、現実のものになるなんて!


私だけの王子様!


なんて、少女漫画の読み過ぎかな。


でも、王子様がいてもこんな私じゃ……お姫様には、なれなかったよ……。


毎朝セットしてたタイマーが動かなかったのがその証拠だね。


一週間は大丈夫って。


私ってば本当に頭悪いなぁ……。


一週間だけしかオイルがもたないなら日記をつけるのは七月一日からだよ。


これだから計算って苦手なんだよなぁ……。


もう、思うように体が動かないよ……。


ぶつけたい想いや感情はたくさん、溢れてくるのに、声が上手に出てこなくて。


とっても、辛いよ……。


悲しいよ……。


でも大丈夫。


生きていた頃に残した音声が。


「ユミ」じゃなく、優海として残した、私の気持ちが……。


機械的な音なんかじゃない、私の本当の想いが。


きっと伝わる……はず…………大好きな……あなたに……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ