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殺人サイト  作者: ノミの心臓を持つ男
7/13

死遊戯殺人 イー7

 殺人ニュースを書いた者とはどんな人物なのだろうか。

殺人ニュースのサイトを読んでいる内に、直哉の足は第一被害者が発見された場所へ向かっていた。

 電車に乗って一駅、双葉市の隣町である港市の駅から徒歩5分。駅から近い港に作られた倉庫で第一被害者は発見された。彼がなぜ殺されなければならなかったのか。またどうして出血多量などという酷い殺されかたをしたのか。直哉には気になって仕方なかった。


「おやおや、どうしてあなたがこんなところにいるのですかねぇ?」


 警察の調査のテープが引かれた殺害現場を遠巻きに見ていると、影村に声をかけられた。


「影村さん!」


 直哉は影村の登場に苦虫を噛み潰したくなる。殺害現場がどうなっていたのか、直哉の興味はそこにあった。勝手に侵入して調べようと思っていたが、影村の登場で確認することはできないだろう。


「すみません。事件の事が気になってしまって」

「なるほど。ですが、あなたも容疑者の一人なのですよ。こんなところをうろついていると余計に怪しまれるとは考えなかったのですか?」


 影村の前髪の奥から鋭い視線が直哉に向けられる。


「そこまで考えが至りませんでした」

「うむ。冷静な君らしくもない。何かありましたか?」


 影村は顎に手を当て、思案するような姿勢をとった。

その間も鋭い視線が前髪の奥から見え隠れする。


「影村さんは殺人サイトを知っていますか?」

「殺人サイト?いいえ。初耳ですね。それがどうかしましたか」


 影村は知らないと言うが、その言葉が嘘か真か直哉には判断できない。


「その殺人サイトに書いてあったんです。連続殺人『死遊戯殺人』について」

「ほぅ~それは興味深いですねぇ」

「そこには第一、第二の殺人現場も書かれていました。正人と同じように殺された人達はどんなところで、どんな風に殺されたのか気になってしまって」

 

 直哉は自身が興奮気味に話をしていることに気付いていなかった。

影村に見つめられていることも忘れて死遊戯殺人について語っていた。


 まるで楽しみにしていたオモチャを手にした子供のような目をしていると影村は思った。


「そうですか。ですが子供がそんなことに関心を持つなど感心しませんね」


 直哉の態度に何かを感じた影村は釘を刺しておくことにした。

影村の言葉に自身の言葉に陶酔していた直哉は現実に引き戻される。


「そうですね。すみません、興味本位です。どうして正人は殺されなければいけなかったのか知りたくて」

「うむ。一応、今回の事件は男子高校生が相次いで殺されています。あなたも男子高校生なのですから、あまり外を出歩いてほしくはないのですよ。わかってくれますか」

「わかりました。帰ります」

「送りましょうか?」


 影村が自身の後ろに停まっている車を指差す。


「いえ、電車で帰れますから」

「そうですか。ではくれぐれも気をつけて」


 影村に別れを告げてその場を後にする。

一瞬気になって殺人現場を見れば無数の傷が壁につけられていた。


「あれはなんだろう?」


 直哉は気になったが、影村の視線が未だに背中に突き刺さっている。

素直に帰ることを選択して、駅へと向かって歩き出した。


 直哉の後ろ姿を見送り、影村を息を吐き。

もう一人現れた人物へと歩を進める。


「あなたにもお話を聞いても?」


 直哉を見送った影村は、第一殺人が行われ場所に現れた人物に声をかけた。


「警察の方ですね」

「はい。あなたは飯田 直子さんですね」


 影村が声をかけたのは、双葉高校の教師、飯田 直子だった。


「はい。双葉高校で教師をしています。と、言っても刑事さんは私のことを知っているようですね」

「この事件の重要参考人だと思っています」


 影村は飯田に向かって、容疑者であると暗に告げたのだ。


「はっきりしている刑事さんなんですね。もっと捜査ついては隠すものではありませんか?」

「すみませんね。私は嘘が下手なもので」


 影村の言葉に飯田は、内心嘘つきと言いたくなったが、何も言わずに影村の次の言葉を待った。


「それでどうしてここにいるのですか?」

「見に来たんです。教え子の最後を」

「教え子?」

「はい。野崎君は私が学生時代に家庭教師をした子なんです。優秀な子でした。高校になってからも全国模試を一位だと私に報告してくれていましたから」


 飯田の言葉に嘘はないと影村は思っている。

実際、飯田が野崎の家庭教師をしていたことは調べがついているのだ。

 しかし、今回の事件は不可解な点が多く。飯田も容疑者の一人として考えられている。


「そうですか。お悔み申し上げます」

「いえ。彼のご両親に比べれば私の悲しみなど微々たるものでしょう」

「事情は分かりました。ですが、あなたも重要参考人です。事件が解決するまでは立ち入りは控えていただきたい」

「わかりました。早期解決を、御待ちしています」

 

 飯田は影村に別れを告げて去って行った。


「やれやれ。今回は一癖も二癖もある人物ばかりが容疑者になったものだ」


 影村は頭をかきながら、飯田の後ろ姿を見送った。

 

 

 直哉が自宅に戻ると、母が心配そうに出迎えてくれた。


「どこ行っていたの?今は危ないから明日からなるべく早く帰ってきなさい」

 

 穏やかな母がどこか苛立ちを込めた声で直哉に言葉をかける。


「何言っているんだよ。明日はバイトの日だから遅くなるよ」

「そう……そうだったわね。でも気をつけてね」


 心配のあまり、気が動転していたらしい。

母は直哉が軽口で答えると呟くように頷いていた。


「大丈夫だよ。母さんこそ考え過ぎだよ」

「そうのかな?なんだか不安になっちゃってね」

「ははは、そんなドラマみたいな話しが、そんなにあるものじゃないと思うよ」

「そうよね」


 母を納得させてから階段を上がる。

階段を上がりきったこところに妹の菜月が座っていた。

 ホットパンツの隙間から水玉パンツが見えている。


「パンツ、見えているぞ」

「お兄ちゃんのエッチ」

「お前が見せているんだろ。なんでこんなところに座っているんだよ」


 直哉は自身の部屋の扉を開いて、鞄をいつもの場所に置く。上着を脱いでいると妹が部屋の中に入ってきた。


「着替えているのに入ってくるなよ」

「いいじゃない。お兄ちゃんだって私のパンツ見たんだからおあいこよ。それに兄弟だから関係ないでしょ」

「まぁそれもそうか。それでなんだよ」

「ねぇお兄ちゃん。今日隣町に行った?」

「どうして知っているんだ?」

「うん。なんで……だろうね。お兄ちゃんが誰か知らない人と話している姿を見たの」

「はぁ~なんだ。それ」

「わかんない。学校の放課後にね。急に眠くなってきて、保健室に行ったの。そこで寝ていたはずなのに、お兄ちゃんが夢に出てきて、誰かと話してる姿が見えたの」

「何だ、予知夢か?スゲ~スゲ~」

「あぁ~お兄ちゃん信じてないでしょ」

「そんなことよりもお前嘘ついただろ。昨日奥村の奴は女友達と出かけていたって言っていたぞ」

「えっ!嘘だよ。私、昨日雪さんの事見たもん」

「本当か?まぁ俺も奥村にしか確認とってないからわかんないけどさ。殺人現場にいたとか結構ヘビーな話だからあんまり人に言うなよ」

「分かってるよ」

「それにな、菜月。ブラぐらい付けろよ。乳首透けてるぞ」

「えっ!嘘?」

「ウソッ!ははは。とにかくもう殺人事件のことは気にするな」

「もう~うん。わかったよ」

 

 直哉は菜月との会話を終えて、菜月を部屋の外に追い出した。

だが、菜月の話に出てきた自分の姿と奥村の話を吟味してしまう。

 もしかしたら、直哉が目撃をした日ではなく。別の日に菜月は奥村を見ていたのかもしれない。

そんな考えがよぎり、机の中にしまってある正人のメモを取り出す。


「お前が見た真実。俺が探してみるよ」


 直哉は影村の忠告を無視することにして、自分なりの調査をしてみよう決意したのだ。

『殺人サイト』に書かれている内容に従って直哉はある考えに思い至った。どうして自分は三件目、四件目の事件の第一発見者になってしまったのだろうか?どうして自分が住んでいる町の近くでこんな事件が起きたのだろうか。


「一つ一つ整理していくか」


 直哉は自身の机に向かい黒く塗りつぶされたメモを見つめる。

正人と奥村は同じ何かを見た。その後に正人は殺され、それを聞いた絵美も殺された。

 いったい正人と奥村は何を見たのだろうか、どうして奥村は殺されていないのだろうか。

そして『殺人サイト』の運営者はどうやってここまで詳しい情報を載せることができたのだろうか。

 浮かんでくる謎のことを考えて直哉は笑っていた。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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