表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クラスマッチの恋心シリーズ

クラスマッチの恋心 アナザーエンド1

『クラスマッチの恋心』を元にした、アナザーエンド1です。

アナザーエンド2、アナザーエンド3もございます。

よろしければ合わせてごらんくださいませ。

途中まで、『クラスマッチの恋心』と同内容です。

エンディングのみを読まれたい方は、文中の〔 〕以降をお読みください。


何もかも、あの場所に置いてきた。

思い出も、想いも。

俺は、振り返らない……つもりだった。



高校卒業とともに、俺は日本を離れた。

もともと外国に興味を持ってはいたが、このタイミングで日本を飛び出すとは、高校に入る頃には考えていなかった。

きっかけは、二つ、いや、三つかもしれない。

他人が聞いたら納得してくれるのか分からないが。


一つ目は、海外への修学旅行で知った外国の同い年くらいの子たちの意欲的な姿勢だった。

日本の大学に留学するために、日本でいう高校を卒業して、さらに留学のための学校で日本語や専門科目の勉強をしているという話に、俺はなんだか感動してしまった。

そして、「大学に入るため」に勉強している自分に疑問を感じた。


二つめは、その疑問が膨らんで破裂してしまったということだ。

今やっていることが、「大学に入るためだけの勉強」に感じてしまった俺は今の方向とは違う、別の道を探すことにした。

もちろん、日本にいて別の道を探すのは簡単かもしれない。学校を辞めて「自分探し」をすればいいのだから。

でも、周りは「高校は卒業しなさい」と説得してきた。

俺には考えがあった。

外国で、全部一から勉強して、自分を鍛える。言葉も、文化も、全て。

それこそ高校卒業にこだわる必要もない気がしたが、俺を高校に引き留めた要素があった。


三つめ

俺は、クラスの女の子に恋していた。

彼女とは2年の頃から同じクラスだったが、最初は全く気にしていなかった。

その頃の彼女は部活のために学校に来ているようなものだった。朝練を終えた後ギリギリで教室に現れ、ホームルームが終わったら一番に教室を飛び出していくような子だった。

「本当に、授業終わったらすぐいなくなるよな」

恋心とか、そういうものはその頃は全くなかった。ただただ、感心していた。俺は何の部活にも所属していなかったので、それだけの熱意を部活に傾けられる彼女に感心するだけだった。


その感情が、恋心へ変わってきたのはいつのことだろうか。席替えして、席が隣になって、話すようになってからだろうか。

実は、俺と彼女は中学の頃からの顔見知りだった。

このクラスにも、そういう奴が何人かいる。地元大手の進学塾で同じクラスにいて、この高校


を志望した奴は数え切れない。だから、彼女のことは全く知らなかったわけではなかった。

でも、話をするうちに、彼女のことをより知っていくうちに、俺はだんだん彼女に惹かれていったのだろう。


俺が自分の感情、彼女への恋心をはっきり自覚したのは、2年のクラスマッチだった。

男女別で行われるクラスマッチ。ソフトボールをしていた俺たちは、バレーボールの試合の間に来てくれていた女子の応援を受けていた。

俺が打席に立つ。男子のみならず、女子も打席に立つ一人ひとりに応援の声を向けてくれる。

その時だ。俺は、急に目に痛みを感じた。何だ……? 何が起こった?

試合が中断している。俺はやっと、自分が顔面に打球を受けたことに気がついた。

俺は保健室に、そして念のために病院に連れて行かれた。検査を受けて何も異常はなかったが、週末の土日は安静にしているように言われた。


週明け。

何もなかったように登校してきた俺を「大丈夫だった? コンタクト使ってるって言ってたから、目に当たったって聞いて、心配してた」と話しかけてきたのが彼女だった。

「何もなかったよ。ありがとう。心配かけてごめん」

「何もなかったんだ、よかった! 当たった場所が目だったから、見えなくなっちゃうのかとか心配しちゃってた」

ちょっと過剰な心配のようだったが、彼女の気持ちがひしひしと伝わってきた。

俺はこの時、間違いなく彼女に恋していると自覚した。


でも、俺は何もできなかった。

高校2年、周りはカップルだらけだ。付き合っていなくても、誰が誰を好きだというのは情報として入ってきたり、様子を見ていれば分かる。嫌なことに、俺はそういうことに関してかなり敏感なようだ。


そして、彼女には恋している相手がいるという情報を手に入れた。といっても、すでに相手に告白して失恋し、その痛手を引きずっているとの噂だった。

俺なら、その気持ちを、彼女の感情を、真っ直ぐに受け止めるのに……。

俺は、どうするべきか。

(ここまで、『クラスマッチの恋心』とほぼ同じです)


〔ここからアナザーエンド1になります〕


彼女は今は明らかに部活に全力を注いでいる。彼女が苦手と言う数学は、小テストは大抵いつも、定期テストですら赤点ギリギリをさまよっているくらいだ。なんとか授業にはついてこれているようだが、気がついたら授業中に眠っていることもある。

今の彼女は、いっぱいいっぱいなのかもしれない。でも、自分がそんな彼女の支えになれたら……。今、彼女に想いを伝えるか、やめておくか。


やはり、ここは思い切って想いを伝えよう。


告白しようと決めた次の日。

俺は彼女を呼び出すことにした。

彼女は朝はギリギリまで朝練に参加し、授業が終わると放課後の部活へ行ってしまうから、呼び出すのは昼休みと決めていた。

お弁当を食べ終わって、歯磨きしに行こうとしていた彼女を呼び出す。

「小浜さん」

「何?」

「ちょっといい?」

彼女は素直についてきた。

「俺、小浜さんのことが、好きなんだ。よかったら……付き合ってください」

彼女の表情に戸惑いが見える。この時に、俺は負けを悟った。

「村山くんの気持ちは嬉しい……。でも、今、好きな人がいて、いろいろあったけどやっぱり吹っ切れなくて。それに、今は部活が毎日朝から夜まであって、結構ギリギリなの。だから……ごめんなさい」

俺は負けた。諦めるしかなかった。


卒業までは、なんとかやっとのことで学校に行くことができたが、彼女の顔を見るのが辛かった。

俺は、なんだかんだと理由をつけて、受験からも彼女からも逃げたのだ。

海外に向かう飛行機に乗り込む。シートベルトのカチリという音が、自分の気持ちを切り替えろというように聞こえた。

そうだ。俺はこれからがむしゃらにやろう。新しい環境で、もしかしたら新しい出会いがあるかもしれないし、それどころではないかもしれない。

彼女のことは、きっぱり忘れてしまおう。


飛行機が加速して、ふわりと離陸する。俺も、新しい環境に向かって、今の気持ちから離陸しよう。

彼女の幸せを、遠くでささやかに祈りながら。


【Bad End】

アナザーエンド1はバッドエンドでした。

アナザーエンド2、アナザーエンド3はまた異なる結末なので、あわせてお読みいただければ幸いです。

※『クラスマッチの恋心』本文エンディングをトゥルーエンドとしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ