そうだ!能力を増やそう!
初投稿となります。豆腐です。
各話1000文字程度を目安に投稿していきたいと思います。
よろしくお願いします。
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【神歴二〇八〇年、十の月】
すさまじい勢いで迫りくる斬撃が俺の体を通過するが、平然とした表情のまま敵の間合いに飛び込む。
俺の体の大部分には実体がないし、核に当たらないならば避ける必要もない。
相手の男の表情が驚愕と焦りを帯びたそれに変わっていく。
防ぎ、接近し、そして倒す。
これだけの作業。それをひたすら繰り返す。そんな生活を既に何ヶ月か過ごしてきた。
今回の敵もいつもの相手と何も変わらない。接近すれば相手の動きが止まってしまうのはもう分かっている。
戦闘中にアタリをつけていた箇所に触れ、トドメを刺す。男の右手の甲に俺の手が触れた途端、彼はゆっくりと発光を始め、やがて消えてなくなる。
これで彼はこの世界から完全に消滅した。最後の異端者が消滅するのと同時に世界は歪み、俺の意識は身体から切り離されていった。
「今回の世界でも君が勝ったか。まぁ、予想通りっちゃ予想通りの結果だね。おめでとう。毎度のことで申し訳ないけど、早速今回の報酬を一つ選んでくれ」
にこにこしながら青色のカードを渡してくる受付員に対し疑いのまなざしを向ける。
「今回のプレイヤー達は全員敗北で処理されるんだから報酬は受け取れないんじゃないのか?」
「ステータスの上では敗北だとしてもホスト側からの報酬は支払われるんだよ?とは言っても、今回ステータスプレートに刻まれるのは敗北の記録だから神殿からの祝福や恩恵は得られないけど」
神殿が発行する報酬カードには白、黄、緑、青、赤、銀、金の六種類が存在し、その順に得られる報酬がどんどん豪華になっていく。
神殿には報酬カードの色別報酬一覧が大々的に貼り出してあり、受付でカードと報酬を引き換えることができる。
現在青色のカードで得られる報酬はアイテムや休暇、能力があるが神ならざるものである俺が選ぶのは能力以外にないだろう。
アイテムはそのほとんどが神向けのもので、人間である俺にとっての実用性はないし、休暇なんてのは多忙な神が息抜きに取得するものである。
掲示されている能力五つの中に欲しい能力はないが、適当に選ぶことにする。
「動物に好かれる能力をくれ」
様々な生物が存在する中で動物にのみ好かれる能力の有用性はどれほどのものか分からないが、持っていて不利になるような能力でもないだろう。
更新されたステータスプレートを受け取り、俺は遊戯板のもとへ向かった。
「 名前 :アキラ・アオノ
種族 :人間族
職業 :プレイヤー
レベル:12
ランク:0
戦績 :8勝0敗1引き分け 」